【事例】岩手県一戸町の部活動地域展開 ─ 2校合同のなぎなた部を競技団体の単独指導へ・月250円で始める一点突破
・14部活のうち条件の揃った1部活だけを先行させる「土壌が整った部活動から」の段階戦略
・2校合同のなぎなた部を競技団体の単独指導に切り替え、顧問の同行をなくした運営の実際
・協議会設置と同年度に移行を始めたことで生じた、活動団体への説明不足という具体的なつまずき
| 自治体名 | 岩手県一戸町 |
|---|---|
| 人口規模 | 約1.1万人(11,015人) |
| 中学校数 | 2校(一戸中学校・奥中山中学校/生徒229人。令和6年度は212人) |
| 運営形態 | 競技団体運営型(一戸町なぎなた協会)/町教育委員会が事業主体 |
| 対象競技 | なぎなた(令和6年度実証は1種目のみ) |
| 保護者負担額 | 月会費250円(年額3,000円)+スポーツ安全保険800円 |
取り組みの概要
岩手県一戸町は、令和6年度にスポーツ庁「地域スポーツクラブ活動体制整備事業」の実証事業に取り組み、町内2中学校のなぎなた部に対象を絞って休日活動の地域展開を実施しました。町内14部活のうち、この1部活だけを先行させた形です。
同町の中学校は平成27年度の3校・306人から令和6年度には2校・212人まで減少しており、生徒数の減少に伴う部活動の休止や活動制限が生じています。一部の団体種目はすでに町内2校の合同チームとして活動していますが、報告書は「地理的要因により活動場所への移動に時間が割かれ、練習時間の確保が困難になってきている」と記しています。指導者不足も深刻で、一部に部活動指導員を配置しているものの解消には至っていません。
町は令和5年度に検討委員会を開催して課題を整理したうえで、令和6年度に「一戸町部活動地域移行にかかる運営協議会」を設置しました。協議会には一戸町体育協会・一戸町文化協会・一戸町スポーツ少年団・郷土芸能保存会・奥中山高原クラブ・一戸中学校・奥中山中学校が参加し、スポーツと文化の両分野を1つの協議会で扱う構成としています。そのうえで、なぎなた部の休日活動をこれまでの「学校部活動の延長で顧問も参加する」形から「一戸町なぎなた協会の指導のみで行う」形に切り替え、この1部活を通して他の部活動を含めた今後の進め方を検証することとしました。
特徴的な取り組み
- 「土壌が整った部活動から順番に」という明示的な段階戦略: 町は全部活動の一斉移行を目指さず、運営協議会で「制度活用による教職員の負担や地域の指導者確保を引き続き推し進めていき、土壌が整ったところから地域移行を始めていく」方針を決定しました。令和6年度の対象を1部活に絞ったのは、この方針に沿った意図的な選択です。
- 2校合同の部活動を競技団体が丸ごと引き受ける: 一戸中学校・奥中山中学校それぞれのなぎなた部が、休日は一戸町武道場で2校合同の1クラブとして活動します。指導は町なぎなた協会の協会員3名が単独で担当し、顧問は同行しません。報告書は「休日の活動を協会員の指導のみで行ったが、特段支障が出ることなく活動に取り組んでいた」と評価しています。
- 月250円という低額の会費設定: 参加費は月会費250円(年額3,000円)で、これに1人あたり年800円のスポーツ安全保険が加わります。週1回・8時30分から12時の活動で、1年生10人・2年生3人・3年生7人の計20人が参加しました。
- スポーツと文化を1つの協議会で扱う: 運営協議会は体育協会と文化協会、さらに郷土芸能保存会まで含む共同の構成です。文化部の地域展開を別会議に切り出さず、同じテーブルで検討する設計になっています。
- 町独自の大会を地域クラブが担う: 実証期間中に「一戸町長杯」「一戸町秋季大会」が開催されており、地域クラブとしての活動が町の大会運営と接続しています。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 生徒数減少で部活動の休止や活動制限が生じ、団体種目は2校合同でないと成立しない | 休日は2校のなぎなた部を1クラブに統合して町武道場で合同活動とし、指導を町なぎなた協会に一本化した |
| 運営協議会の設置から間もなく移行を始めたため、活動団体への説明やサポートが不十分になった | 活動報告をはじめ組織間の連携に不備が生じ、団体の指導者に負担をかけたことを報告書に明記。運営協議会の方針とあわせて年度当初に改めて説明する方針とした |
| 自己都合で謝金を受け取らない指導者がおり、一部で計画変更が必要になった | 謝金の対象となる活動の精査が必要と判断し、次年度の運営開始にあたり活動団体へ詳細を示すこととした |
| 教育委員会が主体のため継続性は担保される一方、一部の組織に人的労力が集中している | 体制の再整備を要すると総括に明記し、各学校や関係団体の理解・協力を得るため運営協議会で改めて方針を示すこととした |
| 会費・保険料の負担を将来どう配分するかが未定 | 持続可能な地域クラブ運営とするため、会費や保険料の将来的な負担について検討を行うとともに、運営に関する町の財源確保に努める方針を示した |
成果・効果
令和6年度は4月6日から2月25日まで、月4回程度・週1回のペースで地域クラブ活動が継続されました。参加生徒は20人で、指導者は公務員・学校講師を本業とする3名です。統括責任者兼主任指導者2名が、稽古指導のほか活動場所の確保・調整、生徒の出席確認、入会や保険加入の事務手続き、用具・備品の準備、施設の施錠まで担っています。
町は総括で「運営協議会の設置から間もなく地域移行を進めていくこととなったため、全てが手探りの状態で事業開始に手間取り、当初は活動団体に対する説明やサポートが不十分な面も多かった。年度途中で計画を変更することもあったが、概ね年間を通した運営の形は見えてきたと考える」と評価しました。成果の評価としては「指導者の確保については謝金支払等により、また、場所の確保も関係者の連携により活動に支障がない水準で保てた」としています。
令和7年度は引き続きなぎなた部の休日地域クラブ活動を実施しつつ、地域指導者を対象とした指導者研修会を開き、他の部活動の指導者へ将来的な地域展開について説明する計画です。部活動指導員を配置している部活動については、運営協議会で移行方針を決定していくとしています。令和8年度以降に地域クラブ活動を拡大するロードマップが示されており、並行して推進計画・ガイドラインの策定と実態調査を進める予定です。
出典
CONSULTING / 専門家に相談
受け皿団体の組織整備・経営について
専門家に相談しませんか?
設立手続きの進め方・行政との調整・資金計画など、
総合型地域スポーツクラブ特化のコンサルティングをご提供しています。