【事例】埼玉県久喜市の部活動地域展開 ─ 市教委直営で会費無料の地域クラブ34団体、ダンス・トランポリンなど全校対象クラブで選択肢を広げ令和8年4月の休日全面展開は見通し約7割
・市教委直営・会費無料で3年間に9→34クラブへ増やしつつ、休日部活動の移行率は約2割という久喜市の実情
・「所属校のみ」と「全校対象」の2層構成と、ダンス・トランポリンなど学校にない種目を民間と共同で新設した方法
・教職員の指導希望が約3分の1にとどまる中で兼職兼業の手続きを整え、1人1台端末で募集・申込を行う運用
| 自治体名 | 埼玉県久喜市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約15.1万人(令和7年度・スポーツ庁成果報告書記載) |
| 中学校数 | 市立中学校10校(令和7年度・生徒3,316人・運動部115部) |
| 運営形態 | 行政直営(久喜市教育委員会が運営団体。ダンスはシンコースポーツ、トランポリンはEnjoyjumpと共同運営)。教育委員会指導課とスポーツ振興課が「久喜市中学校地域クラブ活動推進会議」の事務局 |
| 対象競技 | サッカー、ソフトテニス、卓球、バスケットボール、バレーボール、剣道、バドミントン、ダンス、トランポリン 等(令和7年度34クラブ) |
| 保護者負担額 | 参加費は久喜市負担(無料)。スポーツ安全保険料800円/年も実証事業期間は市負担 |
取り組みの概要
久喜市では生徒数の減少でサッカーや野球など多人数の種目が維持できず、複数校の合同チームや廃部が増え、小規模校では「自分のやりたい種目がない」状況が生まれていました。市は「単に部活動の運営をそのまま地域に移すだけでは参加者や指導者の確保という課題は解決できない」として、令和5年度から実証事業を始め、「久喜市生徒の豊かなスポーツ・文化芸術活動実現プラン」のもとで地域クラブを増やしてきました。クラブ数は令和5年度9クラブ(バレーボール・ソフトテニス・卓球・サッカー)、令和6年度30クラブ、令和7年度34クラブと拡大し、運営団体は市教育委員会自身です。目標は令和8年4月から休日の活動をすべて地域へ展開することで、令和7年度末時点の見通しは約70%、令和9年度からの100%実走を掲げています。
特徴的な取り組み
- 所属校限定クラブと全校対象クラブの2層構成: 既存の部活動を移した形の28クラブは「所属学校のみ」を参加対象とし、久喜南中バスケットボール(27人)、菖蒲中ソフトテニス(38人)など各校の体育館・コートで月4回程度活動します。一方、市内全校を対象とする新たなクラブを5つ、複数校を対象とするクラブを3つ設け、自校にない活動やこれまで部活動になかった活動に参加できるようにしました。
- 学校にないダンス・トランポリンを民間と共同で新設: ダンスクラブは栗橋B&G海洋センターでシンコースポーツと、トランポリンクラブは旧江面第二小学校を活用した施設でEnjoyjumpと共同運営。「もともとダンス部に入りたかったが学校になく困っていた」「美術部で体を動かす機会がなかったので体力がついた」という生徒の声が記録されています。令和7年度はeスポーツ英会話クラブやプログラミングクラブも新しい選択肢として計画しました。
- 1人1台端末で周知と申し込み: 市内全校が参加できるクラブは、チラシを1人1台端末で全中学生に配信し、連絡通知で保護者にも周知。申し込みも端末から行える仕組みを作り、関連情報を集約した「久喜市部活動地域移行サイト」で設立済みクラブを一覧化しています。
- 教職員の兼職兼業手続きをスライドで整理: 教職員アンケートでは、休日部活動が地域クラブに移った場合に指導を希望する教員は条件付きを含めて約3分の1でした。指導を希望する教員が兼職兼業の手続きを経て指導でき、希望しない教員は携わらない体制を目指し、ヒアリングと手続きスライドを作成。校長・教頭会、入学説明会、学校運営協議会、スポーツ少年団・スポーツ協会にも資料と動画で推進計画を周知しました。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 令和7年12月末時点で休日に部活動として活動する115団体のうち地域クラブに移行したのは27団体(約20%)。地域人材が指導するクラブは19まで増えたが、教職員が指導者となるクラブは1つだけ | 地域人材の発掘に加え、指導実績のある既存団体の助力と、部活動指導の実績がある教職員が地域クラブの指導者になる方策を取る。制度周知や手続き説明の不足が原因とみて改善策を実施 |
| 地域クラブの数が増えるにつれ活動場所の確保が課題に | 学校施設の優先利用についてのルールを定め、安全管理上の問題を解決する |
| 運営団体・運営組織の在り方と、地域クラブの認定・支援の仕組みが未整備 | 持続可能な基盤の構築と質の担保・環境整備を、国・県の推進計画を基本指針にして令和8年度以降に取り組む |
| 受益者負担と経済的困窮世帯への支援(教育の機会均等) | 実証事業期間は市負担としつつ、本格実施に向けた制度設計を検討 |
成果・効果
市は「生徒の活動機会の確保」について、既存の部活動にない種目のクラブが複数設立され、参加対象を広げたクラブも設けたことで参加者数が増え、概ね良好な進捗と評価しています。令和7年度は「受け皿(クラブ数)の不足」と「指導者の確保」に重点を置き、部活動指導員や市内スポーツ団体への直接の働きかけを強めて新たな指導者を登録・確保し、令和7年度の地域クラブ指導者は49人です。参加した生徒からは「コーチがいなかった時と比べ練習内容もレベルアップしている」、保護者からは「他校の生徒とコミュニケーションをとり楽しそうに活動している。保護者同士も情報交換して刺激を受けている」という声があります。一方で「指導体制の構築」については教職員の参加が想定より少なく、休日部活動の約8割がまだ学校部活動のまま残っており、市は運営団体の在り方、クラブの認定・支援、指導者確保、受益者負担と困窮世帯支援の4点を本格実施に向けた課題に整理しました。平日は拠点校部活動・合同部活動と部活動指導員の活用を広げ、休日は地域クラブへ展開する方針です。
出典
→ 原文: スポーツ庁「令和7年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書 埼玉県久喜市」(報告書検索システム)
→ 原文: スポーツ庁「令和6年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書 埼玉県久喜市」(報告書検索システム)
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