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【事例】山梨県北杜市の部活動地域展開 ─ 県内最大の市域で、中学校にないバドミントンを県協会・大学の指導者10人と新設

公開:2026.10.23 更新:2026.10.23
この記事でわかること

・中学校にないバドミントンを新しい地域クラブとして立ち上げた北杜市のモデル事業
・県競技団体・連携大学と組んで指導者10人・運営スタッフ5人を確保した方法
・県内最大の市域で会場を分散する工夫と、移動手段・指導者継続の課題

自治体名 山梨県北杜市
人口規模 約4万5千人(令和8年10月1日時点・44,530人)
中学校数 9校(令和7年度・生徒数1,071人)
運営形態 行政直営(北杜市教育委員会生涯学習課が推進。モデル事業は「北杜市中学校部活動地域移行協議会」と教育委員会事務局のコーディネーターが運営)
対象競技 バドミントン(令和7年度モデル事業・中学校に部活動がない種目)
保護者負担額 体験会の参加費1回200円+傷害保険料年200円(本格実施後の会費は調査時点で未公表)

取り組みの概要

山梨県北杜市は面積602.48km²と山梨県で最も広い市です。中学校の生徒数は平成15年度の約1,500人から令和7年度には1,071人に減り、令和10年度は約900人、令和16年度は約650人と推計されています。

市は令和5年度に中学校部活動の検討委員会で検討を始め、令和6年度に協議会の設置要綱を制定、令和7年度から「北杜市中学校部活動地域移行協議会」を開催しています。協議会の下にスポーツ専門部会と文化芸術専門部会を置き、令和7年4月には連絡調整役のコーディネーターを任用しました。

令和7年度のスポーツ庁実証事業では、市内の中学校に部活動として置かれていないバドミントンを新しい地域クラブとしてモデル化し、令和8年1月25日に高根体育館、2月1日に白州体育館で体験会を開催しました。市は令和8年度に最低1つ以上の地域クラブ活動の開始を目指しています。

特徴的な取り組み

  • 中学校にない種目を新規クラブとしてモデル化: バドミントンは市内の中学校に部活動がなく、体験しやすく児童生徒の希望が多いこと、指導者を派遣できることから選ばれました。既存の部を移すのではなく、新しい選択肢をつくる形のモデルです。
  • 県競技団体・大学と組んで指導者10人を確保: 山梨県バドミントン協会、市スポーツ協会バドミントン専門部、連携協定のある大学(日本体育大学、山梨学院大学ほか)と連携し、指導者10人・運営スタッフ5人の体制を組みました。
  • 広い市域に合わせて会場を2か所に分散: 高根体育館と白州体育館の2会場で、各日午前・午後の2回(各回定員24名)実施しました。対象は市内の小学5・6年生と中学生です。
  • 幅広い立場で構成するスポーツ専門部会: 市スポーツ協会役員、スポーツ推進委員、スポーツ少年団指導者、保護者代表、中学校の体育主任、青少年育成コーディネーター、指導者協議会役員で構成し、受け皿側と学校側の双方の意見を集めています。
  • コーディネーターによる連絡調整: 市教育委員会のコーディネーター1名が、全中学校の校長との情報交換、スポーツ団体や指導者との調整、会議資料の作成を担いました。参加者への連絡には「やまなしくらしネット」を試行的に使っています。
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課題と解決策

課題 解決策
市域が広く、移動が保護者の送迎頼みになる。アンケートでは保護者・指導者の双方から交通手段への不安が出た モデル事業では会場を2か所に分散。保護者からは送迎バスを望む声があり、移動手段は今後検討するとしている
体験会に協力した指導者に継続して指導してもらう仕組みがない 安定して指導者を確保できるよう、競技団体・大学などさまざまな団体との連携を進める。「スポカルやまなし」での募集も行ったが、マッチングには至らなかった
休日の地域クラブを続けるための財源と、持続可能な運営組織 認定制度の制定に向けて協議会で議論し、持続可能な組織体制の可能性を探る
中学校の再編計画(甲陵中学校を除く8校を2校に統合)が進行中で、教職員の兼職兼業の検討を進めにくい 兼職兼業についての協議を進め、考え方を早期に整理する方針

成果・効果

体験会に参加した児童・生徒の満足度は9割以上でした。休日の地域クラブ活動への参加意向は、児童生徒が「参加したい」62%・「どちらかといえば参加したい」32%、保護者が「参加させたい」35%・「どちらかといえば参加させたい」61%で、いずれも9割を超えています。

望む指導者像は、児童生徒の82%が「経験がある大人・大学生」と回答しました。保護者は「経験がある大人・大学生」47%、「資格をもった指導者」43%で、指導者の資格を重視する傾向が児童生徒より強く出ています。

出典

→ 原文: 令和7年度 地域スポーツクラブ活動への移行に向けた実証事業 山梨県北杜市(山梨県掲載・成果報告書)

→ 人口: 北杜市公式ホームページ

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域展開・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

北杜市のモデル事業は、既存の部活動を地域へ移すのではなく、中学校にない種目を新しく立ち上げた点に特徴があります。既存部の移行は顧問・保護者・競技団体の利害調整が重く、初年度から動かすのは簡単ではありません。新種目なら調整相手が少なく、生徒にとっては選択肢が増える形になるため、地域クラブの第一号として合意を得やすい入り方です。指導者を県の競技団体と連携大学から集め、10人という厚い体制を組めたことも、市単独では難しい人材確保の手本になります。アンケートで保護者の4割超が「資格をもった指導者」を望んでいる結果は、今後の認定制度で指導者要件をどう設計するかの判断材料になるはずです。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

広い市域を持つ自治体では、移動手段が最初に止まる論点になります。北杜市も会場を2か所に分けましたが、保護者の送迎頼みという構造は変わっていません。同じ条件の自治体は、会場分散と月1回程度の低頻度実施から始め、参加者の居住地の分布が見えた段階で送迎バスやデマンド交通の検討に入る順序が現実的です。また、体験会限りの協力で終わらせないためには、競技団体・大学との連携を単発の派遣依頼ではなく、年間の協定や謝金の基準として文書化しておく必要があります。中学校の統廃合と時期が重なる自治体では、統合後の学校配置を前提に拠点を決めないと、拠点選びをやり直すことになります。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

協議会と専門部会、コーディネーターによる推進体制は教育委員会内で整っており、検討の経過も実証報告書で追えます。一方で、令和8年度に始める地域クラブの運営主体・会費・認定基準は調査時点で示されていません。体験会の1回200円は実証段階の水準であり、本格実施時の受益者負担と財源の組み合わせが持続可能性を左右します。

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