トップ 事例を探す 東京都 【事例】東京都世田谷区の部活動地域展開 ─ 玉川中モデル実証とスポーツ振興財団委託の2段階方式で令和11年度から土日中心の地域展開へ
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【事例】東京都世田谷区の部活動地域展開 ─ 玉川中モデル実証とスポーツ振興財団委託の2段階方式で令和11年度から土日中心の地域展開へ

公開:2026.08.06 更新:2026.08.06
この記事でわかること

・世田谷区が29校389部活動を対象に2段階方式で令和11年度から土日中心の地域展開を目指す計画
・スポーツ振興財団委託による部活動調整員・支援員(監督/指導員)・アプリ活用の体制設計
・モデル校実証で課題を洗い出し1年で方針を改訂する検証サイクルの回し方

自治体名 東京都世田谷区
人口規模 約96万人(2026年7月時点・東京23区最多)
中学校数 区立29校(令和7年度時点・運動系246部+文化系143部の計389部活動)
運営形態 行政直営(教育委員会が運営主体・公益財団法人世田谷区スポーツ振興財団がコーディネート業務を担当)
対象競技 全種目(運動系18種類・文化系40種類)
保護者負担額 学校施設利用に係る経費は教育委員会負担。個人に還元される実費分は部費徴収可(金額は未公表)

取り組みの概要

世田谷区は令和7年3月に「世田谷区立中学校部活動地域移行の方針」を策定し、令和7年4月から区立玉川中学校をモデル校として公益財団法人世田谷区スポーツ振興財団に部活動運営支援を委託しました。モデル実施では部活動調整員の配置、部活動アプリの導入、部活動支援員の配置・育成、部活動サポーターの導入という4つの事業を展開。この1年間で把握した課題と、国が令和7年5月に示した部活動地域展開のあり方を踏まえ、令和8年3月に「世田谷区立中学校部活動地域展開の方針(第1次改訂版)」(計画期間:令和7〜10年度)として改訂しました。改訂版では、令和10年度までに全区立中学校で平日・休日の学校部活動の地域連携を進め(第1段階)、(仮称)世田谷区立中学校部活動地域展開協議会で令和9年度までに地域展開の考え方をまとめた上で、令和10年度を準備・調整期間とし、令和11年度から土日の活動を中心とした地域展開を進める(第2段階)という2段階のロードマップを示しています。

特徴的な取り組み

  • 拠点校4校+財団本部への部活動調整員配置: 温水プール開放事務室のある玉川中・太子堂中・梅丘中・烏山中の4校を拠点校とし、財団本部と合わせた5か所に部活動調整員を配置。拠点校から近隣校を随時巡回させ、本部で活動情報を集約・管理する体制を構築しています。
  • 「監督・指導員」2層の部活動支援員制度: 教育委員会が任用する部活動支援員を「監督」(練習試合や大会等の単独引率、練習計画の作成、安全管理を担う)と「指導員」(監督の技術指導を補佐)の2層で設計。謝礼支払・保険加入・研修は教育委員会とスポーツ振興財団が担い、音楽・美術系は文化財団、そのほか区内企業・区内大学とも連携して人材を確保します。
  • 部活動アプリによる連絡・情報共有: 生徒の欠席連絡、大会時・休日の出欠連絡、活動スケジュール管理を部活動アプリで一元化し、部活動支援員と顧問教員の双方が情報を共有する仕組みにしています。
  • 総合型地域スポーツ・文化クラブの活用: 平成14年から23年間で11の総合型地域スポーツ・文化クラブが設立されており、地域展開の試行として令和7年度は4つの総合型クラブに5つの地域クラブ活動の運営を委託しています。
  • 教員への直接支援: 令和7年度から審判資格取得費用(研修費用)の助成(令和8年度以降は資格更新も対象)と、指導・運営に使う参考書籍・消耗品等の購入経費の学校あて予算配当を実施しています。

課題と解決策

課題 解決策
部活動の実施時間が主に平日夕方のため、従事できる部活動支援員の確保が難しい スポーツ団体・文化団体・区内企業・区内大学・文化財団と連携した人材確保と人材バンクの管理
支援員と顧問教員の役割分担が不明確で、委嘱基準も未整理 委嘱時の役割分担の明確化と活動意義の再確認、監督に必要なスキル・研修内容の整理を改訂方針に明記
教員アンケートで兼職・兼業により地域指導者として「関わりたくない」が61.6% 教員の兼職兼業に依存せず、教育委員会任用の部活動支援員と財団コーディネートを軸にした体制を整備

成果・効果

令和5年度の生徒アンケートでは、現在の部活動に「満足している」「どちらかといえば満足している」と回答した生徒が全体の87.7%にのぼる一方、休日に地域で行う活動への参加意向は42.3%でした。教員アンケートでは中学校教員の45.7%が「多忙感・負担感を覚えた業務」に部活動指導を挙げ、週休日・休日に出勤して従事した業務では約60%が部活動指導と回答しています。区はモデル実施1年で支援員確保・役割分担・委嘱基準・緊急連絡体制・サポーター運用の5つの課題を明確化し、それを翌年度の方針改訂に反映させるサイクルを回しています。部活動実施に伴う学校施設設備の使用料・光熱水費・付帯設備・部全体の用具代は教育委員会負担と明記し、保護者負担の範囲を限定した点も特徴です。

出典

→ 原文: 「世田谷区立中学校部活動地域移行の方針」の改訂について・世田谷区立中学校部活動地域展開の方針(第1次改訂版)(令和8年2月・世田谷区教育委員会)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

人口約96万人・区立中29校・389部活動という全国最大級の規模で注目すべきは、世田谷区が「一気に地域展開」から「地域連携を先行させる2段階方式」へ1年で軌道修正した点です。令和7年3月策定の方針はモデル校1校での実施を経て、支援員確保や役割分担など5つの具体的課題を洗い出し、令和8年3月の第1次改訂版で「令和10年度まで地域連携(第1段階)→令和11年度から土日中心の地域展開(第2段階)」に改めました。理想のスケジュールに現場を合わせるのではなく、モデル実施の実証結果でスケジュールの方を直す。この順序は、教員の6割超が兼職・兼業に消極的という現実を持つ大都市部の自治体にとって重要な参照点になります。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

世田谷区モデルの中核は、スポーツ振興財団という既存の外郭団体にコーディネート業務(人材バンク管理・支援員のマッチング・勤怠管理・研修)を委託できたことです。同様の財団を持たない自治体がそのまま移植することは難しく、スポーツ協会・総合型クラブ・民間事業者のいずれかに同じ機能を持たせる設計が必要になります。また、財団経由の委嘱手続きが「提出先が変わっただけで学校の負担軽減につながっていない」という現場の声も区自身が公表しており、事務フローを移管する際は「学校の作業が実際に減るか」を指標に設計しないと、体制だけが立派になり負担が残る結果になりかねません。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

教育委員会を運営主体と明記し、施設使用料・光熱水費等の公費負担範囲と部費徴収のルールを方針本文で定めた点は、費用負担の透明性という面で評価できます。モデル実施→課題公表→方針改訂という検証サイクルが機能しており、(仮称)協議会での議論も令和8年4月以降に開始予定と工程が明示されています。一方、土日中心の地域展開(第2段階)の運営主体・会費水準は協議会での検討事項として残されており、令和9年度までにまとまる「地域展開の考え方」が持続可能性を左右します。

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