【事例】和歌山県紀美野町の部活動地域展開 ─ 月500円の会費に対し実費は月5,555円・30人集めても2,000円超と試算し多世代クラブ化を模索
・実費を割り戻した受益者負担額 月5,555円と現行会費500円の10倍ギャップの内訳
・申込者10人・20人・30人別の試算から「多世代クラブ化」を導いた判断プロセス
・和歌山大学・近畿大学と連携した大学生指導者の確保方法とその限界
| 自治体名 | 和歌山県紀美野町 |
|---|---|
| 人口規模 | 約7,667人(令和6年11月末時点) |
| 中学校数 | 2校(全生徒143人・部活動10部/令和6年度末に統合予定) |
| 運営形態 | 紀美野町教育課内に設置した任意団体「きみのスポーツクラブ」 |
| 対象競技 | 男子バスケットボール(1クラブ) |
| 保護者負担額 | 月500円(学校部活動の部費と同額・年6,000円/令和6年度は10月開始のため3,000円)+スポーツ安全保険 年800円 |
取り組みの概要
紀美野町は人口約7,667人の町で、中学校の運動部活動は軟式野球・男子バスケットボール・陸上競技・ソフトテニス・水泳・駅伝の6つです。少子化でサッカー部・女子バスケットボール部・女子バレー部などが既に廃部となり、年度によっては軟式野球や男子バスケットボールが他校との合同チームで活動する状況で、町は「昨今の出生者数を見ると団体スポーツの将来的な存続は難しい」と判断しています。令和6年6月に教育課内で意見交換を始め、9月に任意団体「きみのスポーツクラブ」を教育課内に設立。専門的な指導者が不在だった野上中学校の男子バスケットボール部を対象に、令和6年10月から地域クラブ活動へ移行しました。参加は1年生5人・2年生7人の計12人、月5回程度の活動です。
特徴的な取り組み
- 受益者負担額の徹底した試算と公表: この事例の最大の価値です。町は実証の実績から「持続的な運営に必要な受益者負担額」を算出し、スポーツ活動費399,980円 ÷ 6か月 ÷ 申込者12人 = 月あたり約5,555円という数字を出しました。これは実際に徴収している月500円の10倍以上にあたり、町は「今年度の活動形態では将来運営が難しいと分かった」と明記しています。
- 申込者数別のシミュレーション: 12か月通年で実施した場合のスポーツ活動費806,980円をもとに、申込者10人なら月6,724円、20人なら月3,362円、30人なら月2,241円と試算。30人集めても現行の部費500円を大きく上回るため、町は「学生から大人まで、幅広く参加できるクラブを運営していく必要がある」という結論に至りました。中学生クラブから多世代クラブへの転換という解が、数字から導かれています。
- 大学2校と連携した大学生指導者の確保: 地域在住のバスケットボール経験者(保護者)2名に加え、和歌山大学・近畿大学に学生派遣を依頼して大学生指導者2名を確保しました。生徒からは「大学生の指導者は自分達と年齢が近く、わからないことを気軽に聞くことができた」という声が上がり、学生側も「将来教員現場に出る時に生かせる学びが得られた」と評価しています。
- オン・ザ・ジョブ・トレーニングによる指導者育成: 指導経験の少ない指導者が経験豊富な指導者とともに現場で学ぶ方式を実施。「生徒にどのような声をかければよいか参考になった」「複数の指導者がいる場合の役割分担などがわかった」という受講者の声が得られています。
- 平日移行とスクールバス接続の設計: 休日だけでなく平日の一部も地域クラブ活動へ移行し、活動場所を野上中学校体育館に、終了時刻を学校部活動と同じに揃えることで、参加後もスクールバスで帰宅できる形を用意しました(令和6年度の利用者は0人)。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 受益者負担だけでは運営費を賄えず、全額転嫁すると保護者の理解が得られない | 低廉な受益者負担を維持しつつ、企業協賛や行政支援を組み合わせる。参加者層を中学生から多世代へ広げて負担を分散する |
| 大学生指導者は卒業のタイミングで継続できない可能性がある | 大学側との連携強化を図り、安定した指導者供給の仕組みを検討 |
| 統括コーディネーターが未設置で、事務局運営を教育課職員が分担している | コーディネート業務を担うシステムの構築と人材発掘を進め、事務局運営体制を見直す |
| 土日の学校施設利用で教職員の支援を借りている | 学校教職員に頼らない学校施設利用システムを構築し、地域クラブ側の備品も充実させる |
| 町単独では持続的な活動が難しい | 隣接市町との合同での地域展開を連携しながら検討 |
成果・効果
町は成果を2点に整理しています。1つは生徒・教員のニーズに応じた指導が実現したこと。生徒の「大会で良い成績を収めたい」「自分たちで練習を組み立てながら楽しく取り組みたい」という思いと、教職員の「専門性がないので指導に不安がある」という状況に対し、平日は生徒中心の練習、休日は練習試合を複数回設定する運営で応えました。もう1つは指導者4名の確保です。教職員からは「専門的な技術指導を行える教員がいなかったが、生徒が専門的な指導を受けられるようになった」「指導に対する負担が減った」という評価に加え、「地域クラブ指導者と部活動顧問が連携・情報交換することで、学校部活動の時間の質も上がった」という波及効果も報告されました。一方で生徒からは「放課後があまり見てもらえなかったのが残念」「この先、地域クラブ活動になり他の場所に行かないといけなくなるのならいやだ」という率直な声も記録されており、町はこれらを踏まえて令和7年度に協議会を設置し、野球部・テニス部・陸上部等への拡大を進める方針です。なお、町の協議会・検討会議および推進計画・ガイドラインはいずれも令和6年度時点で未整備です。
出典
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