トップ› 事例を探す› 静岡県› 【事例】静岡県菊川市の部活動地域展開 ─ 3中学校の合同部活動を地域クラブの母体に育てる段階移行モデル
全種目 👥 1~5万人 🏫 小規模校(〜150人) 📍 静岡県

【事例】静岡県菊川市の部活動地域展開 ─ 3中学校の合同部活動を地域クラブの母体に育てる段階移行モデル

公開:2026.10.14 更新:2026.10.14
この記事でわかること

・「改革・選択・多様性」を掲げ令和10年8月末の完了を目指す菊川市の段階移行スケジュール
・3校で1つの合同部活動を設置し、それを地域クラブの母体に育てる団体種目の進め方
・民間クラブ/公認地域クラブ/レクリエーションの3層構造で市の整備範囲を限定した設計

自治体名 静岡県菊川市
人口規模 約4.7万人(46,593人・令和8年7月末現在)
中学校数 3校(岳洋中学校・菊川西中学校・菊川東中学校)
運営形態 市教育委員会が認定する「認定地域クラブ」(公認地域クラブ)制度
対象競技 野球、ソフトボール、サッカー、バレーボール、バスケットボール、陸上競技、剣道、卓球、ソフトテニス、吹奏楽、美術、情報技術ほか(硬式テニス・バドミントン・柔道等の新規種目も拡充対象)
保護者負担額 市公表資料に金額の記載なし(クラブごとに設定)

取り組みの概要

菊川市は「菊川市の実態に合った持続可能な地域クラブ」を目標に掲げ、「改革」「選択」「多様性」の3語をキーワードとして休日の部活動の地域展開を進めています。令和6年を起点に、令和10年8月末までにすべての種目の移行を完了することを目標としています。

市が示す3つのキーワードは、それぞれ具体的な方向を指しています。「改革」は今ある学校部活動の体制を見直すこと、「選択」は校区に関係なくやりたいことを選べる体制にすること、「多様性」はさまざまなニーズに応えてスポーツと文化の「二刀流」も実現可能にすることです。既存の部活動をそのまま地域へ移すだけでなく、地域クラブ(スポーツ・文化)そのものを拡充することで、子どもの多種多様な体験活動と学校以外の居場所づくりを実現する狙いがあります。

背景には生徒数の減少があります。市の資料は「今後10年で生徒数が大きく減少し、複数の部活動が廃部になる可能性があります」と明記し、すでに1校ではチームが編成できない、やりたい種目の部活動が学校にないという課題が生じていると指摘しています。令和6年4月時点の一覧では、3校のうち2校にしかない種目(ソフトボール、サッカー、男子バレーボール、男子卓球、女子卓球、美術など)が複数あります。

特徴的な取り組み

  • 整備できた種目から順に移行する段階方式: 「種目によって実態が異なります。全ての種目が一斉に移行するわけではなく、整備ができた種目から段階的に休日の地域移行を開始します」と明示しています。全市一斉の切り替えを避け、令和10年8月末の完了までに種目ごとのペースを認める設計です。
  • 個人種目と団体種目で進め方を分ける: 個人種目は市内の複数の地域クラブと調整し、準備が整い次第、段階的に休日の地域移行を進めます。令和6年10月からは陸上競技部の休日の地域移行を試行しました。団体種目は3校で1つの合同部活動を設置し、地域の指導者と連携しながらそれを地域クラブの母体に育てる二段階の進め方を採っています。
  • 合同部活動と合同チームを区別する: 市は両者の違いを表で説明しています。合同部活動は生徒の活動機会や活動場所を確保するためのもので、規定人数を満たしていても設置でき、部活動のない学校の生徒も参加でき、顧問は1名以上が配置されます。一方の合同チームは大会出場のための一時的な救済措置で、一方が規定人数を満たさない場合に原則2校まで(3校以上は中体連の承諾が必要)という制約があります。
  • 「ミドル層」を整備対象と定めた体制イメージ: 民間クラブ(トップ層・競技志向型)、公認地域クラブ(ミドル層・技能志向型)、レクリエーション(レクリエーション層)の3層構造を示し、市が整備するのは中間の公認地域クラブとレクリエーション層であると明示しています。基本的な技能の習得や競技の楽しさを実感することを目的とした地域クラブの整備を進める方針です。
  • 認定地域クラブの一覧を市が公開・随時募集: 市教育委員会が認定地域クラブを募集し、認定クラブ一覧を公開しています。あわせて人材バンクの活用イメージや登録申請様式も市サイトで配布しています。
スポンサーリンク

