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全種目 👥 5~10万人 🏫 中規模校(150〜300人) 📍 栃木県

【事例】栃木県下野市の部活動地域展開 ─ 教育委員会が運営主体となり部活動の外部指導者をそのまま起用、令和7年度は7クラブ・8部活動を休日の地域クラブへ

公開:2026.11.05 更新:2026.11.05
この記事でわかること

・教育委員会が運営団体となり、部活動の外部指導者をそのまま地域クラブに起用した下野市の進め方
・令和7年度に7クラブ・8部活動、指導者9人で運営した実績と、学校施設・部活動の備品を使った会費を抑えた運営
・コーディネーター不在・指導者確保・受益者負担・施設使用料減免など、行政直営で見えてきた課題

自治体名 栃木県下野市
人口規模 約5.9万人(59,014人・令和7年度スポーツ庁成果報告書記載)
中学校数 中学校3校・義務教育学校1校(生徒1,495人・部活動48部活、令和7年度)
運営形態 行政直営(主な運営団体は教育委員会。運営スタッフは置かず、教育委員会事務局がサポートする形で実施)。学校教育課が学校と指導者の連絡調整、生涯学習文化課が人材バンクの管理、スポーツ振興課が指導者募集の周知とスポーツ団体との連絡調整、教育総務課が休日の活動に必要な設備整備を担当
対象競技 卓球、サッカー、ソフトテニス、バスケットボール、剣道、バレーボール(令和7年度7クラブ・8部活動)
保護者負担額 卓球は1回500円(年額約24,000円)、剣道は月700円、それ以外のクラブは会費なし。指導者の報償費と指導者・生徒のスポーツ安全保険料(生徒1人あたり800円/年)は市費で確保

取り組みの概要

下野市には中学校3校と義務教育学校1校があり、少子化や部員数の減少によって、単独校で部活動が成り立つ学校と、すでに複数校で活動しないと成り立たない学校が生じています。市は生徒数の推移から団体スポーツの将来的な存続は難しいと捉え、生徒が多様な活動に参加できる機会の確保と学校の働き方改革の両面から、部活動を地域へ展開する必要があるとしています。令和5年3月に「令和8年度に休日の部活動の完全移行を目指す」ことを決め、教職員と保護者に説明しました。令和6年10月に石橋中学校の卓球部が地域クラブへ完全移行し、11月には南河内第二中学校のサッカー部が移行を始めました。令和7年度は4月に南河内第二中学校の卓球部と国分寺中学校の男女ソフトテニス部、5月に南河内第二中学校の剣道部と石橋中学校の女子バスケットボール部、7月に石橋中学校の男子バレーボール部が移行を始め、年度内に新たに6つの部活動を地域クラブにしました。協議会・検討会議は設置済みで、推進計画・ガイドラインは作成中です。

特徴的な取り組み

  • 教育委員会が運営団体を担う: 地域クラブの主な運営団体は教育委員会で、運営スタッフは置いていません。学校教育課の指導主事が学校・各種団体・指導者の連絡調整と運営上の指導助言を行い、年度当初には各学校で保護者に地域クラブ活動の説明をしました。地域展開を検討している部活動には、学校関係者・保護者・指導者との事前の話し合いの場を設けています。
  • 部活動の外部指導者をそのまま起用: 学校長からの情報をもとに、すでに部活動の外部指導者として関わっていた人に地域クラブの指導者を依頼しました。移行前には学校教育課の担当者と指導者が「栃木県学校部活動および新たな地域クラブ活動の在り方等に関する方針」などを確認し、休養日や活動内容をすり合わせています。移行準備期間を設けて顧問と地域クラブ指導者の双方で指導し、引継ぎを行いました。
  • 大会は学校部活動として参加: 連盟主催の大会などでは生徒が確実に参加できるよう、学校部活動としての参加を前提に移行を進めています。休日の練習試合や学体連以外の大会には地域クラブとして参加しています。大会で地域クラブの指導者が外部指導者として関わることで、生徒・保護者が安心して大会に臨めたとしています。
  • 学校施設と部活動の備品を活用: 受益者負担を最小限にし生徒の安全を確保するため、学校体育施設を中心に活動を組み、部活動の道具を地域クラブでも使えるよう調整しました。学校や学校周辺で活動することで、生徒が自転車で移動できています。中学生のみが市の施設を使う場合は、部活動と同様に使用料を減免しました。
  • 指導者人材バンクの設置: 生涯学習文化課を中心に「市地域クラブ活動指導者人材バンク設置要綱」を定め、人材バンクを設置しました。市公式ホームページ、市広報、地域クラブ活動ニュースレターで地域クラブ活動の情報を発信しています。
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課題と解決策

