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全種目 👥 10~30万人 🏫 中規模校(150〜300人) 📍 埼玉県

【事例】埼玉県深谷市の部活動地域展開 ─ 市教育委員会が運営団体となり1回200円の休日地域クラブを7種目で実証、令和10年度の新人戦終了後に拠点校方式の部活動へ

公開:2026.10.30 更新:2026.10.30
この記事でわかること

・市教育委員会が運営団体となって3年間で3→5→7活動に実証を広げ、令和10年度の新人戦終了後に拠点校方式へ切り替える深谷市の工程
・1回200円+保険料800円・就学援助世帯は保険料のみという一律の会費設計と、参加費を理由とする不参加がゼロだった結果
・会計年度任用のコーディネーター2名が巡回・徴収・記録を担う直営方式の実務と、業務量の限界という市自身の評価

自治体名 埼玉県深谷市
人口規模 約14.0万人(令和7年度・スポーツ庁成果報告書記載)
中学校数 市立中学校10校(令和7年度・生徒3,432人・運動部106部)
運営形態 行政直営(深谷市教育委員会学校教育課が運営団体「深谷市地域クラブ活動」として実施)。総括コーディネーター1名とコーディネーター1名を会計年度任用職員として任用し、指導者は地域スポーツ団体・総合型地域スポーツクラブ・教員から42名
対象競技 卓球、剣道、ラグビー、バドミントン、ソフトテニス、野球(令和7年度7活動)。令和8年度は運動種目10活動への拡大と文化部の実証を目指す
保護者負担額 全活動一律で1回200円(参加費)×活動日数+スポーツ安全保険料800円/年。就学援助世帯は参加費を徴収せず保険料のみ

取り組みの概要

深谷市は平成18年の市合併時と比べて令和7年度の中学校生徒数が1,033人減り、教員数の減少で従来どおりの部活動数を維持することが難しくなっています。市は「部活動数の適正化と部活動時間の工夫」と「休日の活動における地域連携の検討」を2つの柱とし、令和4年に中学校長へのヒアリングと市スポーツ・文化団体代表者との意見交換を行ったうえで、令和5年度からスポーツ庁の実証事業に参加しました。市スポーツ・文化団体と学校関係の代表者で組織する「深谷市地域クラブ活動検討委員会」を年4回開き、令和5年度に3活動、令和6年度に5活動、令和7年度に7活動(卓球・剣道・ラグビー・バドミントン・ソフトテニス・野球)と規模を広げてきました。運営団体は市教育委員会自身で、9月から1月まで月4回程度(年20回)、土曜日に当該中学校の体育館・校庭や総合型地域スポーツクラブの保有施設で活動します。

特徴的な取り組み

  • 市教委が運営団体、コーディネーターが巡回: 総括コーディネーターとコーディネーターを会計年度任用職員として5月から2月まで任用(活動開始前は週2日、開始後は週3日勤務)。学校・関係団体との連絡調整やマッチング、検討委員会の運営、指導者の確保に加え、活動開始後は指導者の活動記録の整理、参加費の徴収、各活動場所を巡回して安全で適切な指導が行われているか、生徒に困り感がないかを確認します。
  • 1回200円の受益者負担と就学援助世帯の免除: 令和5年度の保護者アンケートをもとに負担額を決め、保護者会で趣旨を説明して受益者負担額を引き上げました(令和5年度は500円の負担から開始)。全活動一律で1回200円×活動日数+保険料800円とし、就学援助世帯は保険料のみの徴収。参加費を理由に活動に参加しなかった生徒はいませんでした。
  • 指導者の応募条件と確保ルート: 「指導資格を有すること、または1年以上児童生徒への指導経験があること」を応募条件に質を確保し、深谷市スポーツ協会と総合型地域スポーツクラブの代表者との連携、学校への周知で42名を確保。ラグビーは総合型地域スポーツクラブの保有施設で、クラブ所属の生徒と一緒に無償で活動しています。若い指導者がベテランとともに指導に登録する活動もありました。
  • 部活アプリで個人情報を共有せずに連絡: ASFEEL株式会社の「部活アプリ」に事務局・総括コーディネーター・指導者・保護者が登録し、出欠や活動報告、アンケートを個人情報をやり取りせずに行う連絡体制を整えました。登録方法はオンライン説明会で案内しています。
  • 救急バッグに緊急対応フロー: 事故やトラブル発生時の対応手順とコーディネーターの緊急連絡先を記した資料を、各活動に配付している救急バッグに取り付け、現場の指導者が速やかに学校へ連絡できるようにしました。
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課題と解決策

