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全種目 👥 5~10万人 🏫 大規模校(300人以上) 📍 福井県

【事例】福井県坂井市の部活動地域展開 ─ 先行2クラブが他の9クラブの事務を代行・令和7年度末までに移行できない休日部活動は活動を終了

公開:2026.09.30 更新:2026.09.30
この記事でわかること

・先行2クラブが後続9クラブの事務・集金を代行する「クラブがクラブを支える」中間支援の仕組み
・指導者2名以上・5人未満は統廃合・実施主体の適正数を生徒数から逆算する認定要件の設計
・委託料約63万円と会費約13万円という単位クラブの収支実額と、加入率86%への低下という現実

自治体名 福井県坂井市
人口規模 約8.9万人(88,973人・令和6年1月)
中学校数 5校(三国・丸岡・丸岡南・春江・坂井/生徒2,424人・令和7年1月時点、70部活動)
運営形態 市が認定する地域クラブへの業務委託(坂井サポートクラブ・三国陸上クラブほか)。所管は教育委員会事務局生涯学習スポーツ課
対象競技 軟式野球、サッカー、バスケットボール、バレーボール、ソフトテニス、ソフトボール、バドミントン、卓球、柔道、剣道、陸上競技、吹奏楽、合唱、郷土芸能 ほか
保護者負担額 令和6年度の実証では月額上限2,000円・年額上限24,000円(実際は保険料のみの0円〜月額2,000円)。令和8年3月策定の推進計画では「可能な限り低廉な会費」の設定を認定要件としている

取り組みの概要

福井県坂井市は2006年に4町が合併して誕生した市で、市域は南北17.3km・東西30.6kmと横長に伸びています。中学校間の距離は三国中学校と丸岡南中学校の間で18.6km、丸岡中学校と丸岡南中学校の間では2.6kmと大きな偏りがあり、公共交通機関の利用は困難で、徒歩や自転車で移動できる距離でも街灯や歩道の整備は十分ではありません。校区外への移動はほぼ保護者の送迎に頼らざるを得ない、という条件のもとで地域展開が進められています。

市は令和5年度に有識者による「部活動地域移行に関わる未来の地域クラブ推進委員会」を設置し、同年度に2クラブを先行させました。令和6年度には「坂井市地域クラブ設立の手引き」を策定してクラブ活動の理念や設立手順を示し、16クラブ(25部活動分)まで拡大。令和5年度から令和7年度までの3年間で認定クラブは34となり、運動部70部活動のうち49、文化部8部活動のうち6、合計78部活動中55部活動が移行済みとなっています。

令和8年3月には、それまで指針としてきた「地域クラブ設立の手引き」を国の新ガイドラインに合わせて改訂し、「坂井市部活動地域展開推進計画」として策定しました。令和8年度から令和13年度までの6年間を「改革実行期間」と位置づけ、令和10年度までに休日の部活動を例外なく地域へ展開することを目標としています。

