トップ 事例を探す 岩手県 【事例】岩手県一戸町の部活動地域展開 ─ 2校合同のなぎなた部を競技団体の単独指導へ・月250円で始める一点突破
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【事例】岩手県一戸町の部活動地域展開 ─ 2校合同のなぎなた部を競技団体の単独指導へ・月250円で始める一点突破

公開:2026.09.17 更新:2026.09.17
この記事でわかること

・14部活のうち条件の揃った1部活だけを先行させる「土壌が整った部活動から」の段階戦略
・2校合同のなぎなた部を競技団体の単独指導に切り替え、顧問の同行をなくした運営の実際
・協議会設置と同年度に移行を始めたことで生じた、活動団体への説明不足という具体的なつまずき

自治体名 岩手県一戸町
人口規模 約1.1万人(11,015人)
中学校数 2校(一戸中学校・奥中山中学校/生徒229人。令和6年度は212人)
運営形態 競技団体運営型(一戸町なぎなた協会)/町教育委員会が事業主体
対象競技 なぎなた(令和6年度実証は1種目のみ)
保護者負担額 月会費250円(年額3,000円)+スポーツ安全保険800円

取り組みの概要

岩手県一戸町は、令和6年度にスポーツ庁「地域スポーツクラブ活動体制整備事業」の実証事業に取り組み、町内2中学校のなぎなた部に対象を絞って休日活動の地域展開を実施しました。町内14部活のうち、この1部活だけを先行させた形です。

同町の中学校は平成27年度の3校・306人から令和6年度には2校・212人まで減少しており、生徒数の減少に伴う部活動の休止や活動制限が生じています。一部の団体種目はすでに町内2校の合同チームとして活動していますが、報告書は「地理的要因により活動場所への移動に時間が割かれ、練習時間の確保が困難になってきている」と記しています。指導者不足も深刻で、一部に部活動指導員を配置しているものの解消には至っていません。

町は令和5年度に検討委員会を開催して課題を整理したうえで、令和6年度に「一戸町部活動地域移行にかかる運営協議会」を設置しました。協議会には一戸町体育協会・一戸町文化協会・一戸町スポーツ少年団・郷土芸能保存会・奥中山高原クラブ・一戸中学校・奥中山中学校が参加し、スポーツと文化の両分野を1つの協議会で扱う構成としています。そのうえで、なぎなた部の休日活動をこれまでの「学校部活動の延長で顧問も参加する」形から「一戸町なぎなた協会の指導のみで行う」形に切り替え、この1部活を通して他の部活動を含めた今後の進め方を検証することとしました。

特徴的な取り組み

  • 「土壌が整った部活動から順番に」という明示的な段階戦略: 町は全部活動の一斉移行を目指さず、運営協議会で「制度活用による教職員の負担や地域の指導者確保を引き続き推し進めていき、土壌が整ったところから地域移行を始めていく」方針を決定しました。令和6年度の対象を1部活に絞ったのは、この方針に沿った意図的な選択です。
  • 2校合同の部活動を競技団体が丸ごと引き受ける: 一戸中学校・奥中山中学校それぞれのなぎなた部が、休日は一戸町武道場で2校合同の1クラブとして活動します。指導は町なぎなた協会の協会員3名が単独で担当し、顧問は同行しません。報告書は「休日の活動を協会員の指導のみで行ったが、特段支障が出ることなく活動に取り組んでいた」と評価しています。
  • 月250円という低額の会費設定: 参加費は月会費250円(年額3,000円)で、これに1人あたり年800円のスポーツ安全保険が加わります。週1回・8時30分から12時の活動で、1年生10人・2年生3人・3年生7人の計20人が参加しました。
  • スポーツと文化を1つの協議会で扱う: 運営協議会は体育協会と文化協会、さらに郷土芸能保存会まで含む共同の構成です。文化部の地域展開を別会議に切り出さず、同じテーブルで検討する設計になっています。
  • 町独自の大会を地域クラブが担う: 実証期間中に「一戸町長杯」「一戸町秋季大会」が開催されており、地域クラブとしての活動が町の大会運営と接続しています。
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課題と解決策

