トップ 事例を探す 茨城県 【事例】茨城県美浦村の部活動地域展開 ─ 「競走馬の里」の資源を活かした美浦ホースクラブなど公認地域クラブ7つを新設・現役ジョッキーから学べる場に
全種目 👥 1~5万人 🏫 中規模校(150〜300人) 📍 茨城県

【事例】茨城県美浦村の部活動地域展開 ─ 「競走馬の里」の資源を活かした美浦ホースクラブなど公認地域クラブ7つを新設・現役ジョッキーから学べる場に

公開:2026.08.23 更新:2026.08.23
この記事でわかること

・「競走馬の里」美浦村がJRA関係者の協力を得て立ち上げた美浦ホースクラブの中身
・公認地域クラブ制度と施設使用料減免で7クラブを一斉新設した小規模村の制度設計
・応募者ゼロのクラブが3つ出た現実から学ぶ、新設種目の需要予測と広報の重要性

自治体名 茨城県美浦村
人口規模 約1.4万人(令和6年度成果報告書時点:14,121人)
中学校数 1校(全生徒274人・13部活動〔文化部含む〕)
運営形態 公認地域クラブ制度(実施主体はスポーツ少年団・スポーツ協会・文化協会・地域民間団体。事務局は美浦村部活動在り方検討委員会・村教育委員会)
対象競技 乗馬等、釣り、フリースケート、硬式野球、女子バレーボール、総合スポーツ、ゴルフ
保護者負担額 月会費2,000円〜5,000円+年会費3,000円(クラブにより異なる。令和6・7年度は公費で一部負担。別途スポーツ安全保険:生徒1人あたり年額800円)

取り組みの概要

美浦村は中学校1校・生徒274人の小規模自治体で、団体競技の軟式野球部はすでに近隣市の中学校との合同チームで活動しており、団体スポーツの将来的な存続は難しいと村自身が分析しています。令和5年12月に部活動地域移行方針が示され、村は既存部活動の移行に加えて「これまでの部活動にはなかった種目の新たなクラブ」を発足させ、生徒の選択肢を拡大する方針を採用。令和6年3月の部活動在り方検討委員会で「美浦村公認地域クラブ制度」の推進を決定し、認定要綱に基づく募集・認定を経て、令和6年8月から7つの公認地域クラブが活動を開始しました。特徴的なのは、JRA美浦トレーニング・センターが立地する「競走馬の里」ならではの美浦ホースクラブや、霞ヶ浦を活かした美浦フィッシングクラブなど、地域資源に根ざした独自クラブを立ち上げた点です。

特徴的な取り組み

  • 「競走馬の里」を活かした美浦ホースクラブ: JRA美浦トレーニング・センター運営の乗馬クラブとの連携を模索したものの新規受け入れが困難だったため、村内の乗馬施設と協議を重ね、乗馬に特化せず「馬との共生」をテーマとするクラブを設立。にんじんの栽培・収穫体験、馬具の学習、馬耕訓練まで行い、JRAの現役ジョッキー・装蹄師・獣医師など馬に関わるスペシャリストから普通の乗馬クラブでは学べないことを体験できます。小学生から大人まで約20名が毎週土曜日に活動し、最終的には競走馬産業に従事する人材の養成・産業活性化まで見据えています。
  • 霞ヶ浦を活かした美浦フィッシングクラブ: 霞ヶ浦湖岸を活動場所に、隔週土曜日に釣りを通じた青少年育成を実施。ホースクラブとともに、競走馬・釣りの業界からも高い評価を受けています。
  • 「学校部活動・地域クラブ・民間クラブ」の3分類を明文化: 公認地域クラブの位置付けを、費用負担・保険・指導者・指導資格の観点で学校部活動(負担小)と民間クラブチーム(月1万円程度)の中間(月2,000〜5,000円想定)と整理し、指導者は競技経験・指導経験を有し必要な研修を受けた地域人材と明確化しました。
  • 施設使用料の減免による運営支援: 村は認定クラブが円滑に運営できるよう、社会教育施設・体育施設の使用料を減免。地域おこし協力隊などの地域人材も活用しています。
  • 「公認地域クラブ通信」による広報と体験会導線: 生涯学習課がクラブ通信を発行し、文化系(ボランティア・吹奏楽・木原囃子・コーラス)を含む各クラブの代表者・活動内容・会費を一覧化。体験会・説明会の申し込みから正式入会までの流れを示し、首長部局の総務課が地域住民への広報を担当する分担です。