特徴的な取り組み

  • 先行クラブが後続クラブの事務を代行する支援体制: 令和6年度から、先に活動を始めた2クラブと市が連携し、事務処理に不安を持つ地域クラブを支援する仕組みを整えました。坂井サポートクラブが6クラブ、三国陸上クラブが3クラブの事務処理・集金といった運営の雑務を引き受け、令和7年度はさらに3クラブが加わる予定です。クラブ間の横のつながりを強化し、指導者の負担軽減につなげています。
  • 「指導者を複数名配置できること」を認定要件に加えた: 1実施主体ごとに指導者2名以上、参加者27人以上の場合は3名以上の配置を基準としています。指導者1人に依存する体制を認定段階で排除する設計で、参加者が1年を通して5人未満となる団体は統廃合の対象とし活動人数の適正化を図ります。
  • 実施主体の「適正数」を生徒数から逆算: 国の補助単価が示す1団体あたり13〜26人を適正人数とし、中学生在籍数・運動部加入率65%・地域クラブ加入率85%から必要な実施主体数を算出しています。在籍2,300人なら運動系65実施主体・文化系8実施主体という基準で、少子化に応じて見直します。同一学校区における同一種目の認定は1実施主体のみです。
  • 会費に上限を設け、初期費用は市が肩代わり: 令和6年度の実証では月額2,000円・年額24,000円の上限を設定してクラブに低廉化を依頼し、上限を超える徴収はありませんでした。あわせて1クラブあたり8万円の消耗品費支援、学校施設の使用料減免、部活動の競技用備品の共有により、団体としての初期費用はほとんど発生しない状態をつくっています。指導者のスポーツ保険料は自治体負担です。
  • 移行できなかった休日部活動は活動を終了すると明記: 推進計画は、指導者確保やクラブ設立の条件が整わず令和7年度末(令和8年3月31日)までに移行できない休日部活動については、令和8年度以降の活動を行わないと定めています。ただし中体連主催の大会やコンクール等で学校部活動として参加する必要がある場合は、校長の判断で参加できるという例外を置いています。
  • 平日は「地域に移行することを前提としない」: 平日の部活動は部員数・生徒の意向・教職員の負担など各校の実情を考慮し、できるところから進める方針です。生徒と教職員にとって最も望ましい形であれば平日部活動を学校に残すことも可能と明記しており、休日と平日を切り分けています。
  • 部活動にない選択肢を束ねる「中学生のひろば」: 令和8年4月から、種目別スポーツ協会・コミュニティセンター講座・自主講座のうち中学生を受け入れられる講座を一覧化して周知する取り組みを開始しました。部活動や地域クラブと並行した参加も可能です。
  • 認定の期限と取消要件を制度化: 認定期間は3年(更新可)で、申請は前年度の3月31日まで。活動完了報告書の提出を義務づけ、申請内容の虚偽や改善勧告に従わない場合は認定取消と財政支援の返還を命じる規定を置いています。
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課題と解決策

課題 解決策
市域が広く学校間の距離があるうえ公共交通機関の利用が困難で、街灯や歩道の整備も十分でないため、校区外への移動はほぼ保護者の送迎に頼らざるを得ない 活動場所を各中学校と身近な地域施設に置き、同一学校区の同一種目は1実施主体のみ認定して拠点の分散を抑えた。推進計画でも保護者の不安として送迎や金銭の負担が上位を占めることを明記し、対外試合や練習会は生徒の参加意思と送迎方法について保護者の同意を得たうえで2か月ごとに市へ報告させている
指導者の発見とマッチングが非常に困難で情報の取りまとめに多くの労力を要し、単独自治体で行うには限界がある 種目団体関係者や学校関係者に照会して指導歴や力量の情報を収集し、種目ごとの指導者同士の横のネットワークを活用。あわら市と2か月に1回の情報交換会を設け、県教育委員会が発信する県内全域のクラブ情報も活用している。人材バンク登録は101名
事務処理や集金などクラブ運営の雑務が指導者の負担となる 先行2クラブが後続クラブの事務を一元的に処理する体制を整備。令和6年度は9クラブが支援を受けて活動し、令和7年度はさらに3クラブが加わる予定。ただし支援側クラブへの財政支援や人員配置には課題が残ると市は認めている
就学援助受給世帯を対象とした支援制度を設計していたが、クラブ設立と指導者確保が想定より進まず、一部の生徒だけが制度を享受するのは不公平だと判断した 令和6・7年度は地域展開の推進を優先し、令和8年度から運用できるよう制度設計の完了を目指す。クラブへ直接支払うと就学援助の受給がクラブ側に知られ個人情報保護上の問題となるため、四半期ごとなど分散した支援方法も検討している
休日は学校以外の体育施設が混雑して希望しても利用が難しく、競技用備品の不足や修繕の費用もない 認定クラブへの支援として、公共施設の低廉な利用料での利用と学校施設の優先使用を制度化。学校施設側ではAEDの配置改善計画で令和7年度予算の目途が立ち、セキュリティ改善は教育総務課が引き継いで継続している

成果・効果

令和8年7月18日から8月16日まで実施された認定地域クラブのアンケートでは、生徒268名・保護者459名の計727名が回答し、9割以上の生徒・保護者が満足と回答しました。満足の理由は指導内容に関することと活動場所の近さが上位で、生徒は「指導を受けてうまくなった実感」を、保護者は「活動場所の近さ」を重視しています。不満の理由では練習時間の短さが挙がりましたが、回答数は非常に少ないと市は報告しています。

