トップ 事例を探す 山口県 【事例】山口県長門市の部活動地域展開「Nクラ」 ─ 中学校の部活動を廃止し市営地域クラブへ完全移行・10種目252人を指導者123人が支える
全種目 👥 1~5万人 🏫 小規模校(〜150人) 📍 山口県

【事例】山口県長門市の部活動地域展開「Nクラ」 ─ 中学校の部活動を廃止し市営地域クラブへ完全移行・10種目252人を指導者123人が支える

公開:2026.08.01 更新:2026.08.01
この記事でわかること

・令和7年8月19日に中学校の部活動を廃止し、市営地域クラブ「Nクラ」へ完全移行
・10種目を各1チームに集約し、市内5校の生徒252人を指導者123人が支える体制
・会費は月額1,000円・就学援助世帯は半額減免。学校間移動は5方面のバス運行で市が担保

自治体名 山口県長門市
人口規模 約3.3万人(2020年国勢調査:32,519人。うち15歳未満3,039人)
中学校数 5校(平成27年度末の統廃合により5校体制)
運営形態 行政直営(市が運営する地域クラブ「NAGATOスポーツ・カルチャークラブ=Nクラ」。事務局は長門市スポーツ文化交流課 地域クラブ運営企画室)
対象競技 10種目・各1チーム(軟式野球/バレーボール女子/バスケットボール男子/陸上競技男女/ソフトテニス男女/卓球男女/柔道男女/剣道男女/吹奏楽/美術。令和7年12月1日時点)
保護者負担額 月額1,000円/人(就学援助受給世帯は半額減免。別途申請が必要で毎年6月頃に案内)。中央競技団体への選手登録料、個人に帰属する用具・衣類は別途負担

取り組みの概要

山口県長門市は、令和7年8月19日に市内中学校の部活動を廃止し、市が運営する地域クラブ「NAGATOスポーツ・カルチャークラブ(通称:Nクラ)」へ完全移行しました。移行初日の実施は10種目、参加生徒252人、指導者123人という規模です。吹奏楽は同年12月に移行しました。

市が公開する参加者ガイドは、移行の理由を「少子化により各中学校単位での部活動の維持存続が困難となってきている中、国が推進する学校教員の働き方改革をふまえた『公立中学校部活動の地域移行』の取り組みをチャンスと捉え、令和7年8月に市内全ての生徒が共通の種目選択肢を確保し、平日休日ともに持続的にスポーツ・文化芸術活動に親しめるよう、市が運営する地域クラブを設置することとしました」と説明しています。

特徴は、休日だけを切り出すのではなく平日を含めて丸ごと市営クラブへ移した点です。活動は平日の火・木曜16時15分〜17時45分(90分)と土曜9時〜11時30分(150分)で、長期休暇中は火・木・土の9時〜11時30分に行われます。全種目が各1チーム編成で、市内5校の生徒が同じチームに集まります。

Nクラは「学校部活動の教育的意義を継承・発展した地域クラブ」という観点から、団体や個人の大会等での勝利や技術向上のみを目的とせず、仲間と協力し友情を深め、様々な人と交流する中で好ましい人間関係や社会性の形成に資する活動を目指すという方針を掲げています。

特徴的な取り組み

  • 全種目を各1チームに集約し市内5校で共有: 10種目それぞれについてNクラ内に1チームだけを設置し、市内5校の生徒が同じチームで活動します。学校単位ではチームが組めない種目を、市全体を1つの単位にすることで成立させる設計です。参加者数等により内容を見直す場合があること、チームの指導者が不在になった場合や参加者が0になった場合は活動を休止または廃止することがあることも、あらかじめ明記されています。
  • コーチとサポートコーチの二層の指導者体制: 指導者は市内の各種団体等(各競技協会または連盟、長門市スポーツ協会、各中学校)から推薦を受けた者の中から市が委嘱します。特定の種目チームに専属して技術指導や大会引率等を行う「コーチ」と、特定チームに所属せずコーチ不足時の指導補助や安全管理等を行う「サポートコーチ」の2種類があり、原則として市内在住または在勤の者に限られます。活動時は1チーム1現場につき2名以上が従事します。
  • 学校間の移動をバスで市が担保: 通常活動の学校間移動はスクールバスや借上げバスで行い、仙崎・三隅・深川・日置・菱海の5方面で運行します。大会や練習試合等の特別活動は原則自己対応ですが、中体連主催大会(県大会以上)や吹奏楽連盟主催のコンクール等に出場する場合は、会場までのバス移動を指導者から事務局へ相談できる仕組みです。
  • 会費は月額1,000円・就学援助世帯は半額減免: 参加費は1人あたり月額1,000円で、就学援助受給世帯は半額減免されます(別途申請が必要で、毎年6月頃に案内)。月途中の加入・退会でも当該月分の支払いが必要であること、中央競技団体への選手登録が必要な場合は登録料を別途徴収すること、個人に帰属する用具や衣類は個人負担であることも明記されています。
  • LINE公式アカウントを連絡基盤に採用: 参加申込みや欠席連絡は長門市LINE公式アカウントを通じて行い、活動中止等の全体連絡もLINEで通知します。生徒の体調不良等は事務局の携帯電話から保護者へ連絡する運用で、保護者・事務局・指導者の三者をつなぐ連絡経路を図で公開しています。学校が担っていた連絡網の代替を、既存の市公式LINEで賄う設計です。
  • 活動日に事務局職員が常駐・巡回: クラブ活動日は深川中学校に設置する詰所に事務局職員が待機し、各会場を職員が巡回します。事務局は長門市スポーツ文化交流課 地域クラブ運営企画室で、相談窓口と緊急連絡先を兼ねています。会場図で詰所とNクラバス・指導者専用駐車場の位置まで示しています。
  • 民間クラブとの二重登録を選択フローで整理: 参加資格は長門市立中学校の全生徒で、選択できる種目は1人1種目です。民間スポーツ団体等に所属して中体連選手登録し大会に参加する生徒はスポーツ系種目を選択できない、協会や連盟等に選手登録している場合は同一種目を選択できない、といった判断を「Nクラ種目選択フロー」として図示しています。

