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全種目 👥 1~5万人 🏫 小規模校(〜150人) 📍 和歌山県

【事例】和歌山県かつらぎ町の部活動地域展開 ─ 生徒の要望から陸上の「妙寺クラブ」を新設し、県境をまたぐ4市町合同「ブルッフラ」を町が認定

公開:2026.09.03 更新:2026.09.03
この記事でわかること

・陸上部がない中学校で生徒3名の要望から地域指導者100%の「妙寺クラブ」を新設した経緯と成績
・県境をまたぐ4市町合同バレーボール「ブルッフラ」を町が地域部活動として認定した広域連携の進め方
・近隣校の反発に対し教育長自ら他市町を訪問して合意を得た調整過程と、部費・送迎の残る課題

自治体名 和歌山県伊都郡かつらぎ町
人口規模 約1.6万人(令和5年12月末:15,625人)。面積151.69平方キロメートル、町域は東西14.7キロメートル・南北29.3キロメートル
中学校数 2校(笠田中学校・妙寺中学校)。小学校5校を含む全児童生徒数は1,029人(令和5年5月1日現在)
運営形態 総合型地域スポーツクラブ運営型。運営主体はNPO法人憩楽クラブかつらぎで、かつらぎ町が業務委託。町首長部局が事業設計・予算措置、町教育委員会教育総務課が事業立案・コーディネーター配置・連絡調整を担い、指導者派遣は憩楽クラブかつらぎとバレーボール協会伊都支部が行う
対象競技 陸上・卓球・バレーボール(拠点校2校・計4部活)
保護者負担額 参加会費は陸上・卓球・バレーボールとも0円。別途スポーツ安全保険料が生徒1人あたり年800円(指導者は年1,850円および1,200円)。ただしバレーボールチーム「ブルッフラ」は部費が月500円

取り組みの概要

和歌山県かつらぎ町教育委員会は、急速な少子化で学校ごとのチーム編成が困難になったこと、競技経験の少ない教師による指導や休日・時間外指導が働き方改革の観点から限界にあること、地域スポーツ団体・保護者と学校の連携が不十分であることを課題として挙げています。

同町は令和3・4年度に「地域部活動推進事業」として和歌山県内で先行して取り組み、令和4年度には部活動の地域展開に係る推進協議会を設置しました。その経験を活かし、令和5年度は和歌山県から再委託を受ける形でスポーツ庁の実証事業を実施しています。

実証では町立2中学校の4部活(陸上・卓球・バレーボール)で地域人材による指導を行いました。運営団体となる総合型地域スポーツクラブやスポーツ少年団等に協力を要請し、地域のスポーツ指導員や退職教員等を指導者として確保する段階的な体制整備を進めています。

特徴的なのは、生徒の要望を起点に新たな部を地域クラブとして立ち上げた「妙寺クラブ」と、県境をまたぐ4市町の生徒が集まるバレーボールチーム「ブルッフラ」を町の地域部活動として認定した点です。

特徴的な取り組み

  • 生徒の要望を起点に、存在しなかった部を地域クラブとして新設した「妙寺クラブ」: 陸上部がなかった妙寺中学校で、市町村駅伝に出場した新1年生3名から「新たに陸上部を作ってほしい」「陸上を続けたい」との申し出があり、地域の指導者が100%指導する「妙寺クラブ」を設立しました。土曜または日曜は地域指導者の指導で笠田中学校にて合同練習を行い、火曜と木曜は学校近くのかつらぎ公園で練習しています。
  • 中体連登録の期限切れに二重運用で対応: 中体連の地域クラブ登録期限を過ぎていたため、令和5年度は校長が仮のクラブ顧問となり「妙寺中学校」として中体連へ登録しました。協会等主催の記録会には「妙寺クラブ」、中体連大会には「妙寺中学校」として出場するという運用です。令和6年度からは「妙寺クラブ」として地域クラブ登録を行う予定とされています。
  • 県境をまたぐ4市町合同のバレーボールチーム「ブルッフラ」を町が認定: 令和3年、妙寺中学校教頭がバレーボール部のない近隣市町の中学生とかつらぎ町内の中学生に呼びかけてチームを設立しました。部員はかつらぎ町10名、橋本市7名、九度山町2名、奈良県五條市1名という構成で、令和5年10月にかつらぎ町の地域部活動として認定されています。練習は週4回程度、午後7時ごろからです。
  • 教育長が自ら近隣市町を訪問して合意を取り付けた: 「ブルッフラ」の認定にあたっては、近隣市町の中学校顧問・校長から「選手を取られる」「自校のクラブが潰れる」との声が上がりました。これに対し教育長が自ら近隣市町の教育長を訪問して理解を求め、快諾を得ています。奈良県五條市立西中学校の教諭を町の指導者として派遣することについても、五條市と当該校から協力を得ました。
  • 休日だけでなく平日にも地域指導者を配置: 陸上は火曜日と木曜日、卓球は水曜日に、休日に加えて平日も地域指導者が指導を実施しました。報告書はこれを「大きな成果」と記載しています。月あたり平均活動回数は陸上が月12回程度、卓球が月8回程度、バレーボールが月4回程度です。
  • 指導者は地域人材と教員の兼職兼業を組み合わせる: 笠田中学校の卓球では地域指導者1名と教員の兼業兼職2名、笠田中学校の陸上では教員の兼業兼職2名、笠田中学校・妙寺中学校の陸上に地域指導者1名という配置です。妙寺クラブの指導者は66歳で順天堂大学出身、短距離・跳躍選手として実績があり、町内中学校の陸上部や市町村駅伝代表チームを指導した経歴を持ちます。

