【事例】広島県府中市の部活動地域展開 ─ 中山間地で受け皿を1団体に頼らず、市教委が人材バンク・競技連盟・兼職兼業教員を派遣してサッカーとソフトテニスを地域クラブで実証
・中山間地の府中市が、市教委による人材バンク・競技連盟・兼職兼業教員の派遣でサッカーとソフトテニスを実証した体制
・ソフトテニスで明文化したコーディネーターの役割と、市議会議員や商工会議所まで加えた運営委員会での認定要綱の検討
・他種目の指導者不足、コーディネーターの人件費基準、財源確保という小規模市の今後の課題
| 自治体名 | 広島県府中市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約3.5万人(34,846人・令和7年度スポーツ庁成果報告書記載) |
| 中学校数 | 4校(府中市立第一中学校ほか3校、生徒788人・運動部36部) |
| 運営形態 | 行政直営(府中市教育委員会が実施主体となり、人材バンクの管理と指導者派遣を担う。指導者は部活動の指導者等の人材バンク登録者、スポーツ協会の連盟員、兼職兼業の教員等。首長部局は社会体育施設の利用規約の見直しや文化芸術・スポーツ団体との連携を担当) |
| 対象競技 | サッカー、ソフトテニス(令和7年度2クラブ・7部活動) |
| 保護者負担額 | サッカーは月会費1,000円(年12,000円・遠征費等により変動あり)、ソフトテニスは会費なし。スポーツ安全保険は生徒1人あたり800円/年 |
取り組みの概要
府中市では市立学校の児童生徒数が令和7年度の2,118人から令和12年度には1,619人まで減る見込みで、中学生も788人から668人に減ると見込まれています。各学校の部活動の数や活動は限られつつあり、大会に合同チームで参加する部活動もあります。市は中山間地域で学校間の距離があり、市の中心部まで車で40分かかる学校もあるため、保護者の送迎負担も課題に挙げています。こうした地理的な条件を踏まえ、市は1つの団体に受け皿をお願いするのではなく、人材バンク登録者・スポーツ協会の連盟員・兼職兼業の教員などを市教育委員会が指導者として派遣する形で、令和7年度にサッカーとソフトテニスの地域クラブ活動を試験的に実施しました。第一中学校のサッカー部は令和7年4月から、ソフトテニス部は7月から活動を始めています。市のロードマップでは、令和10年度までに可能な種目から月1回以上の地域展開を実証し、令和11年4月からの地域展開に向けて最終協議を行う予定です。
特徴的な取り組み
- 市教委による指導者派遣型の地域クラブ: 「府中市地域クラブ」として、サッカーは第一中グラウンドなどで月4回(9時〜12時)、ソフトテニスは第一中・府中明郷学園・府中学園の生徒が府中市中須テニスコートなどで月2回(9時〜12時)活動しました。指導者はサッカー2人、ソフトテニス7人で、地域の方と兼職兼業の教員が担っています。大会には中体連の部活動として参加しています。
- ソフトテニスは連盟が中心となりコーディネーターが調整: スポーツ協会のソフトテニス連盟が中心となり、市内のソフトテニス部が月2回程度、地域クラブとして活動しています。コーディネーターが参加者管理、指導者の調整、活動場所の利用調整、スケジュール管理、顧問教員との連携、実績簿の整理、出欠確認と電話連絡、保険対応、けがや緊急時の対応までを担い、教育委員会の担当者と連携して円滑に活動できたと市は評価しています。
- 市独自の人材バンク: 部活動の指導者等にかかる人材バンクを設置し、案内チラシの配布と市ホームページ・市公式SNSで周知した結果、令和7年度の登録者は7名でした。人材の発掘とマッチングは令和5年度から一般社団法人府中青年会議所と連携しています。
- 多様な構成員の「府中市地域クラブ運営委員会」: 府中市スポーツ議員連盟(市議会議員)、府中商工会議所、府中市CS連絡協議会、中学校校長会長、中体連会長、PTA連合会、府中青年会議所、市長部局(スポーツ振興課等)、教育委員会などで構成し、令和7年11月と令和8年2月に開きました。来年度以降に制定する「府中市認定地域クラブ活動認定要綱」の案を協議しています。
- 不適切な指導の未然防止: 指導者に体罰やセクシュアル・ハラスメント等の防止研修を行い、コーディネーターを通じて指導方針を伝えるなど、教育委員会が指導助言を行っています。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 実施しているサッカーとソフトテニス以外の種目では指導者の確保が難しく、地域展開の取組が停滞している部分がある | 人材バンクの周知をさらに広げ、教職員や市職員の兼職兼業、スポーツ団体・企業・大学等からの指導者派遣など、市全体で取組を進める |
| 競技団体や総合型地域スポーツクラブ、近隣市町など多様な団体と連携がとれておらず、人的資源やノウハウを活用できていない | 近隣の団体や総合型地域スポーツクラブ等と包括的な連携協定を結ぶなど、つながりを強化する |
| 施設利用料・備品購入費・指導者謝礼などの財源の確保。予算内での人材配置になる | ふるさと納税、賛助会員制、企業等からの寄付、クラウドファンディングなどを検討し、府中市にふさわしい形を整備する |
| 各種目のコーディネート業務を担う人材の発掘と、業務内容・人件費の基準づくり。生徒・指導者が増えると連携ミスや過誤が起きやすくなる | 各種目にコーディネーターを配置する組織を構築し、情報共有を円滑にするITツールやプラットフォームの活用を検討する |
| 適切な参加費や指導者条件など、市の基準をどこに設定するか | 府中市地域クラブ運営委員会で、市の実態に合った認定要件や基準を協議する |
成果・効果
令和7年度はサッカーに1年生7人・2年生7人・3年生10人、ソフトテニスに1年生32人・2年生18人・3年生7人が参加しました。市は運営委員会の開催で部活動改革の理念を関係者と共有できたとしており、その理念として「市内全ての子供たちの『やってみたい』に応える環境づくり」「多様な地域で、多様な世代とともに、多様な文化芸術・スポーツ活動等への参加が可能な環境づくり」「地域・地元企業も巻き込んだ大人の『やってみたい』も実現するまちづくり」の3点を掲げています。運営委員会では市議会議員や商工会議所、青年会議所まで加わったことで、部活動の地域展開・地域連携のあり方について多面的・多角的な意見を交わせたと評価しています。人材バンクの周知は継続的な指導者確保につながっており、体罰やハラスメントの問題が顕在化する前に研修や指導を行ったことで未然防止につながったとしています。ソフトテニスで整理したコーディネーターの役割は、来年度以降も必要に応じて見直すとしています。
出典
→ 原文: スポーツ庁「令和7年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書 広島県府中市」(報告書検索システム)
→ 概要: スポーツ庁「令和7年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書 概要 広島県府中市」(報告書検索システム)
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