トップ 事例を探す 山口県 【事例】山口県山口市の部活動地域展開 ─ 17中学校×地域クラブ活動推進室×「やまぐち路傍塾」指導者ネットワーク×R8移行開始
全種目 👥 10~30万人 🏫 中規模校(150〜300人) 📍 山口県

【事例】山口県山口市の部活動地域展開 ─ 17中学校×地域クラブ活動推進室×「やまぐち路傍塾」指導者ネットワーク×R8移行開始

公開:2026.07.09 更新:2026.07.09
この記事でわかること

・山口市の17中学校×地域クラブ活動推進室による部局横断型のガバナンス設計
・「やまぐち路傍塾」を軸にした8ルート指導者確保と既存インフラ活用の設計
・R8から平日・休日を同時に移行開始する先進的スケジュールの意味

自治体名 山口県山口市
人口規模 約19.4万人(県庁所在地)
中学校数 市立17校(100人未満6校=35.3%/100-200人未満1校/200-300人未満4校/300-400人未満3校/400人以上3校)
運営形態 行政直営「地域クラブ活動推進室」+「山口市中学校部活動改革推進協議会」+市が設置する「本部」で地域クラブ認定を実施
対象競技 運動部216部・文化部(R5時点)/令和8年度から平日・休日ともに地域クラブ活動へ移行開始
保護者負担額 認定要件・会費設定・保護者負担軽減は関係者と別途協議・検討(R6.3推進方針時点で具体額未公表)

取り組みの概要

山口県山口市は令和6年3月に「山口市中学校部活動の地域クラブ活動への移行に関する推進方針」を策定し、令和8年度から平日と休日の学校部活動を地域クラブ活動へ移行させることを決定しました。市立中学校は17校で、うち100人未満の小規模校が6校(35.3%)を占め、生徒数200人未満の7校では部活動数が2〜6部に留まる一方、400人以上の3校では20部以上という格差が発生。運動部加入率は平成30年78.2%から令和5年61.7%に16.5ポイント低下し、運動部の総数も平成26年302部から令和5年216部と10年間で86部(28.5%)減少しています。0〜14歳人口は令和2年24,796人から令和42年に15,091人(-39.1%)まで大幅減少する見通しの中で、学校規模格差と少子化に同時に対応する制度設計が求められています。

特徴的な取り組み

  • 専門部署「地域クラブ活動推進室」設置: 山口市は部局横断体制で「地域クラブ活動推進室」(部活動地域移行推進室)を設置し、R5〜R7の改革推進期間中の具体検討を担当。教育委員会だけでなく市長部局も関与する体制です。
  • 「やまぐち路傍塾」指導者ネットワーク活用: 山口市教育支援ネットワーク「やまぐち路傍塾」の登録者を地域クラブ活動の指導者として活用。既存のコミュニティ・スクールと地域協育ネットコーディネート機能を組み合わせて、「地域の子どもたちは、学校を含めた地域で育てる」理念を継承する設計です。
  • 多様な指導者確保の8ルート: ①やまぐち路傍塾登録者、②スポーツ・文化芸術団体指導者、③部活動指導員、④退職教員、⑤兼職兼業許可の現職教職員・市職員、⑥企業関係者・公認スポーツ指導者・スポーツ推進委員、⑦大学生・高校生・保護者、⑧地域おこし協力隊の8ルートを推進方針に明記。
  • 市が「本部」を設置しクラブ認定: 山口市は「市内で行われる地域クラブ活動を統括するために、本部を設置し、地域クラブの認定等を行う」と明記。既存団体・民間クラブと新規団体の両方を市認定制度で受け入れる二本立て構造です。
  • コミュニティ・スクールとの一体運営: 地域クラブ活動を通じて「多様な人材が学校と関わることにより、コミュニティ・スクールなどが深化・充実することが期待できる」と学校への効果を明記し、既存の学校運営協議会と地域クラブを相互強化する設計です。

