【事例】埼玉県鶴ヶ島市の部活動地域展開 ─ 市の実行委員会が運営主体となり、剣道連盟の市内指導者で休日の剣道部を地域クラブ化、令和6年度のバスケットボールに続く2年目のモデル事業
・市が庁内に実行委員会を置いて運営主体となり、令和6年度バスケットボール・令和7年度剣道と種目を替えて試した鶴ヶ島市の進め方
・剣道連盟の市内指導者を確保した経緯と、BANDの2系統運用・視察会など小規模市でもできる工夫
・保護者の負担可能額1,000〜2,000円、体育館の共用や運営主体の確保など、本格実施に向けて残る課題
| 自治体名 | 埼玉県鶴ヶ島市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約7.0万人(69,668人・令和7年度スポーツ庁成果報告書記載) |
| 中学校数 | 公立中学校5校(生徒1,497人・運動部49部) |
| 運営形態 | 行政直営(教育委員会内の生涯学習スポーツ課が「鶴ヶ島市部活動の地域クラブ化(剣道)実行委員会」を庁内に設置して運営。担当職員がコーディネートし、学校教育課が既存部活動の情報提供、中学校が学校施設を提供) |
| 対象競技 | 剣道(令和7年度・スポーツ庁実証事業)。令和6年度は男女バスケットボール。市の教育委員会会議では、令和7年度は吹奏楽部でもモデル事業を実施していると報告 |
| 保護者負担額 | 無料(モデル事業のため)。スポーツ安全保険は生徒1人あたり800円/年 |
取り組みの概要
鶴ヶ島市では少子化により、常時活動のある部活動でも各中学校に設置されていない部があり、団体競技によっては試合を組めない事態が起きています。市内外には野球・サッカー・バスケットボールなどのクラブチームも相当数あり、部活動の減少に拍車をかけていると市は分析しています。市は令和5年度に部活動の地域クラブ活動移行検討委員会を設け、職員アンケートを経てモデル事業案を作りました。令和6年度は学校関係者・指導者・行政で組織する実行委員会を運営団体とし、12月の休日に市内中学校の男女バスケットボール部の活動を止めて地域クラブで活動するモデル事業を行いました。令和7年度は対象を剣道に替え、令和7年12月6日から令和8年1月24日まで月3回・計6回、中学校体育館で地域クラブ活動を行っています。協議会・検討会議は設置済みで、推進計画・ガイドラインは未策定です。
特徴的な取り組み
- 庁内に置いた実行委員会が運営主体: 実行委員長が会務を統括し、指導者2名と指導補助者1名が指導する体制です。市は将来的に市スポーツ協会などの団体が運営を担うことを想定していますが、関係役員との事前相談では「時期尚早」との判断となり、令和6年度・7年度とも市の実行委員会が担いました。
- 市内の剣道連盟から指導者を派遣: 令和6年度は市内で指導者を確保できず、高等学校バスケットボール部の指導者やスポーツ少年団指導者に依頼しましたが、令和7年度は剣道連盟の有段指導者(スポーツ少年団指導者)を市内で確保しました。市は前年度の課題だった市内指導者の確保を解決したとしています。
- 対象を全5校の生徒に拡大: 当初は市内2校を対象に1クラブを想定していましたが、対象人数が少ないため、剣道部で活動する全校の生徒に広げました。剣道部のある4中学校の休日の部活動を止め、1年生9人・2年生10人が参加しています。
- 連絡アプリ「BAND」を2系統で運用: 運営主体と指導者、運営主体と参加者でそれぞれ1アカウントを使い分けました。連絡体制は文部科学省の学校危機管理マニュアル作成の手引きを参考に作っています。
- 視察会で関係団体の理解を広げる: 活動中にスポーツ関係団体の視察会を開き、アンケートを取りました。大学教授の協力を得てアンケート項目を作り、中学校剣道部の専門部長を通じて学校の協力を求めています。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 地域クラブの設置には人件費をはじめとする運営経費が必要で、生徒からの低廉な会費では賄えない部分がある | 会費徴収で賄えない経費について、公的資金の投入や地域スポーツクラブのような収益事業も検討する |
| 運営主体として想定する団体に、地域クラブの必要性についての意識が醸成されていない | 関係団体への説明や研修の機会を根気よく設け、多くのスポーツ団体と課題を共有する協議体などを組織する |
| 指導者の確保に一定のガイドラインが必要。指導者からは「地域クラブの指導は負担を感じる」「指導者の条件や適性など一定の条件が必要」との意見があった | 地域展開の推進計画・ガイドラインを作成して指導者確保の考え方をまとめ、資格に加えて指導実績も確認する |
| 当日の欠席連絡など緊急時に個人のスマートフォンを使う場面があった | クラブの専用端末と個人端末の使用範囲を明確にする |
| 体育館の半面を既存の部活動と共用したため使用責任の区分が不明瞭になり、更衣場所の確保や空調の温度設定にも課題が出た | 体育館に防災用パーテーションを持ち込んで更衣場所とした。本実施や事業数の増加に備え、市内体育館の使用形態や備品の借用ルールを整理する |
成果・効果
終了後のアンケートでは、剣道の技術について「できるようになった」と感じている生徒が多く、市は昇段・昇級試験で行われる「剣道形」を指導できる指導者に教わったことが理由と分析しています。参加生徒からは「一人一人の欠点を細かく教え合えた。他の学校の人とも仲良くなった」「自分に合ったアドバイスをしてくれた。強い人とたくさん稽古できた」という声がある一方、「場所を固定して欲しい」という声もありました。指導者は参加者の技量に差があったため、上級者が不参加の日は特に気持ちや向上心につながる教え方をし、回を重ねるごとに積極性が見られたと報告しています。視察したスポーツ団体からは「地域クラブは重要。指導者の条件などガイドラインは必要」との意見が出ました。
費用面では、モデル事業は無料で行いましたが、終了後の保護者アンケートで支払える金額は1,000円から2,000円との回答が多くありました。「事業を継続してほしい」「費用がかかっても参加させたい」には「どちらともいえない」が多く、市は地域展開が進められていることがあまり知られていないのが現状だとしています。令和6年度のバスケットボールのモデル事業(男子37人・女子44人が参加)でも、学校行事に配慮した日程づくりや参加者の意識・技量の幅の広さが課題になりました。市のロードマップでは、令和8年度以降に地域クラブ協議会でガイドラインを検討・策定し、休日の地域クラブ活動費等の支援(補助)に取り組む計画です。市の教育委員会会議(令和8年2月12日)では、担当課長が令和8年度に地域クラブ化への移行に向けた今後の方針をまとめ、試行的な事業を行う考えを示しています。
出典
→ 原文: スポーツ庁「令和7年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書 埼玉県鶴ヶ島市」(報告書検索システム)
→ 原文: スポーツ庁「令和6年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書 埼玉県鶴ヶ島市」(報告書検索システム)
→ 原文: 令和8年第2回教育委員会会議録(鶴ヶ島市公式ホームページ)
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