【事例】熊本県山鹿市の部活動地域展開 ─ 一市1クラブ「山鹿市Jr.BUKATSU」で野球部の休日をモデル展開、令和9年度の休日全部活動の展開へスポーツ協会をNPO法人化
・一市1クラブ「山鹿市Jr.BUKATSU」で野球部の休日をモデル展開した山鹿市の、市が管理し運営を委託する役割分担
・指導者10人の交代制、コーディネーター2人の事務局業務、会費0円のモデル事業と令和9年度以降の受益者負担の想定
・令和9年度の休日全部活動の展開に向けた、平日の移動手段と運営事務量という課題
| 自治体名 | 熊本県山鹿市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約4.7万人(47,373人・令和7年12月末現在、令和7年度スポーツ庁成果報告書記載) |
| 中学校数 | 公立中学校5校(生徒1,268人・スポーツ系41部、文化系12部) |
| 運営形態 | 行政直営(市教育委員会が設置・管理する一市1クラブ「山鹿市Jr.BUKATSU」。運営は当面コーディネーター2人が兼ね、令和9年度に向けて山鹿市スポーツ協会をNPO法人化し運営業務の委託先とする計画)。教育委員会の生涯学習スポーツ課・文化課・学校教育課が担当 |
| 対象競技 | 令和7年度のモデル事業は野球(休日の地域クラブと平日の合同部活動)。令和8年度は剣道・柔道・吹奏楽を4月から、女子ソフトテニス・男女バレーボール・女子バスケットボールを夏以降に休日の地域展開クラブとして実施(広報やまが2026年6月号) |
| 保護者負担額 | 令和7年度のモデル事業は年会費・月謝とも0円(市負担)。保護者会費は月2,000円(年24,000円)。スポーツ安全保険は生徒1人あたり800円/年。令和9年度以降は年会費・月謝・保護者会費の受益者負担を想定(年会費は5,000円と試算) |
取り組みの概要
山鹿市の中学校は5校で、令和7年度の生徒数は1,268人と、平成26年度から149人(10.5%)減りました。部活動はスポーツ系41部・文化系12部あり、1・2年生856人のうち542人(63.3%)が加入していますが、部員数の減少と偏りで単一校では大会参加も日々の活動も成り立たない種目が出ており、一部ではすでに複数校の合同部活動が行われています。市は教職員の負担も課題に挙げ、合同部活動では練習時間や場所の調整、保護者・指導者間の連絡で教職員の負担がかえって増えているとしています。令和6年度に検討会議を設けて「山鹿市中学校部活動地域移行基本方針」を策定し、令和7年度は検討会議を推進会議に改めました。推進会議は地域クラブの指導者として活動できる人を中心に構成しています。市は、学校単位で行ってきた部活動を市全体で一市1クラブの体制に移す準備を進めており、令和7年度は野球部をモデルに休日の地域展開を行いました。推進計画は策定中です。
特徴的な取り組み
- 一市1クラブ「山鹿市Jr.BUKATSU」: 地域クラブは市教育委員会が設置するクラブで、教育活動の一環と位置づけ、学校施設を他の社会活動より優先して使う方針にしました。地域展開推進計画では「山鹿市Jr.BUKATSU」を認定クラブとして位置づけ、運営団体と管理主体を明確に分けて責任の所在を示す方針です。
- 休日は地域クラブ、平日は合同部活動の野球モデル: 野球は土曜・祝日の9時〜12時に地域クラブとして66回、木曜・金曜の16時〜18時に合同部活動として96回活動しました。参加は1年生20人・2年生5人・3年生12人で、中体連の大会にも地域クラブとして出場しています。平日の合同部活動はスクールバスやタクシーで1か所に集まり、休日は保護者の送迎です。
- 指導者10人の交代制: 主任指導者1人、アドバイザー1人、指導者8人が交代で指導し、1人あたりの休日の指導は実施回数の半分程度に抑えました。野球部顧問の教職員8人中6人が休日の指導を希望し、地域指導者(保護者を含む)4人が登録、うち2人は山鹿市野球連盟の推薦です。