課題と解決策

課題 解決策
部活動は学校教育の一環という考えが生徒・保護者・地域に根付いており、教育課程以外の活動であることの認識醸成が必要 公認地域クラブの位置付け表で学校部活動との目的・費用・指導者の違いを明文化し、クラブ通信や説明会で周知
小規模自治体のため、行政・学校・地域を調整するコーディネーターやクラブ指導者の掘り起こし・確保が大きな課題 検討委員会事務局に地域コーディネーターを配置し、会計管理・連絡体制・指導者のコンプライアンス研修・学校との連絡調整を集約。令和6年11月に指導者安全管理講習会を実施
女子バレーボール・ゴルフ・総合スポーツの3クラブは応募者なしで活動実績ゼロ 体験会・説明会の導線整備とクラブ通信での継続的な広報により参加を促進。ホースクラブは問い合わせが多く今後の増加を見込む

成果・効果

公認地域クラブ7つのうち4クラブが活動を開始し、部活動を移行した形のクラブ1つに加え、部活動にはない種目のクラブ6つを新設するという「選択肢の拡大」型の地域展開が形になりました。中学生の加入は現時点で4名と少ないものの、小学生を含めるとホースクラブ12名・フィッシングクラブ10名・フリースケートクラブ10名・硬式野球クラブ5名が参加しています。参加中学生からは「美浦村に住んでいるが、馬に触れ合う場所がなかった。現役の騎手などから学ぶことができるので入会して良かった。高校に入学しても続けていこうと思います」という感想が寄せられており、学齢を超えて続けられる受け皿としての価値も見え始めています。特色ある取り組みとして競走馬・釣りの業界からも高い評価を受けていると報告されています。

出典

→ 原文: 令和6年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書(茨城県美浦村)(茨城県教育委員会掲載・PDF)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

美浦村の事例は、地域展開を「部活動の代替」ではなく「その土地でしかできない体験の創出」として設計した希少な例です。競走馬の里という固有資源を、JRAの乗馬クラブ連携が不調に終わった後も諦めず、村内乗馬施設との協議で「馬との共生」というテーマに昇華させた粘り強さが光ります。現役ジョッキーや装蹄師・獣医師から学べる場は都市部でも用意できない教育資源であり、中学生の感想にある「高校に入学しても続けたい」という言葉は、学校の枠と学齢の枠を同時に超える地域クラブの本質的な価値を示しています。生徒274人の村が7クラブを一斉に立ち上げた背景には、施設使用料減免という村ならではの軽量な支援策があることも見逃せません。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

率直に言えば、7クラブ中3クラブが応募者ゼロという結果は、新設クラブの需要予測の難しさを物語っています。地域資源特化型(馬・釣り)は反響を得た一方、既存部活と重なる女子バレーや、総合スポーツ・ゴルフは生徒に選ばれませんでした。導入時は「地域にしかないもの」から優先的にクラブ化し、既存部活動と競合する種目は生徒・保護者の需要調査を先行させるべきです。また、月2,000〜5,000円+年会費という受益者負担は現在公費で一部補填されており、令和8年度以降の公費縮小時に継続できるかが会員拡大とセットの課題になります。中学生加入4名という現状は、部活動=教育課程という意識の根強さの表れでもあり、入学説明会など学校経由の周知を強めることが有効です。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

検討委員会事務局への地域コーディネーター配置、会計管理・指導者コンプライアンス研修の集約、指導者安全管理講習会の実施と、村の規模に対して統制の枠組みは丁寧に作られています。教育委員会(生涯学習課・指導室)と総務課の役割分担も明文化されており、小規模自治体の見本になる体制です。持続可能性の面では、クラブの実施主体がスポーツ少年団・協会・地域民間団体に分散しているため行政負担は軽い一方、各クラブの会員数がまだ少なく、会費収入だけでの自立には遠い段階です。ホースクラブが競走馬産業の人材養成という産業政策と接続している点は、単なる部活動の受け皿を超えた長期的な存在意義として評価できます。

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