課題と解決策

課題 解決策
17校中6校が100人未満・部活動数2〜6部で生徒の選択肢が乏しい 市認定制度で市内広域の地域クラブに複数校の生徒が横断参加できる仕組みを構築
運動部加入率がH30 78.2%→R5 61.7%と16.5pt低下 「やまぐち路傍塾」等の多様な指導者確保ルートで種目を維持し、加入率低下に歯止め
0-14歳人口が令和42年に-39.1%まで減少見通し 令和8年度から平日・休日ともに地域クラブ活動へ移行することで、少子化の中でも活動継続
教職員の25%(80人)が地域クラブに関与希望、75%は非希望 兼職兼業許可を経た地域指導者ルートを制度化し、希望教職員のみが関与できる柔軟な仕組み
認定要件・会費・保護者負担軽減の詳細未確定 関係団体等からなる新たな協議組織で具体検討、R8移行開始までに詳細確定を目指す

成果・効果

推進方針では、地域クラブ活動移行に伴う3層の期待効果を明示しています。①生徒への効果=少子化により存続が厳しくなった活動の継続、選択肢拡大、経験ある指導者からの技能指導、他校生徒・多世代交流/②学校への効果=教員の授業準備・教材研究時間の確保による学校教育の質向上、コミュニティ・スクール深化/③地域への効果=新たなコミュニティ形成、地域で育った子どもが将来指導者になる好循環、学校施設開放による地域スポーツ・文化芸術活動の充実。R5〜R7の改革推進期間で山口市中学校部活動改革推進協議会が具体検討を進め、R8年度に地域クラブ活動への移行を開始する段階的スケジュールです。

出典

→ 原文: 山口市中学校部活動の地域クラブ活動への移行に関する推進方針を策定しました(山口市公式サイト)

→ 推進方針PDF: 山口市中学校部活動の地域クラブ活動への移行に関する推進方針(令和6年3月・山口市/山口市教育委員会)

→ 専門部署: 地域クラブ活動推進室(山口市公式サイト)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

山口モデルの核心は「既存の地域資源への接続」です。他自治体が「地域移行のために新しく指導者バンクを作る」設計を採るなかで、山口市は既に運用されている山口市教育支援ネットワーク「やまぐち路傍塾」・コミュニティ・スクール・地域協育ネットコーディネート機能という3つの既存インフラの上に地域クラブ活動を乗せる設計です。これにより、指導者確保のゼロベース立ち上げを回避しつつ、コミュニティ・スクールという既存のガバナンスの上で地域クラブを運営できる。同時に、R8から平日・休日ともに移行するという踏み込んだスケジュールは全国的にも先進的で、休日先行→平日追随ではなく最初から両輪を回す姿勢が特徴です。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

「やまぐち路傍塾」のような教育支援ネットワークが既に存在する自治体は限られるため、他地域移植時の第一ハードルは既存指導者ネットワークの有無です。ない場合は、①退職教員会・スポーツ協会・大学の3者連合で最小構成の指導者バンクを先行構築、②コミュニティ・スクール(学校運営協議会)と地域クラブ本部を制度上連結、③兼職兼業許可基準を教育委員会規則で明示、の3ステップで代替設計が可能です。もう1つの示唆は「17校中6校が100人未満」という学校規模格差への対応で、山口市は市内広域クラブに複数校生徒が参加できる仕組みで解決を図っており、同様の格差を抱える中規模市には強い参考になります。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

「地域クラブ活動推進室」という専門部署の設置は、部活動改革を係の兼務業務にせず組織図上に明示した点で持続性が高い設計です。市長部局と教育委員会の部局横断体制、山口市中学校部活動改革推進協議会と新たな協議組織の2層構成も明確です。一方、認定要件・会費・保護者負担軽減の詳細は「関係者等と別途協議・検討」として未確定であり、R8移行開始まで残り時間の中でどこまで具体化できるかが持続可能性の鍵。R11以降「進捗状況を評価・分析し、さらなる改革」を計画本文で明示している姿勢は透明性が高いと評価できます。

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