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【事例】岐阜県飛騨市の部活動地域展開 ─ 令和8年4月に中学校部活動を全面廃止し認定18クラブへ完全移行、加入率は7割から6割へ

公開:2026.05.22 更新:2026.09.26
この記事でわかること

・令和8年4月に中学校部活動を全面廃止し、平日・休日を通じて認定18クラブへ完全移行した実際の経過。
・加入率が約7割から6割へ低下したこと、文化系の一部がクラブ化できなかったことを市自身が公表している点。
・専用バス委託から路線バス定期券へ転換して移動費を約90%削減した経緯と、時給1,065円の謝金設計。

自治体名 岐阜県飛騨市
人口規模 約2.1万人(令和7年度時点21,333人)
中学校数 公立中学校3校・生徒503人(令和7年度時点)
運営形態 「飛騨市認定地域クラブ」18団体が運営主体(令和8年7月1日時点。ほかに1団体が申請・審査中)。教育委員会事務局学校教育課内の「地域クラブ活動推進室」が統括
対象競技 軟式野球・ソフトテニス・陸上競技・剣道・柔道・バスケットボール・卓球・バレーボール・サッカー・吹奏楽・合唱・美術・家庭科の13分野18団体
保護者負担額 各クラブが設定。月額500円〜5,000円(年会費制の団体は2,000円・20,000円)

取り組みの概要

岐阜県飛騨市は令和8(2026)年4月、中学校の部活動を全面廃止し、平日・休日を通じて「飛騨市認定地域クラブ」へ完全移行しました。休日のみを先行させる自治体が多いなかで、平日を含めて一度に切り替えた数少ない事例です。令和8年7月1日時点で認定クラブは18団体、ほかに1団体が申請・審査中となっています。

市はこの移行に合わせて呼称も切り替えており、公式ページの表題は「部活動の地域移行」から「部活動の地域展開」へ、広報紙も「部活動地域移行だより」から「地域クラブ活動だより」へ改称されました。令和6年度に教育委員会事務局内へ「地域クラブ活動推進室」を設置し、実証団体11団体の認定から始めて、令和7年度に12団体を認定、年度末にさらに6団体を加えて18団体体制で令和8年4月を迎えています。

一方で、移行によって活動に参加する生徒の割合は下がりました。市議会での答弁によれば、部活動時代の加入率はおおむね7割でしたが、地域クラブになって6割程度になっています。市は令和8年秋頃をめどに、児童生徒と保護者を対象とした課題把握のためのアンケート調査を実施する方針を示しています。

特徴的な取り組み

  • 平日を含む部活動の全面廃止と18クラブへの完全移行: 令和8年4月から中学校の部活動を廃止し、地域クラブ活動へ転換しました。活動の上限は週4日(平日3日・休日1日)、平日2時間・休日3時間で、年間の最大活動時間396時間を超えないことが厳守事項とされています。認定の有効期間は1年間で、年度単位の更新制です。
  • 委託バスを廃止し、路線バスの定期券方式へ切り替え: 中山間地・豪雪地帯という条件から、市は令和4年度に2つの中学校間を往復する専用バスの運行を地域の公共交通事業者へ委託していました。しかし「団体ごとに活動状況が異なり個別の移動ニーズに対応できない」「運行委託に係る財政的負担が大きい」という課題から、令和7年9月末で委託を終了し、同年10月から路線バスを使う「乗車パス」方式に切り替えました。令和8年度は「飛騨市認定地域クラブ専用定期券」(神岡と古川の間)を配布しています。スポーツ庁への成果報告書によれば、この見直しで費用負担は前年度比で約90%減少しました。
  • 指導者謝金は時給1,065円・1クラブ最大2名で年約80万円: 教育委員会定例会での説明によると、指導者謝金は各クラブ最大2名分を確保し、1人当たり年間396時間、1時間当たり単価1,065円(最低賃金に合わせた額)で予算計上されています。上限まで活用した場合、1クラブ当たり約80万円の補助になります。令和7年度は指導者数・時間数とも見込みの7割程度の執行実績でした。
  • 保護者の送迎にも2分の1、公共交通は全額を補助: 予算特別委員会での説明によると、保護者による送迎分についても2分の1の補助が出され、公共交通機関を利用した場合は全額が補助されます。事業費の負担割合は国3分の1・県3分の1・市3分の1です。このほか市内の学校施設・体育施設・公民館の使用料金(電気料等)は100%免除されています。
  • 令和8年度予算は26,812千円・財源の半分近くがふるさと納税: 「地域クラブ活動推進のための体制整備」の令和8年度事業費は26,812千円で、前年度の35,152千円から減少しました。内訳は国庫補助金13,002千円・ふるさと納税12,220千円・一般財源1,590千円です。事業の柱は指導や運営をサポートする人材の確保(11,550千円)、練習・試合時の交通費補助(7,900千円)、民間事業者と協働した推進室での運営支援(7,362千円)の3つです。令和8年度には企業版ふるさと納税による200万円の寄付も受けています。
  • 移動時の安全確保について市独自の通知を発出: 市は「飛騨市校外活動や地域クラブ活動などの移動時における安全確保について」とする通知を作成し、市内の全小中学校長および関係するすべての地域クラブ代表者に発出しました。正規事業者との契約、ナンバープレートの色の確認、運転免許種別の事前確認を徹底する内容です。
  • 指導者研修(スキルアップセミナー)の定例開催: 令和8年5月18日に前期のスキルアップセミナーを開催し、指導者40名・保護者33名・その他11名の計84名が参加しました。アンケート(回答77件・回答率91.7%)では「とても満足した」53.2%、「満足した」44.2%という結果でした。後期は11月頃の開催が予定されています。
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課題と解決策

