【事例】静岡県菊川市の部活動地域展開 ─ 3中学校の合同部活動を地域クラブの母体に育てる段階移行モデル
・「改革・選択・多様性」を掲げ令和10年8月末の完了を目指す菊川市の段階移行スケジュール
・3校で1つの合同部活動を設置し、それを地域クラブの母体に育てる団体種目の進め方
・民間クラブ/公認地域クラブ/レクリエーションの3層構造で市の整備範囲を限定した設計
| 自治体名 | 静岡県菊川市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約4.7万人(46,593人・令和8年7月末現在) |
| 中学校数 | 3校(岳洋中学校・菊川西中学校・菊川東中学校) |
| 運営形態 | 市教育委員会が認定する「認定地域クラブ」(公認地域クラブ)制度 |
| 対象競技 | 野球、ソフトボール、サッカー、バレーボール、バスケットボール、陸上競技、剣道、卓球、ソフトテニス、吹奏楽、美術、情報技術ほか(硬式テニス・バドミントン・柔道等の新規種目も拡充対象) |
| 保護者負担額 | 市公表資料に金額の記載なし(クラブごとに設定) |
取り組みの概要
菊川市は「菊川市の実態に合った持続可能な地域クラブ」を目標に掲げ、「改革」「選択」「多様性」の3語をキーワードとして休日の部活動の地域展開を進めています。令和6年を起点に、令和10年8月末までにすべての種目の移行を完了することを目標としています。
市が示す3つのキーワードは、それぞれ具体的な方向を指しています。「改革」は今ある学校部活動の体制を見直すこと、「選択」は校区に関係なくやりたいことを選べる体制にすること、「多様性」はさまざまなニーズに応えてスポーツと文化の「二刀流」も実現可能にすることです。既存の部活動をそのまま地域へ移すだけでなく、地域クラブ(スポーツ・文化)そのものを拡充することで、子どもの多種多様な体験活動と学校以外の居場所づくりを実現する狙いがあります。
背景には生徒数の減少があります。市の資料は「今後10年で生徒数が大きく減少し、複数の部活動が廃部になる可能性があります」と明記し、すでに1校ではチームが編成できない、やりたい種目の部活動が学校にないという課題が生じていると指摘しています。令和6年4月時点の一覧では、3校のうち2校にしかない種目(ソフトボール、サッカー、男子バレーボール、男子卓球、女子卓球、美術など)が複数あります。
特徴的な取り組み
- 整備できた種目から順に移行する段階方式: 「種目によって実態が異なります。全ての種目が一斉に移行するわけではなく、整備ができた種目から段階的に休日の地域移行を開始します」と明示しています。全市一斉の切り替えを避け、令和10年8月末の完了までに種目ごとのペースを認める設計です。
- 個人種目と団体種目で進め方を分ける: 個人種目は市内の複数の地域クラブと調整し、準備が整い次第、段階的に休日の地域移行を進めます。令和6年10月からは陸上競技部の休日の地域移行を試行しました。団体種目は3校で1つの合同部活動を設置し、地域の指導者と連携しながらそれを地域クラブの母体に育てる二段階の進め方を採っています。
- 合同部活動と合同チームを区別する: 市は両者の違いを表で説明しています。合同部活動は生徒の活動機会や活動場所を確保するためのもので、規定人数を満たしていても設置でき、部活動のない学校の生徒も参加でき、顧問は1名以上が配置されます。一方の合同チームは大会出場のための一時的な救済措置で、一方が規定人数を満たさない場合に原則2校まで(3校以上は中体連の承諾が必要)という制約があります。
- 「ミドル層」を整備対象と定めた体制イメージ: 民間クラブ(トップ層・競技志向型)、公認地域クラブ(ミドル層・技能志向型)、レクリエーション(レクリエーション層)の3層構造を示し、市が整備するのは中間の公認地域クラブとレクリエーション層であると明示しています。基本的な技能の習得や競技の楽しさを実感することを目的とした地域クラブの整備を進める方針です。
- 認定地域クラブの一覧を市が公開・随時募集: 市教育委員会が認定地域クラブを募集し、認定クラブ一覧を公開しています。あわせて人材バンクの活用イメージや登録申請様式も市サイトで配布しています。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 今後10年で生徒数が大きく減少し、複数の部活動が廃部になる可能性がある | 学校部活動の地域展開と並行して地域クラブ自体を拡充し、硬式テニス・バドミントン・柔道など学校にない種目も選べる体制を整える |
| 1校ではチームが編成できない団体種目がある | 3校で1つの合同部活動を設置し、地域の指導者と連携して地域クラブの母体をつくる |
| 種目によって指導者や活動場所の整備状況が大きく異なる | 全種目一斉移行をやめ、整備ができた種目から段階的に休日の地域移行を開始する |
| 部活動指導だけで教員の時間外勤務が月45時間の上限近くに達する | 休日の活動を地域クラブへ移し、授業準備・ICT活用・生徒指導に注力できる時間を確保する |
| 合同部活動と大会出場用の合同チームが混同されやすい | 目的と条件の違いを表で整理し、保護者・生徒向け資料で明示する |
成果・効果
令和6年10月から陸上競技部の休日の地域移行を試行し、個人種目から実地の移行を開始しました。団体種目では3校による合同部活動の設置を進め、地域クラブの母体づくりに着手しています。文化部については、中学生を受け入れ可能な文化団体について生徒が選択できるよう体制を整備する方針です。市教育委員会は認定地域クラブの一覧を公開しており、受け皿となるクラブを可視化したうえで募集を継続しています。
出典
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