課題 解決策
学校のニーズに合う地域クラブの指導者を確保することが難しく、指導者が続けられなくなったときの引継ぎ者もいない 人材バンクの周知と指導者募集を市ホームページや広報で行い、県の研修会への参加を促すほか、複数の指導者が関われる運営体制を検討する
部活動地域移行コーディネーターの配置を予定していたが、諸般の事情で配置に至らず、事務局の負担が大きい コーディネーターの配置に向けて準備を進め、教育委員会事務局の関係課と関係団体の連絡調整を定期的に行う
市が運営の母体を担う場合、運営費などを徴収することが難しい。市の予算にも限りがある 他市町の情報を集めて受益者負担の進め方を検討し、地域クラブに参加するための費用負担額を保護者に周知する
中学生以外の参加者がいるクラブは市の公共施設の使用料が減免されず、一部のクラブで保護者負担が生じた 地域クラブが施設を利用する際の規約を見直し、施設使用料の負担を検討する
休日だけが地域クラブになっているため、学校部活動との連携に難しさがある 顧問と地域クラブ指導者が大会前の生徒のコンディションなどを共有できるよう助言し、顧問・指導者・生徒・保護者の連絡方法を確認する

成果・効果

令和7年度は地域クラブ7つ(部活動を移した形で8部活動)が活動し、指導者は9人、運営スタッフは9人でした。年間平均の参加生徒実数は1年生41人、2年生46人、3年生47人です。平均的な活動回数は月4回で、報告書に掲載された3クラブはいずれも休日1回、8時30分〜11時30分に活動しています。石橋卓球クラブは石橋体育センターと石橋中学校で活動し(1年4人・2年6人・3年2人、指導者1人)、小学生から大人までの幅広い世代と一緒に練習しています。国分寺クラブ(ソフトテニス)は1年15人・2年15人・3年19人が参加し、指導者2人で会費はありません。

令和8年1月のアンケートでは、地域クラブに参加した生徒から「体力・技術力が向上している」「指導が分かりやすい」「部活動がもっと好きになった」「他校の生徒と交流できるので楽しい」という回答があり、保護者からは「子供の交流の幅が広がった」、部活動顧問からは「自身が休めるようになった」「平日の顧問の指導に好影響があった」という回答がありました。生徒からは「他校の生徒と交流できるため、楽しい。また、自分に自信がもてるようになった」、指導者からは「地域クラブでは、小学生や大人とも交流を図り、地域での人々の交流になっている」という声が寄せられています。市は、指導主事が学校や指導者と丁寧に連絡調整したことで円滑に移行でき、予算を確保して保護者の金銭的負担を極力減らしながら運営できたと評価しています。一方、令和7年1月に小学5・6年生の保護者を対象に行った費用負担の意識調査は回答率が40%未満にとどまり、地域クラブ指導者向けの研修会や定期的な面談・活動参観は実施できなかったとしています。

報告書のロードマップでは、令和5〜7年度を「改革着手期間(準備・試行)」、令和8〜10年度を「一次計画期間(推進前期)」として地域クラブ活動の認定制度の開始、人材バンクの設置、公的支援の精査、平日の在り方の検討を進め、令和11〜13年度の「二次計画期間(推進後期)」に全ての学校部活動の休日の活動の地域展開開始と、安定的で持続可能な運営体制の確立、平日の活動方針の決定を掲げています。令和7年4月からは拠点校部活動制度も導入しており、その実施状況も踏まえて地域展開を進めるとしています。

出典

→ 原文: スポーツ庁「令和7年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書 栃木県下野市」(報告書検索システム)

→ 原文: スポーツ庁「令和6年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書 栃木県下野市」(報告書検索システム)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域展開・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

下野市の特徴は、受け皿団体を新たに探すのではなく、教育委員会自らが運営団体となり、部活動に関わってきた外部指導者に地域クラブの指導をそのまま任せた点です。指導者が変わらないため生徒・保護者の理解を得やすく、移行準備期間に顧問と指導者が一緒に指導して引継ぎを行っています。大会は学校部活動として参加する前提を崩さず、休日の練習を地域クラブに移す形をとったことで、6つの部活動を1年で移すことができました。総合型地域スポーツクラブの運営スタッフが高齢化し地域展開の業務を担うことが難しいため行政に本部を置いた、という報告書の記述は、受け皿の担い手が乏しい市町が取り得る現実的な選択肢を示しています。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

他地域が同じ形を取る際のハードルは、運営の負担が行政に集中することです。下野市ではコーディネーターを配置できず、学校教育課の指導主事が連絡調整・保護者説明・事前協議をすべて担いました。市が運営母体になると会費などの徴収が難しいという課題も報告されています。会費は卓球1回500円・剣道月700円・他は無料とクラブごとにばらつきがあり、受益者負担の考え方を整理する前に移行が先行しています。もう一つは、外部指導者を起用する方式は指導者がいる部活動から順に進むため、指導者のいない部活動が残りやすい点です。人材バンクを設置しても実際に指導者を確保できるかは別の課題で、市も指導者の確保が難しいことを繰り返し挙げています。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

検討委員会は設置済みですが、推進計画・ガイドラインは作成中で、地域クラブの要件や基準、事故時の管理責任・賠償責任の主体の明確化は今後の課題とされています。財源は指導者報償費と保険料を市費で賄っており、受益者負担の検討は他市町の情報収集の段階です。ロードマップは令和8〜10年度に認定制度と公的支援の精査、令和11〜13年度に全部活動の休日展開と持続可能な運営体制の確立を掲げており、行政直営からどの主体へ運営を移すかが今後の焦点になります。

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