課題 解決策
部活動時代におおむね7割だった加入率が、地域クラブ化により6割程度に低下した 令和8年秋頃をめどに児童生徒・保護者へアンケート調査を実施し、課題を把握したうえで仕組みを見直す方針
文化系の一部がクラブ化に至らなかった(神岡中学校・古川中学校の文化部・情報発信部) 保護者・生徒との懇談を経て、クラブという形ではなくそれぞれの個人の活動として取り組みを続ける結論となった
新入生にとって参加先の探し方が分かりにくくなった 小学6年生の3月に各小学校経由で「飛騨市認定地域クラブガイド」を配布(小学5年生にも配布)。令和8年3月に市スポーツ少年団と合同体験会、4〜5月に中学校での新入生説明会とPTA総会での保護者説明会を実施
中山間地・豪雪地帯という条件による移動手段の確保(保護者アンケートでも送迎支援を求める声が多い) 専用バスの運行委託から路線バスの乗車パス方式へ転換し、費用負担を約90%削減。往路のみスクールバスで中学校間を移送する対応も実施済み
受益者負担の増加と、活動を維持するための財源確保 指導者謝金・交通費・施設使用料減免を市が負担しつつ、ふるさと納税・企業版ふるさと納税を財源に組み込む(令和8年度は事業費の約46%がふるさと納税)

成果・効果

令和8年4月の全面移行により、飛騨市は平日・休日を通じた地域クラブ活動への転換を実際に完了させました。18団体のなかには「中学生の部活動」という枠組みを超えて、小学生や社会人、地域団体と一緒に活動・交流する団体も生まれています。会費は月額500円から5,000円までと団体によって幅がありますが、市が指導者謝金・交通費・施設使用料を負担することで受益者負担の急増を抑える構造になっています。専用バスの廃止と路線バス定期券への転換により、移動支援の費用は前年度比で約90%減りながら、乗車時間・場所の自由度はむしろ高まりました。

課題も市自身が公表しています。加入率は約7割から6割程度へ低下し、中学1年生では令和8年6月8日時点で170名のうち85名(5割)が認定地域クラブに参加している状況です(このほかスポーツ少年団や習い事に参加する生徒もいます)。スポーツ庁への成果報告書では、令和8年からの目標として「地域クラブへの参加率10%増」「地域クラブと協会・連盟との協働」が掲げられています。なお市公式サイトに掲載されている「飛騨市認定地域クラブガイドライン」は令和8年9月26日時点で令和7年2月版のままで、国の令和7年12月ガイドラインを受けた改訂は「来年度開始前を目途」とされています。

よくある質問(FAQ)