- コーディネーター2人が事務局を担う: 練習場所の確保、指導者のシフト調整、指導記録、謝金計算、学校間調整、保護者会の運営を担い、学校施設以外を借りる手続きも事務局が行って教職員の負担を減らしました。参加者と指導者の連絡ツール「クラ部Link」を契約し、指導時間の打刻や欠席連絡を試験運用しています。
- 夏休み・冬休みの合同部活動: 地域展開の前段階として長期休業中に合同部活動を行い、学校の枠を超えた人間関係づくりや移動手段を検証しました。吹奏楽部は合同部活動としてマーチングコンテストに出場し、九州大会に進んでいます。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 平日の地域展開では放課後の移動手段が最優先かつ最重要の課題。地域展開後は学校管理下でないためスクールバスの利用規定に当たらない可能性があり、新たなバス契約は多額の経費になる | 市民生活部、県北地域振興局、県交通政策課と情報交換を重ねた。スクールバス利用を含め、移動の方法と経費・負担者を令和8年度以降に検討する |
| クラブ運営の事務量が多い。委託する際の人件費を積算する必要がある | モデル事業の拡充にあわせて事務量を検証し、委託業務の内容を整理して予算化する |
| 運営主体をスポーツ協会に任せる際、文化系部活動を担うことに疑義が出た | 山鹿市スポーツ協会をNPO法人化して運営事務を担う団体とし、令和8年度中に市・教育委員会・文化協会・スポーツ協会で協定を結んで地域を挙げた支援体制をつくる |
| 交代制の指導で指導方針の共通理解が十分でない。学校関係者と地域指導者で指導方針が違い、指導計画を立てにくい | 指導法や技術の研修より、地域クラブでの指導の在り方の研修を優先する。技術の研修は県主導の広域開催を望む |
| 主な活動場所の市カルチャースポーツセンターに減免規定がなく使用料がかかる。学校施設では送迎時の駐車場が足りない | 条例改正と補助金の両面で検討し、駐車場の問題は利用施設を分散して対応する |
成果・効果
市は、野球のモデル事業で休日の活動、大会参加、指導体制、加盟団体登録、保険加入の手続きに一定のめどが立ったとしています。一方で、種目ごとに競技団体の対応や保護者の意向に違いがあるため、拡充には関係機関との丁寧な調整が必要だとしています。教職員への「地域クラブ指導者希望調査」では、令和6年度の無記名調査で55%、令和7年度の記名調査で27%が指導を希望しました。保護者の指導者からは「年度初めは中学校一年生(初心者)の指導と経験者の指導とを分けて指導するため指導者の数が足らない」という声もあります。保護者向けには広報紙を5回発行し、新1年生と保護者への説明会を開きました。
令和8年度は、剣道・柔道・吹奏楽を4月から、女子ソフトテニス・男女バレーボール・女子バスケットボールを夏以降に休日の地域展開クラブとして活動させ、令和9年度にすべての部活動で休日の地域展開を進める方針です。令和8年度のモデル事業も受益者負担は0円で、その分事業費の予算が増えています。令和9年度以降は年会費・月謝・保護者会費の受益者負担を想定し、年会費は受益者負担、月謝は受益者負担に一部公的支援、保護者会費は種目ごとの独立会計とする考えで、経済的困窮世帯への支援の在り方も検討します。平日は現行の学校部活動を維持しつつ、合同部活動と拠点校型部活動を将来の地域展開の前段階として充実させるとしています。
出典
→ 原文: スポーツ庁「令和7年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書 熊本県山鹿市」(報告書検索システム)
→ 原文: スポーツ庁「令和6年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書 熊本県山鹿市」(報告書検索システム)
→ 参考: 広報やまが 2026年6月号(No.306)「中学校の部活動は新時代へ」(山鹿市公式)
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