トップ 事例を探す 埼玉県 【事例】埼玉県ふじみ野市の部活動地域展開 ─ 総合型クラブと指定管理者の2コーディネーターに業務委託・元Jリーガーらが拠点校合同で6クラブを指導
全種目 👥 10~30万人 🏫 大規模校(300人以上) 📍 埼玉県

【事例】埼玉県ふじみ野市の部活動地域展開 ─ 総合型クラブと指定管理者の2コーディネーターに業務委託・元Jリーガーらが拠点校合同で6クラブを指導

公開:2026.08.23 更新:2026.08.23
この記事でわかること

・総合型クラブと施設指定管理者の2者にコーディネーター業務を委託したふじみ野市のスキーム
・元Jリーガー・元プロ野球選手らによる拠点校合同指導と延べ1,514人参加の実績
・「入りたい部活がない」10.8%・「専門的指導ができない」66.1%という調査を起点にした施策設計

自治体名 埼玉県ふじみ野市
人口規模 約11.4万人(令和7年2月1日現在:114,476人)
中学校数 6校(全生徒2,937人・運動部65部/文化部21部)
運営形態 コーディネーター業務委託(市文化・スポーツ振興課が主管し、総合型地域スポーツクラブ「一般社団法人ふじみ野ふぁいぶるクラブ」と市スポーツ施設指定管理者「アイル・オーエンスグループ」の2者に委託)
対象競技 陸上、サッカー、剣道、軟式野球、男子バスケットボール、女子バスケットボール
保護者負担額 受益者負担なし(指導者はスポーツ安全保険年額1,850円に加入)

取り組みの概要

ふじみ野市では中学6校に2,937人が在籍し、運動部65部・文化部21部が活動していますが、少子化による部員不足で活動継続が難しい部活動が出ています。市の調査では児童の10.8%が「進学予定の中学校の部活動の中に入りたい部活動がない」と回答し、「部活動に課題がある」と答えた教員86.2%のうち66.1%が「専門的な指導ができない」ことを課題に挙げ、顧問教員の約8割が部活動を負担に感じているという実態がありました。市はスポーツ庁「地域スポーツクラブ活動体制整備事業」を活用し、令和6年7月から学校の枠を超えた拠点校方式の合同部活動を開始。運営は市がコーディネーター2者(総合型地域スポーツクラブと市スポーツ施設指定管理者)に業務委託し、5種目6クラブを原則月1回・土曜日に展開、令和7年1月までに延べ1,514人が参加しました。

特徴的な取り組み

  • 2者のコーディネーターへの業務委託: 総合型地域スポーツクラブ「一般社団法人ふじみ野ふぁいぶるクラブ」が剣道・野球・男女バスケットボールの4クラブを、市スポーツ施設指定管理者「アイル・オーエンスグループ」が陸上・サッカーの2クラブを担当。会場の確保、指導者の手配・調整と謝金の直接支払い、各学校(顧問)との調整、当日の出欠確認・ケガやトラブル対応まで、コーディネーターが運営を一括して担います。
  • 元プロ選手による質の高い指導: サッカーは元Jリーガーの三上卓哉氏(指定管理者職員)と市サッカー協会、軟式野球は元プロ野球選手の星野おさむ氏、剣道は市剣道連盟、バスケットボールは市バスケットボール協会が指導。生徒からは「専門的な指導が受けられて成長を実感できた」「普段の部活動では学べない技術を習得できた」という声が寄せられています。
  • 拠点校方式による合同活動: 陸上は花の木中、サッカーは葦原中、剣道は福岡中、野球は大井中を拠点校とし、バスケットボールは男女それぞれ2拠点で実施。市内各中学校の生徒が学校の枠を超えて参加し、他校との交流を通じた成長と少人数でも競技を継続しやすい環境を実現しています。
  • 月1回の定例会による運営統制: 市・コーディネーター・スポーツ協会が月1回の定例会を設け、情報共有と現状把握の話し合いを継続的に実施。各種目で事前に活動カリキュラムを作成し、目的を明確にしてから事業を進めました。
  • 保護者同意書方式の参加手続き: コーディネーターから各中学校長に実施方法を説明したうえで、保護者あてに事業についての文書を配布し同意書の提出を求める手順を踏んでいます。