Q. 飛騨市の中学校の部活動はなくなった?

A. なくなりました。令和8(2026)年4月から中学校の部活動を全面廃止し、平日・休日を通じて「飛騨市認定地域クラブ」へ完全移行しています。

Q. 地域クラブはいくつある?種目は?

A. 令和8年7月1日時点で18団体が認定されており、ほかに1団体が申請・審査中です。軟式野球・ソフトテニス・陸上競技・剣道・柔道・バスケットボール・卓球・バレーボール・サッカー・吹奏楽・合唱・美術・家庭科の13分野にわたります。

Q. 保護者の費用負担・会費はいくら?

A. 会費は各クラブが設定しており、月額500円から5,000円までの幅があります(年会費制の団体は2,000円・20,000円)。会費とは別に、市が指導者謝金・大会参加時の交通費・公共施設の使用料(電気料等100%免除)を負担しています。保護者による送迎には2分の1、公共交通機関の利用には全額の補助があります。

Q. 部活動がなくなって参加率はどうなった?

A. 市議会での答弁によれば、部活動時代の加入率はおおむね7割でしたが、地域クラブになって6割程度に下がっています。中学1年生では令和8年6月8日時点で170名中85名(5割)が認定地域クラブに参加しています。市は令和8年秋頃をめどにアンケート調査を実施する方針です。

出典

→ 原文: 飛騨市における部活動の地域展開(飛騨市公式)

→ 参考: 地域クラブ活動だより vol.01(令和8年7月・飛騨市・PDF)

→ 参考: 飛騨市認定地域クラブ一覧表(令和8年7月1日現在・PDF)

→ 参考: 飛騨市議会 令和8年第3回定例会 一般質問会議録(令和8年6月24日・PDF)

→ 参考: 飛騨市議会 令和8年6月30日 予算特別委員会会議録(PDF)

→ 参考: 飛騨市教育委員会 令和8年第2回定例会 議事録(令和8年2月20日・PDF)

→ 参考: 飛騨市教育委員会 令和8年第3回定例会 議事録(令和8年3月26日・PDF)

→ 参考: 令和8年度 飛騨市教育委員会事務局 主要事業の概要(PDF)

→ 参考: 令和8年度 飛騨市スポーツ文化活動充実交付金(飛騨市公式)

→ 参考: 令和7年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書(岐阜県・飛騨市/スポーツ庁・PDF)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域展開・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

飛騨市が他の事例と決定的に違うのは、移行後の数字を隠していないことです。部活動時代におおむね7割だった加入率が地域クラブ化で6割程度に落ちたことを、市は議会答弁で明言しました。中学1年生では170名中85名という参加状況も公表されています。全面移行を成功譚としてだけ語る自治体が多いなかで、参加機会が実際に目減りしたという不都合な事実を示し、秋のアンケートで検証すると宣言した姿勢は、これから移行する自治体にとって最も参考になる部分です。人口2.1万人・中学校3校・生徒503人という規模で平日まで一度に切り替えた判断の是非は、このアンケート結果が出てはじめて評価できます。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

移動手段の設計は、飛騨市の試行錯誤がそのまま教材になります。市は令和4年度に中学校間を往復する専用バスを事業者へ委託しましたが、「団体ごとに活動状況が異なり個別の移動ニーズに対応できない」「財政的負担が大きい」という2つの理由で令和7年9月末に打ち切り、路線バスの乗車パス方式へ転換しました。結果として費用は約90%減り、乗車する時間と場所の自由度はむしろ上がっています。専用便の一斉運行は一見手厚く見えますが、活動が多様化するほど空席と固定費が膨らむということです。もう一つ移植しやすいのが謝金の設計で、時給1,065円という最低賃金連動の単価と年396時間という上限を先に決めているため、1クラブ当たり約80万円という予算の天井が最初から見通せます。ただし令和7年度の執行は見込みの7割程度にとどまっており、上限まで使い切る前提の予算は過大になりやすい点は注意が必要です。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

財源構成には注意して読む必要があります。令和8年度事業費26,812千円のうち、一般財源はわずか1,590千円で、国庫補助金13,002千円とふるさと納税12,220千円が大半を占めます。つまり事業の約9割が外部財源に依存しており、国の改革実行期間が終わったときに同じ水準を維持できるかは未知数です。認定を1年間の年度更新制とし、指導者研修の受講を認定要件に組み込んでいる点は運営品質の担保として機能していますが、市公式サイトのガイドラインが令和7年2月版のまま更新されておらず、国の令和7年12月ガイドラインを反映した改訂が「来年度開始前を目途」と後ろ倒しになっている点は、制度文書の鮮度という意味で弱さが残ります。

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