令和6年度の実証時点でも、参加者の満足度は「とても満足」54%・「やや満足」36%の合計90%でした。満足度を押し上げた要因は「指導が丁寧で分かりやすい」54%、「クラブの雰囲気がよい」51%、「上手くなる実感がする」41%。不満の要因は「指導が厳しい」8%、「活動場所への移動が大変」8%、「会費の負担が大きい」5%でした。

費用面の実像も公開されています。指導者2名・生徒17名という標準的な単位クラブの収支は、収入が市の委託料約63万円と会費収入約13万円で合計約76万円、支出が指導者謝礼・旅費約45万円、消耗品費・事務費約19万円、練習会等参加経費約13万円でした。市の委託料が収入の8割強を占める構造です。

一方、市は目標未達も明示しています。令和6年度は26部活動の移行計画に対し19部活動での実施にとどまり、年度をまたいで開始準備ができた3部活動を含めても目標に届かなかったと総括。指導者は約100名を確保したものの地域や種目に偏りがあるとしています。令和7年9月25日に中学1・2年生へ実施したアンケートでは、休日に活動したいと答えた生徒が43%と「予想に反して低かった」一方、現在参加している生徒の満足度は87%でした。部活動加入率も令和元年度の94%(2,424人)から令和7年度は86%(2,062人)へ下がり、部活動数は103から91に減っています。令和6年10月に5校すべてで認定された柔道部が、令和7年度に三国中学校を除く4校で廃部となった例もあり、認定が活動の継続を保証するわけではないことが記録されています。

出典

→ 原文: スポーツ庁「令和6年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書(福井県坂井市)」

→ 原文: 坂井市教育委員会「坂井市部活動地域展開推進計画」(令和8年3月)

→ 原文: 坂井市「R8 認定地域クラブアンケート」集計結果

→ 原文: 坂井市「中学校部活動地域展開」

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域展開・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

坂井市が他自治体と決定的に違うのは、クラブを増やす前に「クラブを運営できる状態」を制度で定義したことです。指導者2名以上の配置、参加者5人未満は統廃合、同一学校区の同一種目は1実施主体のみ、実施主体の適正総数は生徒数から逆算。この4点が認定要件に組み込まれているため、1人の熱心な指導者が倒れたら消えるクラブや、参加者3人で細々と続く実質休止状態のクラブが制度上生まれません。もう一つの発明は、先行2クラブに後続クラブの事務を代行させた点です。事務処理と集金は指導者が最も嫌う業務であり、これを行政が全部抱えれば人員が足りず、各クラブに任せれば指導者が辞めます。坂井市は「クラブがクラブを支える」中間層をつくり、令和6年度に9クラブがその恩恵を受けました。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

まず覚悟すべきは、制度を整えても計画どおりには進まないという現実です。坂井市は令和6年度に26部活動を移行する計画に対し19部活動しか実施できず、「暗中模索」と総括しています。それでも推進計画で「令和7年度末までに移行できない休日部活動は令和8年度以降活動しない」と期限を切ったのは、期限を示さない限りクラブ設立の交渉が動かないからです。導入を検討する自治体は、この期限設定を単独で真似るのではなく、中体連大会への参加を校長判断で認める例外と、部活動にない活動を束ねた「中学生のひろば」という受け皿を同時に用意した点まで含めて移植する必要があります。また、事務代行を担うクラブへの財政支援と人員配置は坂井市自身が未解決課題として挙げており、支援側クラブの負担を無償の善意に依存させない設計が別途必要です。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

ガバナンスは全国的にも高い水準です。認定要件8項目に会計の総会承認を含め、認定期間3年・活動完了報告書の提出義務・虚偽申告時の認定取消と財政支援返還まで規定し、兼職兼業は許可要件に「時間外在校等時間との合計が複数月平均80時間以内」という健康面の閾値を置いています。持続可能性の弱点は財源構造で、標準的な単位クラブの収入約76万円のうち市の委託料が約63万円を占めます。会費上限を年24,000円に抑える政策と委託料依存は表裏一体で、委託料が縮めば会費が上がり、加入率86%はさらに下がる可能性があります。

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