トップ 事例を探す 茨城県 【事例】茨城県利根町の部活動地域展開 ─ 全12部活動を月2回「すぽかるとね」へ一斉移行・平日と違う種目も選べる自由設計と大学生指導者の活用
全種目 👥 1~5万人 🏫 中規模校(150〜300人) 📍 茨城県

【事例】茨城県利根町の部活動地域展開 ─ 全12部活動を月2回「すぽかるとね」へ一斉移行・平日と違う種目も選べる自由設計と大学生指導者の活用

公開:2026.08.23 更新:2026.08.23
この記事でわかること

・中学1校の利根町が全12部活動を月2回の「すぽかるとね」へ一斉移行した設計と運営フロー
・平日と違う種目も選べる自由設計と日本ウェルネススポーツ大学の学生指導者派遣の仕組み
・教員75%が兼職兼業を希望しない現実を踏まえた、教員に依存しない指導体制の作り方

自治体名 茨城県北相馬郡利根町
人口規模 約1.5万人(令和6年度成果報告書時点:15,470人)
中学校数 1校(利根中学校・全生徒281人、12部活動〔運動部10・文化部2〕)
運営形態 行政直営(地域クラブ「すぽかるとね」を町教育委員会・とねワイワイくらぶが事務局として運営)
対象競技 野球、サッカー、卓球、剣道、バスケットボール(男女)、バレーボール、バドミントン(男女)、ソフトテニス(男女)、身体つくり(基礎トレーニング・新設)
保護者負担額 参加会費0円(スポーツ安全保険に加入)

取り組みの概要

利根町は茨城県の最南端に位置し、人口減少・少子化により平成19年に2校あった公立中学校は統合され、現在は利根中学校1校のみです。生徒数281人で12の部活動が活動していますが、部活動によっては試合ができる最小限の人数で活動している状況でした。町はスポーツ庁「地域スポーツクラブ活動体制整備事業」(茨城県実証事業)を活用し、令和6年7月から地域クラブ「すぽかるとね」の活動を開始。特徴は、一部の種目の先行移行ではなく、すべての部活動を月2回の頻度で一斉に地域クラブへ移行した点と、部活動と同じ種目の数だけクラブを展開したうえで「平日の部活動と違う種目に参加する」ことも「同じ種目のクラブに入る」こともできる自由性の高い設計にした点です。活動しない土日は普段の部活動として実施しています。

特徴的な取り組み

  • 全部活動の一斉移行と「選べる」設計: 部活動を地域移行した11クラブに新設の身体つくりクラブ(基礎トレーニング)を加えた12クラブを展開。クラブへの加入から参加種目まで生徒が考えて選ぶ仕組みで、「スポーツを体験する・楽しむ」ことを目標に掲げています。普段は野球部の生徒が休日はバドミントンに参加するといった種目越境が制度上可能です。
  • 日本ウェルネススポーツ大学との連携: 剣道クラブの指導は日本ウェルネススポーツ大学の学生が担当し、大学が学生の派遣・管理を実施。「地域と大学が一緒に子どもたちを育てる」体制を作りました。指導者13人は地域の経験者・有識者・兼職兼業職員・大学生で構成されています。
  • 町内施設を総動員した会場配置: 利根中学校(グラウンド・多目的室・武道場・庭球場)に加え、利根小学校・旧文小学校・旧文間小学校の体育館まで活用し、12クラブの活動場所を確保。移動手段は自転車が中心です。
  • 謝金は単位制・活動報告とセットの運営: 事務局(教育委員会・とねワイワイくらぶ)が休日指導者を派遣し、活動報告と引き換えに単位ベースで謝金を支払う運営フローを整備。統括責任者1名・主任指導者(野球2名、卓球・剣道各1名)・運営補助者3名(施設管理・運営補助)の役割分担も明確です。
  • 次年度に向けた早めの説明会: 生徒・保護者説明会(令和6年6月)に加え、令和7年1月に次年度中学生向け、2月に小学生児童・保護者向けの説明会を開催し、進学前の家庭への周知を先行させています。

課題と解決策

課題 解決策
教員アンケートで75%が兼職兼業を「希望しない」と回答し、教員に依存しない指導体制が必要 地域の経験者・有識者・スポーツ協会・スポーツ少年団・地域人材・大学生から休日指導者を選出する仕組みを検討委員会で構築。兼職兼業職員は希望者のみ(サッカー・卓球・吹奏楽で各8.3%)
競技志向の強い生徒はクラブチームに加入するなど部活動参加生徒の減少が見込まれる 生徒数に応じた部活動数の精選を含む部活動改革を推進する方針を明記
新設の身体つくりクラブに参加者がいなかった バドミントンクラブと合同で活動する形に切り替えて運営を継続

成果・効果

令和6年7月から令和7年2月まで、12クラブが月2回・土日午前(8時30分〜11時30分)に活動し、野球12人・卓球10人・バレーボール10人・女子バドミントン12人・女子ソフトテニス9人など各クラブに生徒が参加しました。すべての部活動を対象にしたことで「自分の部活動が移行対象かどうか」という不公平感がなく、生徒がクラブ加入も参加種目も自分で考えて選ぶ自由性の高い地域クラブになったこと、大学生指導者の参画により地域と大学が一緒に子どもたちを育てる関係ができたことが成果として報告されています。検討委員会は年4回開催され、令和7年2月に令和6年度の活動を終了。次年度に向けた説明会も実施済みです。

出典

→ 原文: 令和6年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書(茨城県利根町)(茨城県教育委員会掲載・PDF)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

利根町の設計思想は「頻度を抑えて全種目を一斉に」という点で独特です。多くの自治体が特定種目の先行移行を選ぶなか、月2回という低頻度に抑えることで、指導者13人・会費0円のまま12クラブすべての一斉展開を成立させました。移行対象になった部とならなかった部の間に生じがちな不公平感が構造的に発生しないのがこの方式の強みです。さらに「平日と違う種目を選んでよい」というルールは、地域クラブを部活動の延長ではなく複数種目に触れる機会として再定義するもので、勝利志向ではなく「体験する・楽しむ」を目標に置いた小規模町ならではの割り切りが一貫しています。中学1校の町村が最初の一歩を設計する際、有力な選択肢になるモデルです。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

この方式の前提条件は「教員に頼らない指導者供給源」です。利根町では教員の75%が兼職兼業を希望しないという現実を直視し、大学(日本ウェルネススポーツ大学)との連携で学生指導者の派遣・管理を大学側に委ねる仕組みを作りました。近隣に体育系大学がない自治体では、スポーツ協会・スポーツ少年団・地域人材の洗い出しがより重要になります。また、月2回・大会参加なしという水準は競技志向の生徒には物足りず、利根町自身もクラブチーム流出と部活動参加者の減少を課題として明記しています。導入時は「体験・楽しむ層向けの受け皿」という位置付けを保護者に明確に伝え、競技志向層への経路(クラブチーム・拠点校等)を別途案内する二層の説明が必要です。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

検討委員会年4回、統括責任者・主任指導者・運営補助者の役割明文化、活動報告と単位制謝金をセットにした支払いフローと、月2回の運営規模に対して統制はしっかり作り込まれています。全部活動移行という建て付けにより制度の複雑さが少なく、住民への説明可能性も高い設計です。持続可能性の観点では、会費0円が実証事業財源に依存している点と、大学生指導者の卒業による入れ替わりが構造的なリスクであり、大学との連携を個人依存でなく協定ベースで固定できるかが鍵になります。新設クラブが参加者ゼロでも合同活動へ柔軟に切り替えた運営は、小規模ゆえの機動力として評価できます。

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