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全種目 👥 1~5万人 🏫 小規模校(〜150人) 📍 栃木県

【事例】栃木県矢板市の部活動地域展開 ─ 中学2校の休日活動を総合型「たかはら那須スポーツクラブ」へ委託、会費なし・兼職兼業教員13名で6種目8クラブを運営し令和8年度の休日全面展開へ

公開:2026.11.02 更新:2026.11.02
この記事でわかること

・中学2校の休日活動を総合型クラブ1団体へ委託し、6種目8クラブを会費なしで運営した矢板市の体制
・指導員の職務の明文化と事故時の連絡手順、兼職兼業教員13名・部活動指導員11名による平日休日の一貫指導
・月謝2,000〜3,000円の保護者意向と1回5,000円以上の謝金要望の差、送迎負担という小規模市の課題

自治体名 栃木県矢板市
人口規模 約3.0万人(29,611人・令和7年度スポーツ庁成果報告書記載)
中学校数 市立中学校2校(矢板中学校・片岡中学校、生徒630人)
運営形態 総合型地域スポーツクラブ(たかはら那須スポーツクラブへ市が業務委託)。教育委員会の教育総務課が事業のコーディネートと費用負担の在り方、生涯学習課が運営団体・指導者の確保と移動支援を担当し、首長部局の総合政策課が総合教育会議とクラウドファンディング等の検討を担う
対象競技 サッカー、弓道、卓球(2校)、バスケットボール(男女)、ソフトテニス(女子)、バレーボール(女子)の6種目8クラブ(令和7年度)
保護者負担額 参加費の徴収なし(令和7年度)。スポーツ安全保険は生徒1人あたり800円/年

取り組みの概要

矢板市では少子化で学校単位の部活動が維持しにくくなり、小規模校や団体競技では部員不足で単独チームが組めず、合同チーム化や希望種目の選択肢が狭まる事態が生じていました。教員数の減少や異動で専門的な指導が続かず、休廃部の懸念も高まっています。市は「地域全体で子供たちを支える仕組み」への地域展開が不可欠として協議会を設置し、推進計画・ガイドラインも策定済みです。令和7年度は総合型地域スポーツクラブの「たかはら那須スポーツクラブ」に業務委託し、矢板中学校・片岡中学校の6種目8クラブが令和7年5月〜令和8年1月の土日に月3回程度(1回3時間以内)活動しました。大会には中体連の部活動扱いで参加しています。市は令和8年度に休日の全部活動の地域展開を完了させることを見据えています。

特徴的な取り組み

  • 運営団体・指導者・顧問の3層の役割分担: たかはら那須スポーツクラブが統括責任者として地域クラブ指導員への指導と報酬の支払いを担い、各種目に1名以上の主任指導者(地域クラブ指導員)が生徒への指導と保護者連絡を行います。部活動顧問は運営補助者として月1回程度、指導員を補助します。月1回程度は学校部活動として教員と部活動指導員が一緒に指導し、平日と休日の指導の一貫性を保つ形です。
  • 指導員の職務を明文化して協議会で指示: 指導員は主に技術的な指導に従事するとしたうえで、実技指導、保護者等への連絡、学校外の大会・練習試合の引率、用具・施設の点検管理、年間・月間の指導計画の作成、生徒指導に係る対応、事故発生時の現場対応などの職務を明文化し、地域クラブ活動協議会で具体的に指示しました。事故時は「救急車の要請→保護者→顧問(不在時は教頭・校長)→クラブ」の順に連絡する手順も定めています。
  • 兼職兼業の教員と部活動指導員を地域クラブ指導員に: 教職員の兼職兼業で13名(弓道2・バスケットボール3・卓球5・サッカー1・バレーボール2)、部活動指導員との兼業で11名(弓道3・ソフトテニス1・バスケットボール1・卓球4・サッカー1・バレーボール1)が地域クラブ指導員として活動しました。広報紙や市役所職員への周知文書、保護者説明会でも指導者を募り、資格は必須とせず競技経験・指導実績・審判資格・教員免許等を確認しました。
  • 2校間6.5kmのバス輸送支援: 矢板中学校と片岡中学校は6.5km離れています。市の予算でたかはら那須スポーツクラブに「輸送支援」を委託し、クラブ所有のバスで練習試合や大会への移動を10日間・延べ約200人分運行しました。
  • 学校体育館の照明・冷暖房を減免: 地域クラブ活動でも照明・冷房・暖房を使えるよう減免を適用し、令和7年度までは使用料の負担なしとしました。施錠された器具庫や冷房設備はキーボックスで複数の指導者が使えるようにしています。
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課題と解決策

