【事例】山口県美祢市の部活動地域展開 ─ 休日は全9種目を市教委運営の地域クラブへ、平日も6種目が展開済み スクールバスとコミュニティバス無料パスで広域の移動を支える
・休日は全9種目、平日も6種目を地域クラブへ移した美祢市の、市教育委員会が運営団体となる体制
・スクールバスの休日送迎と、コミュニティバス・体育施設が無料になる「美祢市どんどん巡ろうパスポート」
・令和7年度の全種目展開の目標が届かなかった理由と、資格取得の全額助成など指導者確保の取り組み
| 自治体名 | 山口県美祢市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約2.0万人(20,404人・令和7年度スポーツ庁成果報告書記載) |
| 中学校数 | 公立中学校5校(生徒387人・運動部17部) |
| 運営形態 | 行政直営(美祢市教育委員会が運営団体となり、地域団体・人材を活用した市運営型の地域クラブ9クラブと、指定管理者が運営する水泳1クラブ)。生涯学習スポーツ推進課・部活動改革推進室が主管し、学校教育課が学校との調整、教育総務課が送迎バス・タクシーの調整を担当 |
| 対象競技 | サッカー、剣道、水泳、軟式野球、ソフトテニス、弓道、卓球、陸上競技、バレーボール(男女)の9種目・10クラブ(令和7年度) |
| 保護者負担額 | クラブにより月0円〜5,500円(サッカー月2,000円、剣道月1,000円・1,500円、軟式野球月1,000円、水泳月5,500円、ソフトテニス・弓道・卓球・陸上競技・バレーボールは会費なし)。スポーツ安全保険は生徒1人あたり800円/年 |
取り組みの概要
美祢市は1市2町の合併で生まれた面積472.64k㎡の市で、平成25年に中学校8校・生徒647人だったものが、令和7年度は5校・387人まで減りました。生徒の過半数の207人が1校に在籍し、残り4校は小規模校です。中学校が広い市域に点在しているため、地域クラブ活動の移動手段の確保と、安定した指導体制のための指導者確保が大きな課題になっています。市は令和4年度に協議会を設け、美東中学校を拠点校として実践研究を始めました。令和5年度の報告書では、令和5〜7年度を部活動改革推進期間とし、令和7年度の新チームから学校部活動を終えて平日・休日ともに地域クラブ活動へ移す目標を掲げていました。令和6年度には休日の活動について、学校部活動にあったすべての種目が地域クラブに移りました。協議会は設置済みで、推進計画・ガイドラインも策定済みです。
特徴的な取り組み
- 市教育委員会が運営団体となる地域クラブ: 各競技の連盟・協会やクラブが実施主体として活動計画・指導・保護者への連絡・大会申込を担い、市教育委員会が運営団体として運営体制の整備、指導者謝金の支払い、保険加入、連絡アプリの導入を担います。陸上競技は市陸上競技協会、弓道は市弓道連盟の指導者が中心です。
- 受け皿が決まった種目から順に説明会: 受け入れ団体や指導者の決定には種目ごとに時間差が出るため、すべての種目がそろうのを待たず、指導者・受け入れ団体が決まった種目から保護者説明会を開きました。平日を含めた体制が整った地域クラブから順次説明しています。
- スクールバスで休日の合同活動: 中学校の統廃合を経て市が多く保有するスクールバスを使い、休日は各学校から活動場所まで生徒を送迎しています。平日は各中学校ごとに活動しています。
- 「美祢市どんどん巡ろうパスポート」: 市内在住の小中学生に発行するパスポートで、市内のコミュニティバスの運賃が免除され、市内の体育施設と一部の文化施設の使用料も免除されます。市はスクールバスとあわせて移動手段を確保したことで、保護者負担の軽減と体験格差の解消が図られているとしています。
- 指導者の資格取得を全額助成: 中体連主催大会の参加に有資格者が必要な種目の指導者に、資格取得費用の全額と講習会場までの旅費を助成しました。令和7年度はバレーボール男女各1名、ソフトテニス2名、卓球3名の計7名がJSPO公認コーチⅠの講習を受講しています。大会参加の条件にかかわらず、すべての指導者に公認コーチ資格の取得を推奨しています。
- 「部活アプリ」で四者をつなぐ: 民間企業の連絡アプリを導入し、地域クラブ指導者・保護者・学校教職員・市教育委員会で活動予定や出欠を共有しています。学校部活動と地域クラブ活動が併存する種目では、学校行事の予定もアプリで共有しました。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 平日も地域クラブへ展開するための指導者が足りない。展開済みの種目でも、平日は各学校の練習会場すべてに指導者を配置できていない | 各地域クラブと競技団体に知り合いの競技経験者への声掛けを依頼し、市のSNSでも広く指導者を募集する。近隣住民への声掛けで新たな指導者が見つかった種目もある |
| 中体連主催大会に地域クラブとして出るには、種目によって有資格の指導者が必要 | 資格取得費用と旅費を全額助成。資格取得費用の補助は指導者の金銭的負担を減らす制度として引き続き検討する |
| 指導者の質の確保 | 年度当初にJSPOのオンライン講習によるハラスメント研修を全指導者に実施。年度末には山口県スポーツ協会の派遣講師によるメンタルトレーニングとけが予防の研修会を開いた |
| 活動場所の重複や会場変更の希望、学校の施設・備品の維持管理 | 種目ごとにバランスよく活動場所を定め、学校の屋外部室を備品保管場所として整備し、指導者に合鍵を配布した。施設・備品の維持管理は教育委員会内で対応方針を検討する |
| 指導者謝金・物品・移動の経費の確保。令和8年度以降、交付金だけに頼らない財源が必要 | 持続可能な自主財源の確保を検討する |
成果・効果
令和7年度は10の地域クラブが活動しました。各クラブの指導者と年2回程度協議を重ね、問題点を洗い出した結果、陸上競技と弓道が8月から平日も地域クラブで活動するようになり、令和6年度の剣道・サッカー・軟式野球・水泳とあわせて6種目が平日を含めて地域クラブへ展開しました。陸上競技(参加21人)と弓道(参加27人)は4〜7月は休日の週1回、8月以降は平日2日と休日1日の週3回程度活動し、移動にはスクールバスを使っています。ソフトテニス(参加75人)は10月から平日の活動も始め、令和8年度当初に地域展開する予定です。市は、平日の活動も少しずつ地域クラブへ移せていることが学校教職員の働き方改革につながっているとしています。
一方、令和7年度の新チームをめどにすべての種目を地域へ移す目標は実現しませんでした。市は、平日の運営体制を整えられなかったことと、中体連主催大会の参加条件である公認コーチ資格を持つ指導者の確保が難しかったことを理由に挙げ、人口規模の小さい自治体では指導者の確保が大きな懸案だとしています。バレーボールと卓球は令和8年度末で学校部活動を終え、令和9年度当初からの地域展開を目指して体制づくりを進めています。地域クラブ活動のほかに、水泳とピックルボールの体験イベント「Mチャレ!チャレンジスポーツ」も市独自に開きました。
出典
→ 原文: スポーツ庁「令和7年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書 山口県美祢市」(報告書検索システム)
→ 原文: スポーツ庁「令和5年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書 山口県美祢市」(報告書検索システム)
CONSULTING / 専門家に相談
受け皿団体の組織整備・経営について
専門家に相談しませんか?
設立手続きの進め方・行政との調整・資金計画など、
総合型地域スポーツクラブ特化のコンサルティングをご提供しています。