トップ 事例を探す 岐阜県 【事例】岐阜県多治見市の部活動地域展開 ─ 全国に先駆け約20年前に制度化した「ジュニアクラブ活動」
全種目 👥 10~30万人 🏫 中規模校(150〜300人) 📍 岐阜県

【事例】岐阜県多治見市の部活動地域展開 ─ 全国に先駆け約20年前に制度化した「ジュニアクラブ活動」

公開:2026.07.22 更新:2026.07.22
この記事でわかること

・多治見市が約20年前に導入した全国先駆けの「ジュニアクラブ活動」制度の仕組み
・部活動・ジュニアクラブ・生涯スポーツを3層で定義したガイドラインと責任・暴力根絶の明文化
・20年運用で見えた課題(指導者育成・受益者負担)と情報透明化への更新という「その先」の示唆

自治体名 岐阜県多治見市
人口規模 約10万人
中学校数 8校(多治見・小泉・南ケ丘・陶都・北陵・平和・笠原・南姫)
運営形態 保護者・地域運営型(中学校区を基本単位とする「ジュニアクラブ活動」。市はガイドラインで制度を規定)
対象競技 中学校の部活動にある種目をもとにした各種スポーツ
保護者負担額 受益者負担(クラブごと)。ガイドラインで「受益者負担の理解」を課題として明記

取り組みの概要

多治見市は、国が令和13年度までの休日部活動の地域展開を打ち出すよりはるか前、平成12年度に策定された国のスポーツ振興基本計画に基づき、中学生のジュニア期を「学校教育の部活動」と「社会教育のクラブ活動」に分けて組織し、休日等の生涯スポーツ環境を充実させてきました。その中核が、中学校区を基本単位として保護者や地域の社会人の管理下で中学生のスポーツ活動を行う「ジュニアクラブ活動」で、全国に先駆けて約20年前に導入された独自制度です。市は「多治見市『ジュニア期のスポーツ活動』ガイドライン」(更新:令和8年2月)で、部活動・ジュニアクラブ活動・生涯スポーツとしてのクラブ活動の3つを定義し、それぞれの活動時間・指導者・責任の所在を明確にしています。近年は同志社大学の学生が中学生・保護者・教員971人にアンケート調査を行い、ジュニアクラブ情報を透明化するwebプラットフォームを市に提案するなど、先行制度の運用改善に向けた動きも生まれています。

特徴的な取り組み

  • 3層構造で定義されたジュニア期スポーツ: ガイドラインは、①部活動(学校管理下・平日下校時刻まで、教職員または委嘱社会人が指導)、②ジュニアクラブ活動(中学校区単位・平日下校後や土日祝、保護者が代表者となり社会人指導者が指導)、③クラブ活動(生涯スポーツ・任意参加)の3層を明確に区分。休日の受け皿を20年前から「ジュニアクラブ」として制度化していた点が、後発の地域移行と大きく異なります。
  • 保護者代表・地域社会人指導者による運営: ジュニアクラブは、参加する生徒の保護者が代表者となり、クラブ代表者に任命されジュニア期スポーツの目的を理解した社会人指導者が指導にあたる仕組み。「練習環境の整備による競技力の向上」「子どものニーズに応えるクラブ設置」「保護者の理解の深化」といった成果を、保護者の協力によって積み上げてきました。
  • 体罰・ハラスメント根絶を明記したガイドライン: ガイドラインは冒頭で体罰や言葉の暴力など行き過ぎた指導の根絶を強く確認し、万一の事故時はそれぞれの設置者が責任を有し関係者が連携して対応することを明確化。競技力向上を前提とした保護者運営の難しさや過度な活動の弊害という先行事例ならではの課題にも、制度として向き合っています。

課題と解決策

課題 解決策
競技力向上を前提とした活動を保護者組織が支えることの困難さ(指導者育成・受益者負担の理解・過度な活動の弊害・活動目的の共通理解) ガイドラインで3層の活動を定義し責任の所在を明確化。ジュニア期スポーツの目的を理解した社会人指導者を代表者が任命
体罰・言葉の暴力など行き過ぎた指導への懸念 ガイドライン冒頭で暴力・ハラスメントの根絶を強く確認し、事故時の責任と連携対応を明記
ジュニアクラブの情報が保護者・生徒に見えにくい 大学との連携調査を受け、クラブ情報を透明化するwebプラットフォームの立ち上げを検討

成果・効果

多治見市のジュニアクラブ制度は、休日の中学生スポーツ活動を学校から切り離して保護者・地域が担う仕組みを、全国が地域移行に着手する20年も前に実装していた点で先駆的です。制度の成熟に伴い「練習環境の整備による競技力の向上」「子どものニーズに応えるクラブ活動の設置」「保護者の活動理解の深化」といった成果を得てきた一方、指導者育成・受益者負担・過度な活動の弊害という、後発自治体がこれから直面する課題を先に経験し、ガイドラインとして言語化しています。令和7年度には同志社大学の学生が971人規模のアンケート調査を実施し、情報透明化のwebプラットフォームを市長・教育長へ提案。20年続いた制度を検証し次の形へ更新しようとする動きは、地域移行の「その先」を考える上で貴重な先行事例です。

出典

→ 原文: 多治見市「ジュニア期のスポーツ活動」ガイドライン(多治見市公式ホームページ)
→ 参考: 令和7年12月 マイタウン・ホットニュース番外編(同志社大学による部活動地域移行に関する調査報告・多治見市公式ホームページ)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

多治見市の価値は、多くの自治体が今まさに議論している「休日部活動を保護者・地域が担う仕組み」を、約20年前に「ジュニアクラブ活動」として実装済みだという点にあります。他の事例が「これから受け皿をつくる」段階なのに対し、多治見市は「20年運用した結果、何がうまくいき何が難しかったか」を語れる稀有な自治体です。ガイドラインが挙げる課題(指導者育成・受益者負担の理解・過度な活動の弊害)は、後発自治体が数年後に必ず直面するもの。地域移行のゴール像を先取りしたモデルとして、これから制度設計する自治体が最初に参照すべき事例といえます。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

保護者代表・地域社会人指導者による運営は、担い手の熱意に支えられる一方、競技力志向が強まると保護者の負担や勝利至上の弊害が生じやすいという、多治見市が20年かけて直面した構造的課題があります。導入する場合は、多治見市のようにガイドラインで「体罰・ハラスメント根絶」と「事故時の責任の所在」を明文化し、活動目的(競技志向か楽しむ志向か)をクラブごとに共有する仕組みを最初から組み込むことが重要です。また、大学連携調査が提案した「情報の透明化」は、保護者主導で乱立しがちなクラブの実態を見える化し、生徒が選びやすくする有効な打ち手として応用できます。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

3層の活動区分・責任の所在・暴力根絶をガイドラインで明文化し、令和8年2月まで更新を重ねている点で、制度のガバナンスは長期運用に耐える水準にあります。20年の実績は持続可能性の証左ですが、その裏で「指導者育成」「受益者負担の理解」という積み残しも明確化されており、制度疲労への対処が今後の焦点です。大学との連携で外部の目を入れ、情報透明化のプラットフォームを検討する動きは、成熟した制度を形骸化させず次世代へ更新する試みとして評価でき、他自治体の「その先」の参考になります。

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