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【事例】長野県小諸市の部活動地域展開 ─ 市教委が当面運営する「小諸市地域クラブ」構想・7パターンの実施主体で令和8年度末の休日移行完了へ

公開:2026.07.29 更新:2026.07.31
この記事でわかること

・市教委が当面の運営を担う「小諸市地域クラブ(仮称)」構想と令和8年度末の休日移行完了目標
・学校主導・社会教育団体主導のA〜G・7パターンに整理した実施主体設計と3種目の実証事業
・4者アンケートで送迎不安48.3%・教員負担45.2%を可視化した合意形成プロセス

自治体名 長野県小諸市
人口規模 約4.1万人(2024年時点)
中学校数 2校(芦原中学校・小諸東中学校)
運営形態 行政直営(「小諸市地域クラブ(仮称)」の運営を当面は市教育委員会が担う)
対象競技 全種目(令和7年度実証事業は軟式野球・卓球・バドミントン)
保護者負担額 参加者の会費負担が原則(金額は調査時点で未公表・困窮家庭への支援を検討)

取り組みの概要

小諸市教育委員会は令和7年3月、「小諸市における部活動等の地域移行計画」を策定しました。国の総合的なガイドライン(令和4年12月)と長野県の「長野県地域クラブ活動推進ガイドライン」(令和6年3月)を踏まえたもので、県が移行目標とする令和8年度末までに、市内2中学校の全ての休日部活動を地域クラブ活動へ移行完了する予定です。背景には、市内2中学校の生徒数が2020年度の1,084人から2029年度には917人へと2割弱減少する見込みであること、芦原中学校の運動部加入率が令和2年度の56.3%から令和6年度には43.6%まで低下していること、市内中学校教師の45.2%が部活動指導に「かなり負担を感じる」と回答していることがあります。受け皿となる「小諸市地域クラブ(仮称)」の運営は当面、市教育委員会自身が担うと明記した点が特徴です。

特徴的な取り組み

  • 市教委が当面の運営団体: 地域クラブの運営を当面は小諸市教育委員会が担い、各種団体の協力を得ながら指導者の確保・派遣、活動場所の確保、会計処理、安全管理等の実務を行うと計画に明記。受け皿団体が育つまで行政が実務を支える設計です。
  • 実施主体を7パターンに整理: 学校主導パターン(当該校の兼職兼業希望教員・部活動指導員/他校教員/退職教員等+外部指導者)と社会教育団体等主導パターン(市スポーツ協会/総合型地域スポーツクラブ「浅間嶺スポーツクラブ」/小諸リトルシニア・小諸バドミントンクラブ等の任意団体/民間事業者・競技団体運営クラブ)のA〜G・7類型を図示し、種目ごとに受け皿の有無をマッピングしています。
  • 3種目の実証事業から段階拡大: 地域移行推進協議会の審議を踏まえ、条件の整った軟式野球・卓球(小諸東)・バドミントン(新規設置)を令和7年度の実証事業として先行実施。成果と課題をまとめて改善策を検討し、種目を段階的に拡充します。
  • 4者アンケートで実態を可視化: 令和5年12月〜令和6年2月に小学5・6年生663名、中学1・2年生693名、保護者602名、中学校教師62名を対象に調査を実施し、計画の基礎資料としています。

課題と解決策

課題 解決策
少子化により単独校での部編成が困難(2中学校の生徒数は10年で2割弱減の見込み) 休日部活動を地域クラブへ段階移行し、複数種目を経験できるフリースポーツクラブや総合文化クラブの設置も検討
保護者の最大の不安は活動場所までの移動・送迎(48.3%) 当面は生徒本人または保護者の送迎を基本とし、それができない場合の支援のあり方を継続検討
指導の質の確保とハラスメント防止 指導者研修(集合・オンライン)を随時実施し、行き過ぎた指導やハラスメント根絶の研修と資格取得のフォローを行う
会費負担による参加断念の懸念 会費は可能な限り参加しやすい金額を設定し、経済的理由で参加をあきらめることがないよう困窮家庭への支援を検討

成果・効果

令和6年度にはアンケート調査の実施・分析、スポーツ関係団体との面談、先進地域の視察、地域移行推進協議会の準備会・本会の開催、実証事業の選定と環境整備までを完了しました。アンケートでは、保護者の57.6%が地域移行に「専門的な指導が受けられる」ことを期待する一方、教師は7割超が部活動指導にやりがいを感じつつ45.2%が強い負担を感じるという実態が数値で明らかになり、移行の必要性を関係者間で共有する材料となっています。令和7年度は運動部の実証事業と部活動運営委員会・推進協議会での検証を進め、令和8年度末の休日部活動移行完了、令和9年度以降の在り方検討へと進む計画です。

出典

→ 原文: 小諸市公式サイト「中学校部活動地域移行」
→ 原文: 小諸市における部活動等の地域移行計画(令和7年3月・小諸市教育委員会)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

小諸市の計画で最も参考になるのは、「運営団体は当面、市教育委員会が担う」と正面から明記した現実主義です。受け皿団体の成熟を待たずに移行期限だけが迫る自治体は多く、その間の指導者派遣・会計・安全管理といった実務の担い手が宙に浮きがちです。小諸市は行政がいったん実務を抱えると宣言した上で、実施主体をA〜Gの7パターンに分解し、種目ごとに受け皿の有無を一覧化しました。中学校2校という規模だからこそ可能な精緻なマッピングであり、「誰が・どこで・何を担うか」を曖昧にしない設計は、同規模の自治体がそのまま参照できる水準です。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

市教委直営はスタート時の確実性が高い反面、担当職員の業務負荷と「いつまで行政が担うのか」という出口戦略が課題になります。小諸市は地域移行推進協議会と部活動運営委員会を重ねて開催し、実証事業で成果と課題を洗い出してから種目を広げる段階設計でこのリスクを抑えています。また、人口5万人未満の市では総合型クラブや競技団体だけで全種目を覆えないため、兼職兼業教員や退職教員を活用する「学校主導パターン」も含めた複線設計が現実的です。導入時は小諸市のように種目×受け皿の対応表を先に作り、空白種目を可視化することから始めるとよいでしょう。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

計画は国・県ガイドラインへの準拠を明示し、地域クラブに規約・運営方針の策定と年間活動計画・収支・活動実績の公表を求めており、透明性の枠組みは整っています。財源は参加者の会費負担を原則としつつ困窮家庭への支援を検討するとしていますが、会費水準と市費投入の規模は今後の検討事項であり、市教委直営から自立運営への移行時期とあわせて持続可能性の焦点となります。4者アンケートで負担・期待のデータを公開した合意形成の丁寧さは評価できます。

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