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全種目 👥 5~10万人 🏫 中規模校(150〜300人) 📍 熊本県

【事例】熊本県宇城市の部活動地域展開 ─ 形骸化した指導者バンクをスポーツ協会と組み直し令和9年夏の地域展開へ

公開:2026.10.14 更新:2026.10.14
この記事でわかること

・宇城市が令和6年度の実証事業をクラブ設置ではなく方針決定と指導者確保の体制づくりに充てた経緯
・形骸化した指導者バンクを市スポーツ協会・市スポーツ推進委員協議会と連携して立て直した方法
・令和5年度のアンケートから令和9年夏の地域展開開始までの5か年の合意形成プロセス

自治体名 熊本県宇城市
人口規模 約5.6万人(56,347人・令和6年度実証事業報告時点)
中学校数 5校(公立中学校生徒数1,542人・部活動数45部活)
運営形態 市教育委員会内に地域クラブの運営主体を設立(指導員派遣事業者へ業務委託予定)
対象競技 バレーボール、バスケットボール、ハンドボール、テニス、卓球、サッカー、バドミントン、陸上、柔道、体操、ソフトボール、野球、剣道、弓道
保護者負担額 令和6年度報告時点で未定(クラブの会費等は検討中)

取り組みの概要

宇城市は令和6年度にスポーツ庁の「地域スポーツクラブ活動体制整備事業(地域スポーツクラブ活動への移行に向けた実証事業)」に参画しました。同年度の実証では、地域クラブを実際に立ち上げて運営する段階には進んでおらず、スポーツ庁へ提出した報告書でも運営実績は「実績なし」と記載されています。

宇城市が同年度に注力したのは、地域展開の前提となる「方針を決めること」と「指導者を確保する仕組みを立て直すこと」でした。令和5年度に保護者・児童生徒・教職員へのアンケートを実施したうえで、令和6年6月に中学校地域移行検討委員会を設立し、専門部会を含め計4回の会議を開催。令和7年2月には決定した市の方針をチラシにして生徒・保護者へ配布しています。

市が直面していたのは、部活動加入率の低下です。平成30年度に79.5%だった加入率は令和5年度68.4%、令和6年度64.2%と年々下がっていました。加えて学校ごとに生徒数(部活動数)の偏りがあり、単独ではチームを編成できない部活動や、生徒が希望する種目の部活動がない学校が生じていました。市域が東西に広く中学校間の距離が遠いため、合同部活動方式や拠点校方式を採っても移動に苦慮する状況にあります。

特徴的な取り組み

  • 形骸化していた指導者バンクの立て直し: 市にはすでに指導者バンクがありましたが形骸化しており、指導者を確保できていませんでした。休日の地域移行を進めるには指導者の確保が不可欠だと判断し、市教育委員会が市スポーツ協会・市スポーツ推進委員協議会と相互に情報提供・指導者提供を行う体制を組み直しています。
  • 運営主体を市教育委員会内に置く: 市の方針として、市教育委員会内に地域クラブの運営主体を設立して運営することを決定しました。運営主体から指導員派遣事業者へ、①指導者バンクの登録管理 ②指導者の派遣・謝礼支払い ③生徒と指導者の保険加入 ④活動スケジュールの管理――の4業務を委託する想定です。
  • 市内最大規模の松橋中学校で先行実施: 生徒数・部員数が市内で最も多い松橋中学校において、拠点方式および休日の部活動の地域移行を実施する計画を立てています。
  • 休日先行・平日は体制が整った種目から: まず休日の活動から地域展開し、体制が整ったところから平日も地域展開するという二段階の方針を明示しています。
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課題と解決策

課題 解決策
部活動加入率が平成30年度79.5%から令和6年度64.2%へ低下している 競技志向だけに寄らない地域クラブの整備を前提に、生徒の希望種目を確保できる体制づくりを検討委員会で協議した
学校ごとの生徒数の偏りで単独チームが組めない・希望種目の部活動がない 拠点校方式と合同部活動方式を採用する方針を決定し、市内最大規模の松橋中学校で先行実施する
市域が東西に広く、中学校間の移動に苦慮する 拠点方式の設計段階から移動の負担を考慮事項として検討委員会で扱っている
既存の指導者バンクが形骸化し、指導者を確保できていない 市スポーツ協会・市スポーツ推進委員協議会と連携し、情報提供と指導者提供を相互に行う仕組みへ再構築した
コーディネーターを雇用できず、体制整備が進まなかった 市教育委員会とコーディネーターを中心に運営・実施主体の整備を急ぎ、令和7年度から拠点校等の実証事業を実施する方針とした

成果・効果

令和6年度の実証では、地域クラブの設置数・参加者数といった定量的な実績はありません。一方で、総合型地域スポーツクラブ・学校長・PTAなど立場の異なる関係者の意見を検討委員会で集約し、市として次の3点を決定できたことが成果として報告されています。すなわち、①令和9年夏の地域展開を目指すこと、②まずは休日の活動から地域展開し体制が整ったところから平日も地域展開すること、③市教育委員会内に地域クラブの運営主体を設立し運営すること――の3点です。

合意形成のプロセスも年度ごとに整理されています。令和5年度にアンケート、令和6年度に検討委員会設置と方針決定、令和7年度に運営協議会の設置・課題の協議・モデル活動の実施・学校との協議、令和8年度に委託事業者の決定と地域展開の準備、そして令和9年度夏頃に地域展開を開始する計画です。

出典

→ 原文: スポーツ庁「令和6年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業(地域スポーツクラブ活動への移行に向けた実証事業)熊本県宇城市」

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域展開・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

宇城市の報告書で目を引くのは、実証事業でありながらクラブの運営実績が「実績なし」と正直に記載されている点です。その理由も明示されており、コーディネーターを雇用できなかったこと、既存の指導者バンクが形骸化していて指導者を確保できなかったことの2点が挙げられています。地域展開は「クラブをいくつ作ったか」で語られがちですが、宇城市のケースは、その手前にある運営主体と指導者供給のパイプラインが機能していなければ1クラブも立ち上がらないという現実を示しています。市が選んだ打ち手が、新しい組織を作ることではなく、既にある指導者バンクを市スポーツ協会・市スポーツ推進委員協議会とつなぎ直すことだったのも実務的です。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

同じ構造の自治体が宇城市の進め方を参考にする場合、最初の関門は「指導者バンクが名簿として存在するのに稼働していない」状態をどう診断するかです。登録者数ではなく、直近1年で実際に派遣された件数を数えると実態が見えます。次の関門は運営主体の置き場所です。宇城市は市教育委員会内に運営主体を設け、指導員派遣事業者へ登録管理・派遣・謝礼支払い・保険・スケジュール管理を委託する設計にしました。この4業務は事務量が大きく、学校にも既存クラブにも吸収させにくいため、委託先を確保できるかが成否を分けます。市域が広く学校間の距離がある自治体では、拠点校の選定を「生徒数が最多の学校」から始める宇城市の判断も現実的な出発点になります。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

検討委員会の委員構成が要綱で定められ、小中学校長会・教職員・保護者・市のスポーツ団体および文化団体・総合型地域スポーツクラブ・識見を有する者から20人以内を委嘱する形になっています。利害が異なる当事者を同じ場に置いた点は透明性の面で評価できます。一方、クラブの会費等は令和6年度時点で未定であり、保護者負担の水準と減免の設計はこれからです。運営主体が市教育委員会内に置かれるため公的な継続性は高い反面、財源が市の予算に依存しやすく、委託事業者の選定が持続可能性の鍵になります。

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