課題 解決策
生徒数減少で部活動の休止や活動制限が生じ、団体種目は2校合同でないと成立しない 休日は2校のなぎなた部を1クラブに統合して町武道場で合同活動とし、指導を町なぎなた協会に一本化した
運営協議会の設置から間もなく移行を始めたため、活動団体への説明やサポートが不十分になった 活動報告をはじめ組織間の連携に不備が生じ、団体の指導者に負担をかけたことを報告書に明記。運営協議会の方針とあわせて年度当初に改めて説明する方針とした
自己都合で謝金を受け取らない指導者がおり、一部で計画変更が必要になった 謝金の対象となる活動の精査が必要と判断し、次年度の運営開始にあたり活動団体へ詳細を示すこととした
教育委員会が主体のため継続性は担保される一方、一部の組織に人的労力が集中している 体制の再整備を要すると総括に明記し、各学校や関係団体の理解・協力を得るため運営協議会で改めて方針を示すこととした
会費・保険料の負担を将来どう配分するかが未定 持続可能な地域クラブ運営とするため、会費や保険料の将来的な負担について検討を行うとともに、運営に関する町の財源確保に努める方針を示した

成果・効果

令和6年度は4月6日から2月25日まで、月4回程度・週1回のペースで地域クラブ活動が継続されました。参加生徒は20人で、指導者は公務員・学校講師を本業とする3名です。統括責任者兼主任指導者2名が、稽古指導のほか活動場所の確保・調整、生徒の出席確認、入会や保険加入の事務手続き、用具・備品の準備、施設の施錠まで担っています。

町は総括で「運営協議会の設置から間もなく地域移行を進めていくこととなったため、全てが手探りの状態で事業開始に手間取り、当初は活動団体に対する説明やサポートが不十分な面も多かった。年度途中で計画を変更することもあったが、概ね年間を通した運営の形は見えてきたと考える」と評価しました。成果の評価としては「指導者の確保については謝金支払等により、また、場所の確保も関係者の連携により活動に支障がない水準で保てた」としています。

令和7年度は引き続きなぎなた部の休日地域クラブ活動を実施しつつ、地域指導者を対象とした指導者研修会を開き、他の部活動の指導者へ将来的な地域展開について説明する計画です。部活動指導員を配置している部活動については、運営協議会で移行方針を決定していくとしています。令和8年度以降に地域クラブ活動を拡大するロードマップが示されており、並行して推進計画・ガイドラインの策定と実態調査を進める予定です。

出典

→ 原文: スポーツ庁「令和6年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書 岩手県一戸町」

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

一戸町は14部活のうち1部活だけを動かしました。数字だけ見れば進捗7%ですが、この選び方には理屈があります。なぎなたは町に協会があり、2校とも部があり、休日の大会・遠征が比較的少ない種目です。つまり「指導者がいる・生徒がいる・引率の壁が低い」という3条件が最初から揃っていた。町はこれを「土壌が整ったところから」と表現しています。全種目を同時に動かそうとして全部が半端になるより、条件の揃った1種目で運営・会費・保険・謝金の型を完成させ、それを他種目に配る方が早い。小規模自治体が現実的に取れる戦略として参考になります。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

一戸町が実際につまずいたのは運営そのものではなく、協議会から活動団体への説明でした。報告書は「実証事業に関する説明が不十分だったため、活動報告はじめ組織間の連携に不備が生じ、団体の指導者に負担をかけた」と明記しています。協議会を設置した年度にそのまま移行を始めると、団体側は月報の様式も謝金の対象範囲も分からないまま現場を回すことになります。移行1年目は、活動開始前に「何をいつ誰に報告するか」「謝金の対象になる活動は何か」を1枚の様式にして団体へ渡しておくだけで、この種の摩擦はかなり防げます。また同町では自己都合で謝金を受け取らない指導者が出て計画変更が必要になりました。善意で辞退されると予算の執行率が崩れるため、謝金を受け取らない選択がある前提で予算を組んでおくのが実務的です。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

教育委員会が事業主体を担っているため継続性は担保されていますが、町自身が「一部の組織に人的労力が集中しており、体制の再整備を要する」と認めています。指導者3名のうち統括責任者兼主任指導者2名が指導・場所調整・出席確認・事務手続き・施錠まで抱えている構造は、この2名が抜けた瞬間に止まります。月250円という会費は参加のハードルを下げる一方、運営費を賄う水準ではありません。町は会費・保険料の将来的な負担配分と町の財源確保を今後の検討事項としており、拡大フェーズに入る前にここを決められるかが持続性の鍵です。

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