課題と解決策

課題 解決策
今後10年で生徒数が大きく減少し、複数の部活動が廃部になる可能性がある 学校部活動の地域展開と並行して地域クラブ自体を拡充し、硬式テニス・バドミントン・柔道など学校にない種目も選べる体制を整える
1校ではチームが編成できない団体種目がある 3校で1つの合同部活動を設置し、地域の指導者と連携して地域クラブの母体をつくる
種目によって指導者や活動場所の整備状況が大きく異なる 全種目一斉移行をやめ、整備ができた種目から段階的に休日の地域移行を開始する
部活動指導だけで教員の時間外勤務が月45時間の上限近くに達する 休日の活動を地域クラブへ移し、授業準備・ICT活用・生徒指導に注力できる時間を確保する
合同部活動と大会出場用の合同チームが混同されやすい 目的と条件の違いを表で整理し、保護者・生徒向け資料で明示する

成果・効果

令和6年10月から陸上競技部の休日の地域移行を試行し、個人種目から実地の移行を開始しました。団体種目では3校による合同部活動の設置を進め、地域クラブの母体づくりに着手しています。文化部については、中学生を受け入れ可能な文化団体について生徒が選択できるよう体制を整備する方針です。市教育委員会は認定地域クラブの一覧を公開しており、受け皿となるクラブを可視化したうえで募集を継続しています。

出典

→ 原文: 菊川市「中学校の部活動に関すること」/菊川市「休日の部活動の地域移行について」(PDF)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域展開・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

菊川市の設計で特筆すべきは、整備対象を「ミドル層」と自ら限定したことです。トップ層は既存の民間クラブ、レクリエーション層とミドル層は市が整備する公認地域クラブ、と層ごとに担い手を割り振っています。地域展開の議論は「競技力をどこまで保証するか」で紛糾しがちですが、市が担う範囲を基本的な技能習得と競技の楽しさに置くと明言したことで、受け皿づくりの要件が現実的な水準に収まります。もうひとつは、団体種目を「3校の合同部活動を先に作り、それを地域クラブの母体にする」という順序で進めている点です。いきなり外部団体に委ねるのではなく、学校側の枠組みのまま3校を束ねてから地域へ出す段取りは、指導者と生徒の関係を途切れさせにくい進め方です。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

合同部活動を地域クラブの母体にする方式は、学校数が少ない自治体ほど成立しやすい一方、校区をまたぐ移動の負担が必ず発生します。菊川市は中学校3校という規模だからこそ「3校で1つ」が成り立っており、学校数の多い自治体ではブロック単位に分けて同じ構造を作る必要があります。また、合同部活動と合同チームの区別は保護者に伝わりにくく、「大会に出られるのか」という疑問に直結します。菊川市のように目的・条件を表で並べた資料を早い段階で配布しておくと、個別の問い合わせ対応が減ります。認定地域クラブ制度を設ける場合は、申請様式と認定基準を同時に公開し、認定済みクラブの一覧を更新し続けることが、受け皿の実在を保護者に示す最も確実な方法です。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

市教育委員会が認定する制度であるため、活動基準の担保と参入クラブの可視化は機能しています。認定クラブ一覧・登録申請様式・人材バンクの活用イメージを同じページで公開しており、情報開示の水準は高い部類です。一方で、市の公表資料には会費の金額が示されておらず、保護者負担はクラブごとに異なる構造です。整備対象をミドル層に限定した以上、トップ層を志向する家庭は民間クラブを選ぶことになり、費用差が機会差に転じないかは今後の検証点になります。令和10年8月末という完了期限を種目別の進度と両立させられるかが、計画の実効性を左右します。

スポンサーリンク

CONSULTING / 専門家に相談

受け皿団体の組織整備・経営について
専門家に相談しませんか?

設立手続きの進め方・行政との調整・資金計画など、
総合型地域スポーツクラブ特化のコンサルティングをご提供しています。

🏢 クラブ立ち上げ
🤝 行政調整・仲介
📊 事業計画策定

HOW TO START

3ステップで
相談を始められます

  • 01フォームから状況を送信
  • 02オンラインで初回ヒアリング
  • 03最適な支援プランを提示
専門家に相談する →
企業の方へ
部活動地域展開の市場・本サイトの読者層に関心のある企業向けのご案内ページをご用意しています。
FOR BUSINESS →