課題と解決策

課題 解決策
少子化で各中学校単位では部活動を維持できない 市内5校を1つの単位とし、10種目それぞれに市全体で1チームだけを設置する。市内全ての生徒が共通の種目選択肢を持てる状態を確保する
市内5校に分散する生徒をどう1か所に集めるか 通常活動の学校間移動をスクールバス・借上げバスで市が担保し、仙崎・三隅・深川・日置・菱海の5方面で運行する。卓球は全5校の卓球場を使い学校間移動をなくす、ソフトテニスは仙崎中の女子生徒が移動不要になるよう会場を2か所置くなど、種目ごとに移動負担を調整する
学校管理下でなくなることで、けがや事故の補償と緊急連絡が空白になる スポーツ安全保険(公益財団法人スポーツ安全協会)に加入し、連絡は市LINE公式アカウントと事務局携帯で二重化。活動日は事務局職員が深川中学校の詰所に待機して各会場を巡回する
会費負担が参加のハードルになる 月額1,000円という低廉な水準に抑えたうえで、就学援助受給世帯は半額減免とし、毎年6月頃に申請案内を出す
民間クラブに所属する生徒とNクラの二重登録で大会出場資格が競合する 民間スポーツ団体等への所属と中体連選手登録の有無で場合分けした「種目選択フロー」を公開し、選択可否をあらかじめ示す。判断が難しい場合は個別相談を受け付ける

成果・効果

令和7年8月19日の移行初日は10種目で活動が始まり、参加生徒252人・指導者123人という体制になりました。深川中学校では7競技が同日に活動しています。軟式野球の指導者は「各学校でチームが作れない状況であったがこの取組を通して生徒たちが喜んでくれることで我々は報われる。社会ではコミュニケーション能力が大切なので野球を通してしっかりと指導していきたい」とコメントしています。

令和7年12月1日時点の実施種目は10種目で、主な練習会場は軟式野球・陸上競技が深川中学校グラウンド、バレーボール女子・バスケットボール男子が深川中学校体育館、柔道が深川中学校武道場、吹奏楽が深川中学校音楽室、美術が深川中学校技術準備室、剣道が長門武道館です。剣道は原則土曜日のみで平日は各スポーツ少年団で練習できる扱いになっています。

活動休止期間は定期テスト期間、5月3日〜5日、8月1日〜16日、12月27日〜1月5日、3月30日〜4月3日と明示されています。長門市の人口は2020年国勢調査で32,519人、うち15歳未満は3,039人で、2045年には総人口が20,000人を割ると推計されています。

出典

→ 原文: 長門市「長門市部活動改革 〜部活動からNクラへ〜」

→ 原文: NAGATOスポーツ・カルチャークラブ(Nクラ)参加者ガイド PDF

→ 原文: Nクラ 種目チーム紹介(令和7年12月1日時点)PDF

→ 原文: 長門市「Nクラがいよいよスタート」(長門の話題)

→ 原文: 長門市「長門市の人口の推移と推計」PDF

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域展開・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

長門市の事例は、休日だけの部分移行にとどまらず、平日を含めて中学校の部活動そのものを廃止し市営クラブへ置き換えた点で、全国的にも踏み込んだ形です。人口3万人台、中学校5校、15歳未満人口3,039人という条件下では、学校単位でチームを組む前提そのものが成り立たなくなっており、「市全体で1種目1チーム」という結論に至ったのは合理的です。注目すべきは、移行にあたって市が引き受けた範囲の広さです。指導者の委嘱、学校間バスの運行、保険加入、LINEでの連絡、活動日の職員巡回まで、学校が担ってきた機能をひとつずつ市の業務として拾い直しています。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

この方式を移植する際に最も重いのは、移動と人員の常時コストです。5方面のバス運行と活動日の職員巡回は、規模の小さい自治体だからこそ回せる面があり、学校数が増えれば同じ密度の運営は困難になります。また「1人1種目」「1種目1チーム」という制約は、種目の選択肢を市全体で維持する代わりに、複数種目を掛け持ちしたい生徒や競技志向の高い生徒の受け皿を狭めます。長門市はこれを民間クラブとの選択フローで整理しましたが、民間クラブが少ない地域では選択肢そのものが減る点に注意が必要です。さらに、指導者が不在になった場合や参加者が0になった場合は活動を休止・廃止することがあると明記されており、1種目1チーム構成は指導者1人の離脱が種目消滅に直結するという脆さも抱えています。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

参加者ガイドが、会費の減免、月途中加入・退会の扱い、選手登録料や個人用具の自己負担、活動休止期間、規定違反時の活動停止・登録取消しまで書き切っている点は、運営ルールの透明性として高い水準です。指導者を市内在住・在勤に限り、各競技協会や市スポーツ協会、各中学校からの推薦を経て市が委嘱するという手続きも、人選の説明責任を担保しています。1チーム1現場につき2名以上という配置基準も明記されています。一方、財源は月額1,000円の会費と市の公費で構成され、バス運行と職員体制という固定費が大きい構造です。人口減少が続く前提で、この固定費をどこまで維持できるかが持続可能性の核心になります。

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