課題と解決策

課題 解決策
近隣市町の中学校顧問・校長から「選手を取られる」「自校のクラブが潰れる」との声が上がった 丁寧な説明で理解を得ることとし、実際に教育長が自ら近隣市町の教育長を訪問して理解を求め快諾を得た。選手が複数市町に在住するため、今後も市町間の密な情報交換と連携を続ける
バレーボールチーム「ブルッフラ」の部費が月500円と低く、持続可能性の点で課題がある 報告書は「値上げが必要である」と明記。また練習が夜間のため送迎は基本的に保護者が担うが、保護者が送迎できない場合の手段の確保を課題として挙げている
バレーボール部がない中学校の生徒が、小学校から続けてきた競技を中学で断念せざるを得ない 近隣市町の中学生とかつらぎ町内の中学生に呼びかけて合同チームを設立し、町の地域部活動として認定することで、競技を続ける機会と大会参加の機会を確保する
中体連の地域クラブ登録期限を過ぎており、新設クラブとして大会に出られない 校長が仮のクラブ顧問となって学校名義で中体連へ登録し、協会主催の記録会にはクラブ名、中体連大会には学校名で出場する二重運用で当年度をしのぎ、翌年度から地域クラブとして正式登録する
教員によって地域展開への意識に差があり、制度に後ろ向きな層がいる アンケートで意識の分布を把握したうえで、繰り返し説明を行いながら事業を進める

成果・効果

妙寺クラブ(陸上)は伊都地方新人大会で優勝3名・準優勝1名、県新人大会800mで4位という成績を収めました。生徒の要望から立ち上げた地域クラブが、1年目から競技成績に結びついた形です。

「ブルッフラ」については、小学校から続けてきたにも関わらず中学校にバレーボール部がないため活動を止めざるを得なかった生徒に、引き続き競技に親しむ機会や大会への参加の機会を提供できたと報告されています。小学生が多数入部して底辺の拡大につながったこと、他の市町の生徒間の交流という広域的な取り組みが実現したことも成果に挙げられています。

指導実績は4月から2月までで個別に集計されており、笠田中学校の卓球が51回・150時間および17回・70時間、笠田中学校の陸上が39回・145時間、ブルッフラが56回・149時間および19回・59時間などとなっています。生徒からは「地域の指導者より専門的な指導を受けることができる」と好評であったとされています。

和歌山県全体では、中体連主催大会への参加を希望して認定を受けた団体が令和5年度の27団体から、令和6年度に向けた申請では38団体(令和6年2月現在)に増加しました。かつらぎ町は令和6年1月23日の県主催講演会で事例発表を行っています。

出典

→ 原文: 【和歌山県】令和5年度地域スポーツクラブ活動体制整備事業(運動部活動の地域移行に向けた実証事業)成果報告書/スポーツ庁(PDF・かつらぎ町の項)

→ 原文: 部活動の地域連携・地域移行/和歌山県教育委員会

→ 原文: かつらぎ町公式ホームページ

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域展開・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

かつらぎ町の事例には、地域展開の議論で見落とされがちな視点が2つ含まれています。1つは「今ある部を移す」だけでなく「ない部を作る」という発想です。妙寺中学校には陸上部がなく、市町村駅伝に出た新1年生3名の「陸上を続けたい」という申し出から地域クラブが生まれました。地域展開を受け皿づくりの問題としてだけ捉えると、この発想は出てきません。もう1つは、県境を越える広域チームを行政が正式に認定した点です。「ブルッフラ」はかつらぎ町10名・橋本市7名・九度山町2名・奈良県五條市1名という構成で、部がないために競技を断念する生徒を4市町にまたがって拾い上げています。近隣校からの反発に対し教育長が自ら他市町の教育長を訪ねて合意を得たという経過も、広域連携が制度ではなく人の動きで実現したことを示しています。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

広域チームを他地域で作る場合、最初の壁は近隣校の反発です。かつらぎ町でも「選手を取られる」「自校のクラブが潰れる」との声が上がりました。この事例で機能したのは教育長という決定権者が直接出向いた点で、担当者レベルの調整では合意形成が難しい可能性があります。導入時には、対象を「その競技の部が自校にない生徒」に限定する条件を明示し、既存部との競合が生じない設計を先に示すことが有効です。もう1点は大会登録の実務で、かつらぎ町は中体連の地域クラブ登録期限に間に合わず、校長が仮の顧問となって学校名義で登録し、大会の種類によって名義を使い分ける対応を取りました。年度途中にクラブを立ち上げる場合は、登録スケジュールを先に確認しておく必要があります。費用面では、月500円という部費について報告書自身が「値上げが必要」と認めており、夜間練習の送迎手段とあわせて設計し直す前提で考えるべきです。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

総合型地域スポーツクラブであるNPO法人憩楽クラブかつらぎへ町が業務委託し、首長部局が予算措置、教育委員会がコーディネーター配置と連絡調整を担うという役割分担が明確です。指導回数・指導時間まで個別に集計・公表されており、実績の透明性は高い水準にあります。一方、参加会費0円は実証事業の財源に支えられたもので、事業終了後の費用負担は未確定です。ブルッフラの部費月500円も持続可能性の点で不足していると報告書自身が認めています。広域チームは複数市町の生徒が在籍するため、費用負担や大会登録の主体をどの自治体が持つかという整理も、継続にあたって必要になります。

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