課題と解決策

課題 解決策
学校側の理解は徐々に進んでいるものの、参加意欲には学校ごとに差がある 教育委員会と協力し、校長・顧問・指導者が事業の目的を共有して良い成果を目指す
各中学校の行事予定や他部活の施設使用状況を考慮した日程調整・会場確保が難航 コーディネーターが参加校の顧問と密に連絡を取り、実施日や内容に関する意見を収集・調整して事業に反映
指導者の確保に限りがあり、実施回数を増やすとすべてのニーズに応えることが難しくなる 地域のスポーツ関係者や教育機関との連携を強化して指導者の育成・確保の仕組みを整備。参加者のニーズを考慮した柔軟なプログラム編成も検討

成果・効果

令和6年7月から令和7年1月までの延べ参加人数は、女子バスケットボール413人(14回)、男子バスケットボール236人(12回)、剣道245人(6回)、野球229人(6回)、サッカー211人(7回)、陸上160人(6回)の計1,514人にのぼりました。元プロスポーツ選手や各分野で活躍する指導者による質の高い指導で参加生徒の満足度は高く、事業開始から約半年で明らかにレベルアップしている種目も見られ、生徒のモチベーション向上につながっています。コーディネーターが参加校の顧問と密に連絡を取り意見を事業に反映する体制により、関係者間の連携が強化され円滑な運営が可能になったと報告されています。大会には中体連大会に部活動として参加しています。

出典

→ 原文: 令和6年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書(埼玉県ふじみ野市)(スポーツ庁掲載・PDF)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

ふじみ野市の設計で最も参考になるのは、コーディネーターを「機能」として業務委託した点です。多くの自治体でコーディネーターは個人(元校長等)への委嘱になりがちですが、同市は総合型クラブと市スポーツ施設指定管理者という2つの組織に委託し、会場確保から謝金支払い・当日運営までを組織の業務として担わせました。特に指定管理者の起用は妙手で、施設の空き状況を最もよく知る主体が会場確保を担うため、他自治体で頻発する「場所が取れない」問題を構造的に緩和できます。元Jリーガーや元プロ野球選手による指導は、児童の10.8%が訴えた「入りたい部活がない」・教員の66.1%が抱えた「専門的指導ができない」という調査結果への直接の回答になっており、課題調査と施策が一直線につながった好例です。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

この方式は、委託を受けられる組織(事務局機能を持つ総合型クラブや指定管理者)が市内に存在することが前提です。導入時はまず市内の指定管理者・総合型クラブの受託余力を確認し、なければ体制づくりから始める必要があります。また、ふじみ野市でも「参加意欲の学校差」と「日程調整・会場確保の難航」が課題として残っており、月1回の頻度でも6校の行事と施設をすり合わせる負荷は小さくありません。導入する場合は年間日程を学期前に一括で押さえる運用が有効です。指導者確保の限界から「実施回数を増やすとすべてのニーズに応えられない」という市の自己分析は率直で、拡大局面では回数増よりも種目の追加を優先するなど、限られた指導者資源の配分方針を先に決めておくことをお勧めします。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

首長部局(文化・スポーツ振興課)が主管し教育委員会(学校教育課)が学校調整を担う分担、市・コーディネーター・スポーツ協会の月1回定例会、保護者同意書の徴取、顧問への年度末アンケートと、運営の統制と検証のサイクルが丁寧に組まれています。事業計画・費用・人材確保などの組織体制を整備し「コスト・安全性・継続性を含む事業の検証」を行ったと明記している点も、実証を検証可能な形で設計した証拠といえます。受益者負担なしの現行モデルは実証財源に依存しているため、本格実施時の費用分担設計が次の論点ですが、委託先の2組織がいずれも常設の事業体である点は、属人化しにくく継続性の面で有利な構造といえます。

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