トップ 事例を探す 東京都 【事例】東京都葛飾区の部活動地域展開 ─ 地域指導者232人・顧問指導員83人の二層体制と小規模校合同モデルで令和8年3月に推進方針を策定
全種目 👥 30万人以上 🏫 大規模校(300人以上) 📍 東京都

【事例】東京都葛飾区の部活動地域展開 ─ 地域指導者232人・顧問指導員83人の二層体制と小規模校合同モデルで令和8年3月に推進方針を策定

公開:2026.08.06 更新:2026.08.06
この記事でわかること

・葛飾区が地域指導者232人・顧問指導員83人の二層体制で全24校の地域連携を支える仕組み
・生徒数減少率の高い小規模校2校を合同モデルに充てた地域展開実証の設計
・保険料の保護者負担なし・検証項目7点明文化などモデル事業の運営ノウハウ

自治体名 東京都葛飾区
人口規模 約47万人(2026年7月時点)
中学校数 区立24校(令和6年度時点・53種目275部活動、生徒8,673人の81.8%が部活動に所属)
運営形態 行政直営(区教育委員会主導・地域指導者/顧問指導員の二層配置+モデル校での地域展開実証)
対象競技 全種目(運動系17種目166部・文化系36種目109部。モデル事業は運動系7種目+2種目)
保護者負担額 モデル事業はスポーツ安全保険加入必須だが保険料の保護者負担なし(会費等は未公表)

取り組みの概要

葛飾区は令和6年度に関係団体と区で構成する「葛飾区立中学校部活動の地域連携・地域展開推進方針策定検討協議会」を設置し、2年間の検討とモデル事業を経て、令和8年3月に「葛飾区立中学校部活動の地域連携・地域展開推進方針」を策定しました。区は平成14年度から他区に先駆けて、技術補助を担う「中学校部活動地域指導者」を配置してきた実績があり、令和4年度からは教員に代わり顧問業務の一部を担う「中学校部活動顧問指導員」も導入。地域指導者232人・顧問指導員83人(令和7年7月末時点)が全区立中学校に配置されています。地域展開については令和6年10月から新宿(にいじゅく)中学校で7種目の学校単位モデル事業を試行し、令和8年度は水元中学校(単独・運動系7種目)と四ツ木中学校・中川中学校(合同・運動系2種目)で土日・祝日の地域展開モデル事業を実施。少子化推計(令和14年に生徒数8.3%減)を踏まえ、地域連携の充実と地域展開のモデル的導入を並行させる方針です。

特徴的な取り組み

  • 「地域指導者+顧問指導員」の二層配置: 技術指導補助を担う地域指導者(令和4年度末165人→令和7年232人)に加え、顧問業務の一部を担える顧問指導員(同29人→83人)を配置。全区立中学校のいずれかに配置済みで、東京都作成の研修動画視聴で指導の質も担保しています。
  • 小規模校を優先した合同モデル事業: 令和14年時点で生徒数38.6%減が見込まれる中川中と24.6%減の四ツ木中という、存続リスクの高い小規模校2校を合同モデルに指定。将来の学校統合や部活動存続難を見据えた実証を先行させています。
  • 検証項目を7点に明文化: 適切な指導体制、教員の負担軽減と平日指導との連携、関係者間の連絡体制、活動場所の確保、指導者の質、教員の兼職兼業、費用負担のあり方という7つの検証項目を方針に明記し、モデル事業を「課題抽出の場」と位置づけています。
  • 保険料の保護者負担なし: 土日・祝日のモデル事業は学校管理下外となるためスポーツ安全保険への加入を必須とし、公益財団法人スポーツ安全協会の助成金を活用して保護者負担なしで実施しています。

課題と解決策

課題 解決策
教員の55.6%が部活動・地域クラブ活動に関わりたくない、または技術指導できない種目の顧問を務めている 顧問業務を担える顧問指導員の増員(29人→83人)と、望まない教員が参加しない体制の整備を方針に明記
生徒の66.7%・保護者の72.5%が専門的指導のできる指導者を要望 研修動画による指導の質向上と、種目特性・部員数に応じた指導体制をモデル事業で検証
少子化により小規模校で部活動の存続が困難化(令和14年に生徒数8.3%減の推計) 減少率の高い中川中・四ツ木中の合同地域クラブ活動モデル事業で複数校連携の形を実証

成果・効果

地域指導者・顧問指導員の配置は着実に拡大しており、地域指導者は令和4年度末の165人から令和7年7月末には232人、顧問指導員は同29人から83人に増加しました。区は「全区立中学校で地域指導者または顧問指導員が配置されており、運動部では地域連携の取組が定着している」と評価しています。令和6年10月開始の新宿中モデル事業(サッカー・バスケットボール・ソフトテニス・野球・陸上競技・卓球・バレーボールの7種目)ではアンケート検証も実施し、その結果を令和8年3月策定の推進方針に反映。令和8年度は水元中(1種目当たり50日程度)・四ツ木中+中川中合同(同60日程度)でモデル事業を拡大しています。

出典

→ 原文: 中学校部活動の地域連携・地域展開について検討を進めています(葛飾区公式サイト)
→ 参考: 葛飾区立中学校部活動の地域連携・地域展開推進方針(令和8年3月・葛飾区教育委員会)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

葛飾区の設計で光るのは、モデル校の選び方です。学校単位モデル(新宿中→水元中)で「1校まるごと地域展開した場合」を、合同モデル(四ツ木中+中川中)で「小規模校が連携した場合」を検証する二本立てで、しかも合同モデルには令和14年に生徒数38.6%減・24.6%減が見込まれる区内で最も存続リスクの高い2校をあえて充てています。地域展開が最初に必要になるのは小規模校だという現実に即した実証設計です。また、平成14年度から積み上げてきた地域指導者制度の上に、顧問業務まで担える顧問指導員を重ねた二層構造は、「技術指導の補助」から「顧問の代替」への段階的な移行経路として、多くの自治体がそのまま参考にできる形です。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

二層の指導者体制は人材の頭数がすべてであり、葛飾区も「人材の確保は課題」と明言しています。20年以上かけて地域指導者の裾野を広げてきた蓄積がない自治体が短期間で同じ人数を揃えるのは困難なため、まず技術補助型の指導者バンクを整備し、その中から顧問業務を担える人材を選抜・研修していく順序が現実的です。また、葛飾区のモデル事業はスポーツ安全協会の助成金で保険料の保護者負担をゼロにしていますが、助成は恒久財源ではありません。本格展開時の会費・保険料の負担設計(方針の検証項目にも「費用負担のあり方」として明記)を、モデル事業の段階から試算しておくことが重要です。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

関係団体と区で構成する協議会が2年かけて方針を策定し、部活動数の推移・所属率・生徒数推計・アンケート結果まで一次データを方針本文で公開している透明性は高水準です。検証項目7点を明文化した上でモデル事業を「課題抽出の場」と位置づけており、拙速な全区展開を避ける設計になっています。一方、本格展開の時期や運営団体の枠組み、会費水準は今後の検討事項であり、次期学習指導要領の部活動の位置づけと国の認定制度への対応が方針改訂の焦点になります。

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