課題 解決策
メジャーな競技以外では専門の指導者が見つかりにくく、すべての部活動を地域へ展開するのは難しい。教職員アンケートでは54%が「携わりたくない」と回答 42%が「手当をもらって携わりたい(兼職兼業)」と答えたことを踏まえ兼職兼業制度を活用。退職教員・企業関係者・大学生・地域おこし協力隊などへ対象を広げ、クラブのニーズと指導者を結びつけるマッチング機能を強化する
学校顧問と地域指導者の指導方針の食い違いや生徒情報の共有不足で生徒が混乱する懸念 学校と地域・指導者をつなぐ地域クラブ活動担当コーディネーターの配置が必要と整理(令和7年度までは市教委事務局が担当)。ICTを活用した連携も検討
保護者が考える月謝は「2,000円〜3,000円」が約3割で最多だが、指導者側は1回3時間程度で「5,000円以上」の報酬を求めており、部員の少ない部では赤字になる 不足分を市の予算や国・県の補助金で補う公費支援を前提に、保護者負担(会費)の適正化と企業版ふるさと納税の活用を検討。送迎や費用の補助は財政部局と協議する
保護者の最大の懸念は送迎負担と費用負担で、共働き家庭から送迎が困難という声 拠点校方式の検討とあわせ、電車やスクールバス等による活動場所への移動手段の確保を検討

成果・効果

令和8年1月のアンケートでは、生徒の約8割が「体力・技術の向上」や「指導の分かりやすさ」を実感し、他校との交流を通じた満足度も高い結果でした。保護者は約7割以上が「専門的な知識・技能を習得できた」「子供の意欲が向上した」を良かった点に挙げています。教職員は約63%が負担軽減を「非常に感じる」と回答し、退勤時間の早期化や教材研究の時間確保を評価しました。県教育委員会の指導主事を講師にした指導者研修会(24名参加)では、「グッドプレーヤー像・グッドコーチ像」について話し合い、受講者から「指導方法についてもアップデートしていく必要性を感じた」という声がありました。令和7年11月には塩谷南那須教育事務所の主催で矢板市・さくら市・那須烏山市・高根沢町・塩谷町・那珂川町の担当者がオンラインで情報を共有し、近隣市町間の合同チームや指導者の相互活用について意見を交わしています。一方、保護者アンケートで次年度の継続を希望したのは約6割にとどまり、市は「指導者への報酬の財源・保護者負担」「指導者確保・体制強化」「連絡体制の確立」「生徒・保護者・教職員・地域への周知」の4点を今後の課題に挙げています。

出典

→ 原文: スポーツ庁「令和7年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書 栃木県矢板市」(報告書検索システム)
→ 原文: スポーツ庁「令和6年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書 栃木県矢板市」(報告書検索システム)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域展開・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

矢板市の事例は、中学2校という小さな規模で、既存の総合型地域スポーツクラブに休日の活動をまとめて委託し、学校との役割分担を文書で決めた点に特徴があります。指導員の職務を「実技指導」から「事故発生時の現場対応」まで列挙して協議会で指示し、事故時の連絡順まで定めたことで、顧問と指導員のどちらが何をするかの曖昧さを減らしました。兼職兼業の教員13名が指導に加わり、部活動指導員も地域クラブ指導員を兼ねているため、平日と休日で同じ人が関わる体制になっています。教職員アンケートで「手当があれば携わりたい」が42%いたことを制度に結びつけた形で、受け皿が少ない自治体が最初に取れる現実的な構成です。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

移植時の最大のハードルは謝金と会費の差です。矢板市の保護者アンケートでは月謝2,000〜3,000円が最多でしたが、指導者側は1回5,000円以上を求めており、市自身が「部員数が少ない部活動では運営費が赤字になる可能性がある」と書いています。会費を取らない実証期間のうちに、公費でどこまで補うかを財政部局と詰めておかないと、本格実施の段階で会費の急な引き上げか指導者の離脱のどちらかが起きます。もう一つは兼職兼業への依存で、顧問だった教員が参加しなくなった場合の指導者確保を市も「急務」としています。2校が6.5km離れている地域では、拠点校方式に移るとバスなど移動手段の予算も同時に必要になります。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

協議会の設置と推進計画・ガイドラインの策定は済んでおり、教育総務課・生涯学習課・総合政策課の役割分担も明確です。運営資金は市の負担と国・県の補助で賄っており、会費は徴収していないため、令和8年度以降の財源設計が持続性を左右します。市は企業版ふるさと納税やクラウドファンディングの検討を首長部局に位置づけていますが、具体額は未定です。コーディネーターが未配置で市教委事務局が調整を担っている点も、展開する種目が増える段階での負担になります。

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