課題 解決策
教育委員会が運営団体になることは業務量的に大きな課題で、事業拡大にはさらなる運営体制の整備が必要 総括コーディネーター・コーディネーターを会計年度任用職員として任用し事務業務にも従事させて教育委員会の負担を軽減。長期的には拠点校方式への移行で体制を再設計
現在の受益者負担額は補助金があるために設定できる額で、持続可能性を考えると少しずつ引き上げる必要がある 「部活動との違い」「受益者負担の必要性」を保護者・生徒に周知し、保護者アンケートを参考に検討。就学援助世帯への一部免除は継続
体育館では他の部活動の練習試合などで活動できなくなる可能性があり、令和7年度はエアコン設置工事で一定期間体育館が使えなかった 活動開始前から計画的に活動場所を確保。公民館や他校を代替施設とし、公民館は教育委員会の取り組みとして減免で利用
顧問にとって他校との練習試合の調整は従来と変わらず負担が残る 指導者の継続的な確保と、地域クラブ活動の広がりで中学生のスポーツ・文化活動がどう変わるかのイメージを教職員・保護者・地域住民と共有

成果・効果

参加した中学生のアンケートでは97%が「満足している」「やや満足している」と回答し、理由として「技術等の細かいところを教えてくれる」「教え方が上手で分かりやすかった」が挙がりました。顧問からは「休日に休める日が増えた」「技術指導を丁寧に行ってくれるため精神的にも負担が減った」、保護者からは「顧問の先生とは異なる視点で改善点を指摘してもらえた」という声があり、市は様々な地域の指導者と接することで生徒が地域の大人に敬意をもった振る舞いを身につけたとも報告しています。令和7年度は前年度より1か月早く実証を始められ、3年間の実証で得た成果と課題を踏まえて長期的な部活動の在り方を検討できたと市は総括しています。ロードマップでは令和8〜10年度の3年間を拠点校方式での部活動実施に向けた体制整備期間とし、これまでの地域クラブ活動を拠点校方式に広げ、全校で学校単位から拠点校(ブロック)単位への切り替えを準備。令和10年度の新人戦終了後から拠点校方式での部活動を実施する計画です。

出典

→ 原文: スポーツ庁「令和7年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書 埼玉県深谷市」(報告書検索システム)
→ 原文: スポーツ庁「令和6年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書 埼玉県深谷市」(報告書検索システム)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域展開・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

深谷市の特徴は、受け皿団体を探す前に市教育委員会自身が運営団体になって3年間で3→5→7活動と実証を積み、その先の着地点を「地域クラブへの移行」ではなく「拠点校方式の部活動」に置いたことです。令和8〜10年度を体制整備期間とし、令和10年度の新人戦終了後に全校で学校単位から拠点校(ブロック)単位へ切り替える工程表は、生徒数が1,000人以上減った市が「部活動数の適正化」を先に進める判断を示しています。会費設計も具体的で、保護者アンケートで決めた1回200円+保険料800円、就学援助世帯は保険料のみという一律ルールで、参加費を理由に不参加になった生徒がいなかったという結果を出しています。指導者の応募条件を「資格または1年以上の指導経験」と明文化した点も、質の下限を保つ実務的な工夫です。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

市教委直営は立ち上げが早い反面、深谷市自身が「教育委員会が運営団体になることは業務量的に大きな課題」と明記しているとおり、拡大すればするほど職員に負荷が集中します。深谷市はコーディネーター2名を会計年度任用職員として雇い、巡回だけでなく参加費徴収や指導記録の整理まで任せることで吸収しましたが、7活動の規模でも「さらなる運営体制の整備が必要」としています。移植する場合は、直営はあくまで実証期間の形と割り切り、何年目にどこへ事務を移すかを最初に決めておくことが必要です。もう一つは受益者負担で、現在の200円は補助金があるから設定できる額だと市が認めています。補助金終了後の負担額を保護者に早めに示し、「部活動との違い」を説明する機会を持たないと、引き上げ時に反発を招きます。活動場所についても、体育館の練習試合やエアコン工事で使えない期間が実際に生じており、代替施設の減免利用を事前に決めておく必要があります。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

市スポーツ・文化団体と学校関係の代表者による検討委員会を年4回開き、合意形成の経過と課題を年度ごとに記録している点、就学援助世帯の免除や緊急対応フローの救急バッグ掲示など現場の安全と公平性に関する手当てが具体的な点は評価できます。一方、運営団体が市教委であるため、学校管理下から離れた地域クラブとしての責任主体の整理は拠点校方式への移行とともに改めて必要になります。財源は補助金依存で、人件費を含めた地域クラブ活動の財源の見通しを市も課題に挙げています。推進計画・ガイドラインは策定準備中で、令和8年度以降の拠点校方式の設計が公表されるかどうかが次の確認点です。

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