【事例】東京都足立区の部活動地域展開 ─ 新田中サッカー部をプロチーム運営の地域クラブにして平日・休日とも一貫指導、令和8年度からは10校30部の外部委託を計画
・新田中学校のサッカー部を、プロチームを運営する事業者が平日・休日とも指導する地域クラブにした足立区の仕組み
・年会費5,000円・区負担を大原則とした令和7年度の収支と、生徒の約80%が技術向上を実感したアンケート結果
・令和8年度の10校30部から令和11年度の35校105部活へ外部委託を広げる計画と、施設・連絡体制の課題
| 自治体名 | 東京都足立区 |
|---|---|
| 人口規模 | 約69.3万人(693,223人・令和7年度スポーツ庁成果報告書記載) |
| 中学校数 | 公立中学校35校(生徒13,104人・運動部228部) |
| 運営形態 | 民間事業者(プロチームを運営する株式会社エリースフットボールグループが地域クラブを運営)。教育委員会事務局教育指導課が運営の総括と受け皿団体との契約折衝を担い、首長部局のスポーツ振興課・地域文化課が地域クラブ化のスキームを教育委員会と検討 |
| 対象競技 | サッカー(令和7年度・新田地域サッカークラブ1クラブ) |
| 保護者負担額 | 年額5,000円(3年生は3,000円)。スポーツ安全保険は生徒1人あたり800円/年 |
取り組みの概要
足立区はこれまで地域連携事業の一環として、会計年度任用職員の部活動指導員を約80名配置してきました。区の地域展開事業は令和7年度の取り組みが初めての試みです。東京都が令和6年度に行った「未来へつなぐ部活動改革アンケート」で専門的な指導者の配置が必要と認識した一方、生徒の安全と確かな技術指導を両立できる運営団体の選定は難しく、区はプロチームを運営団体として地域クラブを始めました。種目は競技者が多いことからサッカーを選び、サッカー部の運営と中体連との連携に精通した顧問がいる新田中学校を対象校にしています。令和6年に協議会を設けて検討を始め、生徒・保護者への説明、運営団体・指導者・拠点校の選定を経て、令和7年4月に「新田地域サッカークラブ」の活動を始めました。協議会は設置済みで、推進計画・ガイドラインも策定済みです。
特徴的な取り組み
- 平日・休日とも同じ事業者が指導: 平日と土日で指導者が異なると指導の一貫性や指導者との関係性が保てないとして、区は運営団体に平日・休日の両方の指導を委託しました。令和7年4月から令和8年3月まで、平日123回(16時〜18時)・休日60回の活動を行い、前年度までの部活動と同じ原則週4日の頻度を保っています。
- 勝利至上主義に偏らない運営: 運営団体はプロスポーツチームですが、参加者全員が大会に出場できる運営を基本にしています。3年生を含め約40名が所属し、1クラブで2チームを編成して全員が大会に出場しました。大会は中体連の大会には部活動として、その他の大会には地域クラブとして参加しています。
- 教育委員会の職員がコーディネーター: 担当課の管理職と統括指導主事を統括コーディネーター、指導主事と事務係長各1名をコーディネーターに充て、区・学校・受託者の責任者と連絡体制を明確にしました。指導者には、教育的な側面への考え方、体罰・ハラスメント防止、大会手続き、緊急時の対応、個人情報保護などの研修を行っています。
- 1対1の会話ができない連絡アプリ: 区の個人情報審議会の審査を通過したアプリを導入し、生徒・保護者・運営団体・教育委員会が活動内容を共有しています。生徒・保護者・指導者が1対1で会話できない仕様にして、生徒の安全を担保しました。
- 専用グラウンドとキーボックスで学校の負担を軽減: 活動拠点の新田中学校第2グラウンドには、運営開始前から夜間照明、施錠できる門、クラブハウス、用具の保管スペースがありました。キーボックスを導入して鍵の受け渡しに学校担当者を介さない仕組みを作り、全活動の67.7%を学校施設で行っています。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 生活指導事案が起きたとき、運営団体から教育委員会を経て連絡が届くため、所属校の教員が状況を把握するまでに時間がかかり、再度の聞き取りが必要になる場合もあった | 学校担当者へいち早く事案の概要を報告し、再度の聞き取りが極力不要となる連携体制を作る |
| 区立中学校35校の部活動は合わせて400を超え、教育委員会の担当者がコーディネーターとして全区の地域クラブを担当することは困難 | コーディネーター業務の委託や教員経験者の配置など複数の選択肢を総合的に判断して、多くの地域クラブをコーディネートできる体制を検討する |
| 全ての種目をプロスポーツチームに委託することは難しく、地域クラブ運営全般に精通した団体の選定には手間と時間がかかる | 種目ごとの特性(活動施設・指導者数・活動頻度)と地域の特性(施設の有無・運営団体の有無)を踏まえて契約できる団体を選ぶ |
| 専用グラウンドとクラブハウスを持つ学校は例外的で、全ての地域クラブを学校施設だけで同じ環境に整えることは難しい | 運営団体や人材だけでなく活動施設の面でも精査して展開し、各校の施設利用ルール・マニュアルを策定する |
| 部活動として管理してきた部費の引き継ぎ・精算や、今後の参加費の徴収・支援が大規模になる | オンライン決済などの簡素化を検討し、大規模な取り組みを安定して運営できる事務局体制を作る |
成果・効果
アンケート(所属生徒27名・保護者26名回答)では、生徒の約80%が「技術が向上した」、約78%が「説明や指示が分かりやすい」、約74%が「今後も指導を受けたい」と答えました。保護者の約81%が感想として「専門的な指導が受けられる」を選び、前年度に顧問だった教員2名はいずれも「負担が少し軽減された」と答えています。指導者2名はいずれも大会審判の資格を持ち、うち1名は委託開始前に資格を取得しました。区は、練習頻度や大会参加を前年までの部活動から大きく変えずに運営でき、プロチームによる指導に効果があったと評価しています。
令和7年度の支出は合計約730万円(7,301,120円)で、地域クラブ活動費が53.7%、事務局運営費が46.3%でした。区は実証段階の第一歩として区による負担を大原則とし、会費は前年度までの部活動と同程度の最小限の額に設定しています。徴収した会費は運営事業者が受領・管理し、大会参加費やクラブユニフォームの購入に充てました。令和6年に区が行った保護者アンケート(4,447名回答)では、休日の地域クラブに参加させる場合の負担額として「月あたり2,500円〜5,000円程度」が69.0%、「費用負担が生じるなら参加させない」が21.9%でした。
報告書に掲載された令和7年11月20日の区長定例記者会見資料では、新たにモデル校を10校選び、令和8年夏頃から運動部25部・文化部5部(テニス・バスケットボール・バドミントン・吹奏楽など約10種目)の外部委託を始める計画が示されています。平日・休日を問わず部活動を運営できる事業者をプロポーザルで選び(令和8年5月予定)、技術指導のほか日程管理、生徒・保護者連絡、大会手続きなどを委託し、各部活に1名の顧問を外部から配置する予定です。今後の目標は令和10年度に20校60部活、令和11年度に35校105部活です。
出典
→ 原文: スポーツ庁「令和7年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書 東京都足立区」(報告書検索システム)
→ 原文: 令和7年11月 足立区長定例記者会見資料(足立区公式ホームページ)
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