【事例】京都府八幡市の部活動地域展開 ─ 民間事業者に運営を委託し中学4校の休日運動部12部を会費なしで実証、全面実施に必要な年3,000万円強を試算し参加費の検討へ
・民間事業者に運営を委託し、中学4校の休日運動部12部を11クラブ・指導者53人で会費なしで実証した八幡市の体制
・全面実施に年3,000万円強が要る試算と、参加費月3,000円程度と保護者が望む月1,000円程度との差
・「指導サポーター」区分による指導者確保、合同クラブの送迎課題と施設の鍵管理という運営上の論点
| 自治体名 | 京都府八幡市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約6.8万人(68,175人・令和7年度スポーツ庁成果報告書記載) |
| 中学校数 | 市立中学校4校(生徒1,537人・運動部44部) |
| 運営形態 | 民間委託(教育委員会学校教育課が民間事業者のスポーツデータバンク株式会社と契約し、ともに「八幡市地域クラブ」を運営。首長部局の生涯学習課がスポーツ協会・公園施設事業団等との調整と財源確保を担当) |
| 対象競技 | ソフトテニス、バドミントン、卓球、ハンドボール、バレーボール、バスケットボール(女子)(令和7年度11クラブ・12部活動) |
| 保護者負担額 | 参加会費なし(令和7年度)。スポーツ安全保険は生徒1人あたり800円/年 |
取り組みの概要
八幡市の市立中学校4校にはそれぞれ運動部が11部あり、各校が単独で活動を維持していますが、生徒数は令和6年度の1,643人から令和8年度には1,450人、令和13年度には1,200人まで減る見込みです。各校は生徒数の減少に合わせていくつかの部を休止してきましたが、今後は立ち行かなくなる部が増え、生徒の選択肢がさらに狭まることを市は課題としています。市は令和4年度に準備委員会を置いて検討を始め、令和6年度に推進協議会へ改めました。令和6年度は1校1部活、令和7年度は1校3部活(全12部活動)のモデルケースとして、休日の活動に限った地域クラブを実証しています。各部が活動できなくなってから取り組むのではなく、今から段階的に準備を進め、今の生徒にも将来の生徒にもメリットのある持続可能な環境を整えたいというのが市の考えです。
特徴的な取り組み
- 民間事業者への委託で運営の土台を作る: 全国で同じ事業の支援実績を持つ事業者を委託先とし、国の方針や他自治体の事例を踏まえたスキームとロードマップの整理を行いました。委託先のコーディネーターが制度設計、クラブの運営・管理、学校・指導者との連絡調整、参加者受付と保険加入、全面実施に向けた経費シミュレーションまでを担っています。
- 主任12名・副主任41名の指導体制と「指導サポーター」: 11クラブの指導者53人は、各クラブの指導計画と安全管理を担う主任指導者12名と、当日の指導を支える副主任指導者41名に分かれます。顧問教員の兼職兼業と外部指導者を組み合わせ、技術指導が難しい教員のために「見守り」役の「指導サポーター」という区分を新たに設けて、指導者を確保できる範囲を広げました。市内に大学がないため、委託先が近隣市の大学に働きかけて大学生の指導者も確保しています。
- 複数校の合同クラブ: 卓球・女子バスケットボール・バドミントンの3クラブは複数校の合同で活動し、毎回合同にする形と月1回だけ合同にする形を使い分けました。市内4校は自転車で行き来できる距離にあり、他校開催の日は自転車での移動を認めています。八幡市バスケット協会の指導で、市内の女子バスケットボール部員向けのイベント型活動も5回開きました。
- アプリでの運営と危機管理マニュアル: 活動予定の案内と活動報告をアプリで行い、指導者が撮った練習や試合の写真・動画をアプリ内限定で保護者に公開しています。事故時の連絡経路は「現場指導者→運営団体・市教委→保護者」に一本化し、活動現場には原則2名以上の指導者を置きます。指導者の自家用車やバイクへの生徒・保護者の同乗禁止などの行動規範も明文化しました。
- 「子どもわくわく教室」を地域クラブに: 生涯学習課やスポーツ協会との協議で、既存の「子どもわくわく教室」を地域展開の受け皿として使う方針を決め、来年度はバトントワリングを地域クラブ化します。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 全面実施の試算では年間事業費が約3,000万円強となり、参加費の試算(月3,000円程度)と保護者アンケートで最も多かった「月1,000円程度」との間に約2,000円の差がある | 参加費額は次年度中に最終決定する。差を埋めるため、地域クラブ化のメリットの広報や多様な体験の機会づくりで付加価値を高め、ふるさと納税・地元企業の協賛など外部資金の確保と一体で進める。導入初期の激変緩和措置も検討 |
| 保護者の約4分の1が「有償であれば参加させたくない」と回答しており、経済的な理由で活動機会の格差が生まれるおそれ | 生活保護世帯や就学援助の対象世帯などへの参加費減免を、全面実施に合わせて制度化することを検討 |
| 令和7年度は初めて実証する部もあり、顧問教員の兼職兼業に頼る形になった | 当初検討した市設置の「八幡市ジュニア育成指導者人材バンク(仮)」は事務負担と持続可能性を検証した結果見直し、卒業生・地域関係者の段階的な登用や、コーディネーター・スポーツ団体・大学のネットワークで指導者を確保する |
| 合同クラブで自校開催にならない生徒・保護者から送迎の課題が出た | 公用車の活用や民間連携による新たなモビリティを検討する |
| 学校施設の鍵を複製して運用しており、紛失などの面で課題がある。消耗品の購入や備品の管理責任も未整理 | スマートロック等による施設管理を検討し、備品破損時の責任や光熱水費の負担区分を定めた「施設利用管理マニュアル」を策定する |
成果・効果
令和7年度は11クラブに1年生112人・2年生114人・3年生68人が参加し、休日に月2〜3回、午前または午後の3時間程度活動しました。大会には中体連の部活動として参加しています。推進協議会には八幡市スポーツ協会・八幡市文化協会・八幡市公園施設事業団・やわた市民文化事業団・PTA代表・学校代表が委員として加わり、令和8年1月までに計3回開いて認定制度や参加費の基準を検討しました。各学校の教職員が委員にいたため、学校内での評価や課題を具体的に共有でき、現場に即した議論ができたと市は評価しています。各中学校で保護者・教員向けの説明を重ね、教員の地域クラブへの理解が徐々に浸透してきたとしています。周知文書「クリエイト(CREATE)」を前年度から続けて発行し、学校関係者と保護者に配りました。参加者からは「楽しく活動ができてよかった」「活動回数をもっと増やしてほしい」、保護者からは「より質の高い活動に取組む事ができまた、教師の負担軽減にもなると思うので今後も地域クラブを継続してほしい」という声がありました。一方、「会場が遠かった」「有償でもいいので送迎してほしい」という声もあり、指導者からはアプリ未登録の保護者がいると出欠確認が難しいことが指摘されています。市は今後、「部活動の地域展開」という行政用語ではなく、生徒や保護者が親しみやすい活動名称を検討するとしています。
出典
→ 原文: スポーツ庁「令和7年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書 京都府八幡市」(報告書検索システム)
→ 概要: スポーツ庁「令和7年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書 概要 京都府八幡市」(報告書検索システム)
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