【事例】和歌山県湯浅町の部活動地域展開 ─ 2町連携の「ASLEAD有田」が部員不足の生徒を救済し近畿大会出場・公費支援は1人年64,907円
・2町連携の地域クラブ「ASLEAD有田」が部員不足の生徒を救済し近畿大会出場に至った経緯
・総事業費499万円の内訳と、1人当たり年64,907円という公費支援額の算出方法
・市町間で予算・方針の差がある広域連携を前に進めた「困り感が一致する種目から」の手順
| 自治体名 | 和歌山県湯浅町(協力:広川町) |
|---|---|
| 人口規模 | 約1.07万人(10,706人・令和7年2月1日時点) |
| 中学校数 | 3校(うち町外2校・湯浅中学校の生徒273人・部活動15部) |
| 運営形態 | 湯浅町教育委員会が設立した地域クラブ「ASLEAD有田」(事務局は町教委内) |
| 対象競技 | 男女バスケットボール、剣道、軟式野球(4クラブ3種目) |
| 保護者負担額 | 参加費なし(遠征費等は別途)+スポーツ安全保険は町負担。令和7年度から保険料の保護者負担を検討 |
取り組みの概要
湯浅町は1町1中学校の配置で、湯浅中学校の生徒は273人です。町の試算では10年後の令和15年度に生徒数が現在より100人減り、有田地方全体でも約30%減、湯浅町単独では約45%減という数字が出ています。加えて1町という狭いエリアで全種目の指導者を地域人材から確保することが困難で、総合型地域スポーツクラブは設立されているものの中体連主催大会への参加を担える団体ではなく、受け皿にはなり得ないという課題がありました。町は令和5年度から推進会議を4回開催し、教育委員会が主体となって任意の地域クラブを設立することが望ましいと判断。隣接する広川町の協力を得て、2町にまたがる地域クラブ「ASLEAD有田」を設立しました。湯浅中学校・耐久中学校の男女バスケットボール部・剣道部・軟式野球部の休日活動を地域クラブ活動として実施し、会員は77名に達しています。
特徴的な取り組み
- 部員不足で大会に出られなかった生徒の救済と近畿大会出場: 2町の生徒が1つのチームを組めるようになったことで、これまで部員不足により大会に出場できなかった生徒が救済されました。町は「仲間が増えることにより活気を取り戻した選手たちは練習に意欲的に取り組み、中体連加入の初年度から近畿大会出場といった好成績を収めることができ、生徒の自己肯定感が向上した」と報告しています。剣道部の2年生は「1年生の時は部員数が足りず団体戦に参加できなかったが、近畿大会にまで出場することができ、地域クラブができて良かった」と述べています。
- 公費支援額を1人当たりで可視化: スポーツ活動に係る総事業費4,997,808円を会員77名で割り、1人当たり64,907円の参加費用負担を公費で支援していると明示しました。内訳は指導者謝金2,902,405円(支出の58.1%)、消耗品費849,658円、借損料629,390円、旅費・交通費441,045円などです。収入はスポーツ庁費4,664,796円・町費224,612円・特定寄附110,000円・保護者負担0円という構成です。
- 「中学校部活動地域移行協力金」による寄附募集: 寄附要項を作成し、町広報誌を通じて町民および地域企業に周知する取り組みを実施しました。受益者負担に頼らない財源確保の選択肢を広げる動きです。
- 企業・大学・元プロ選手との連携した指導者研修: 紀陽銀行女子バスケットボール部ハートビーツによるクリニック、和歌山大学開催の剣道練習会、元プロ野球選手による軟式野球講習会を実施。いずれも生徒の技術指導と同時に、指導員向けのコーチング研修を兼ねる設計です。JSPO公認資格(スタートコーチ)も1名が取得し、次年度3名の取得を予定しています。
- 小学6年生へのニーズ調査と体験会: 町内小学生74名への調査で、約80%が習い事に通い43.2%がスポーツクラブに所属、中学校部活動への入部予定は67.6%と依然需要が高い一方、「町内中学校にやってみたい部活動がない」が20.3%という結果を得ました。体験会にはバスケ4名・野球3名・剣道5名が参加し、当日の受付・駐車場係・練習サポートは会員の中学生が中心となって運営しました。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 指導者謝金が支出の58.1%を占め、ランニングコストの補填方法が未確定 | 中学校部活動は県費で支払われるため保護者負担を求めると部活動との差が生じるとして、国費・町費での対応を継続。令和7年度から保険料のみ保護者負担を検討 |
| 2町で部活動予算や方針・意識に差があり方向性の統一に時間がかかった | 同一種目で困り感が一致している種目から初動し、部活動と地域クラブの併存が可能な範囲で段階的に進める |
| へき地で路線バスの運行本数が少なく活用しづらい | 大会・練習試合でのバス活用機会を増やすとともに、生徒を移動させる代わりに指導者が各中学校を回る方式も検討 |
| 指導員14名のうち10名が教職員で、働き方改革の効果が限定的 | 体育協会・少年スポーツ競技団体と連携した地域人材の募集と、企業・大学と連携した派遣指導員の確保を進める |
| 学校の先生と地域クラブ指導員の指導が違い混乱した生徒がいた(15.8%) | 令和7年度に指導者の質の向上と運営方針をすり合わせる研修を実施 |
成果・効果
会員生徒アンケートでは「部活動の指導にたくさんの指導者が関わってくれ、たくさんアドバイスがもらえた」が86.7%、「自分の学校だけでなく他校の友人が増えた」が80%、「大会および練習試合の機会が増加した」が75.6%という回答を得ました。バスケットボール部の3年生は「当初はライバル関係にある他校と同じチームになることに戸惑いがあったが、部活の人数が増えることで日々の練習に活気が生まれた。県大会出場もできなかった自分たちが近畿大会まで出場することができて、自信になった」と振り返っています。指導員からは「学校部活動では主顧問1人で指導が大変だったが、休日には4人の指導者がいるため非常に休みやすくなった。子育てにおいて以前より休日にゆとりをもって過ごせるようになった」という声が上がりました。送迎負担について「負担が増えた」と回答したのは教職員30%・会員生徒24.5%にとどまり、各エリアの保護者が配車の当番を決めて柔軟に対応しています。町の推進計画・ガイドラインは令和7年度の策定予定で、同年度は種目増設を目指す方針です。
出典
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