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【事例】長崎県南島原市の部活動地域展開 ─ 総合型クラブのマイクロバスで平日の移動を3年間無料化し令和8年度の完全地域クラブ化へ

公開:2026.10.08 更新:2026.10.08
この記事でわかること

・市が車両を買わず総合型クラブ保有のマイクロバスで生徒移送を無料化した南島原市の手法
・移送サービスの財源をスポーツ安全協会の助成で確保し、往路のみに絞った運行設計
・地域クラブ設立済み分野は部活動の募集を停止し、認定と補助金を連動させる移行ルール

自治体名 長崎県南島原市
人口規模 約3万9千人(令和6年1月1日現在・推計人口39,370人/15,734世帯)
中学校数 8校(深江・布津・有家・西有家・北有馬・南有馬・口之津・加津佐)
運営形態 総合型地域スポーツクラブが運営主体(NPO法人コミュニティースポーツクラブ「TEAMひまわり」・アザリーベンスポーツクラブ等)/市教育委員会が認定
対象競技 サッカー、バレーボール、硬式・軟式テニス、軟式野球、バドミントン、吹奏楽、合唱
保護者負担額 生徒移送サービスは無料(令和6年7月〜令和8年度の3年間)。各地域クラブの会費額は調査時点で未公表

取り組みの概要

長崎県南島原市は、令和8年度中の完全地域クラブ化を目標に部活動の地域展開を進めています。市は「南島原市部活動在り方検討委員会」を第1回から第6回まで開催し、委員名簿と各回の内容を公開しています。

市が掲げるコンセプトは「子どもたちが自分で考え、選び、活動する」です。新たな地域クラブ活動で大切にしたいこととして「自分で選ぶ、決める、活動する」ことを挙げ、子どもたちが「自分が一番やってみたいこと」を考えて選べる環境づくりを掲げています。

移行の進め方も明確です。地域クラブが設立されたら、同競技や同じ文化活動を行う部活動は募集を停止し、地域クラブでの活動を推進します(各学校の実情により部活動と地域クラブ活動の両方がある場合もあります)。受け皿ができた分野から順に部活動側を閉じていく方式です。

特徴的な取り組み

  • 総合型クラブのマイクロバスを使った無料の生徒移送サービス: 令和6年7月から令和8年度までの3年間、地域クラブ会員および拠点校部活動部員の平日の活動拠点までの移動(往路のみ)を、総合型地域スポーツクラブ「TEAMひまわり」および「アザリーベンスポーツクラブ」が所有するマイクロバスを利用して支援します。利用料は無料です。市が車両を新規購入せず、既にクラブが保有する車両を活用する設計です。
  • 移送サービスの財源は外部助成: この移送サービスは、スポーツ安全協会の「スポーツ活動等普及奨励助成事業(放課後活動振興モデル事業)」の助成により実施しています。
  • 利用対象を3類型で明示: ①市内中学校に在籍し拠点校部活動へ入部している生徒、②市内中学校に在籍し少人数合同部活動として活動している生徒、③拠点校部活動から地域クラブへと移行し移動が困難な生徒。申請書は各学校に備え、各学校から教育委員会へ申請します。
  • 3層の活動メニューを並行整備: 市は「子ども放課後支援事業『寺子屋21』」(気軽に・自分の趣味に合わせて・地域の方とのふれあい)、「拠点校部活動」(自分の学校にない部活動を体験できる)、「地域クラブ活動」(より専門的に・自分のニーズに合わせて)の3層を並行して整備しています。
  • 認定制度と補助金を連動: 認定を受けた地域クラブに対して「中学生社会体育・文化活動補助金」を交付します。市は「認定を受けていない団体には補助することはできません」と明記しており、認定取得が補助金の前提条件になっています。認定制度・認定までの手順・申請様式3種はいずれも公開されています。
  • 兼職兼業の許可要件を3条件で明示: 地域クラブ活動での指導を希望する教師等は、市教育委員会の兼職兼業の許可を得て報酬を受けて従事できます。許可の条件は①職員本人の意思確認、②公務遂行への支障がないこと、③学校・教員の信用失墜がないことの3点です。
  • 活動時間の上限を数値で設定: 活動時間は週当たり11時間を目安とし、最大15時間以内として、児童生徒の過度の負担とならないよう適切に活動するとしています。
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課題と解決策

課題 解決策
8中学校が広域に分散しており、拠点校部活動や地域クラブの活動場所まで生徒が移動できない 総合型地域スポーツクラブ「TEAMひまわり」「アザリーベンスポーツクラブ」が所有するマイクロバスを活用した生徒移送サービス(往路のみ・無料)を令和6年7月から3年間運行した
移送サービスの運行費用を市の一般財源だけで賄うのは難しい スポーツ安全協会「スポーツ活動等普及奨励助成事業(放課後活動振興モデル事業)」の助成を活用し、車両も既存クラブ保有分を使うことで新規購入を回避した
自分の学校に希望する部活動がない生徒への対応 「拠点校部活動」として自校にない部活動を体験できる制度を設け、少人数合同部活動の生徒も移送サービスの対象に含めた
地域クラブと学校部活動が並立すると生徒が分散し、どちらも成立しなくなる 地域クラブが設立された分野では、同競技・同じ文化活動の部活動の募集を停止する方針を明示した
運営体制が整っていない団体に公費を出すわけにはいかない 認定制度を設け、認定を受けた地域クラブのみを「中学生社会体育・文化活動補助金」の対象とし、未認定団体には補助しない旨を明記した
教員が地域クラブで指導する際の服務上の整理 兼職兼業の許可条件を①本人の意思確認、②公務遂行への支障がないこと、③学校・教員の信用失墜がないことの3点に整理し、許可申請様式を整備した

成果・効果

認定地域クラブは複数の運営主体のもとで立ち上がっています。NPO法人コミュニティースポーツクラブ「TEAMひまわり」が運営するのは、MS Footloose(サッカー・小中学生男女)、MS girasole(バレー・小学生男女)、MS solare(バレー・中学生女子)、MTC(硬式・軟式テニス・小学生男女)、吹奏楽クラブ(中学生男女)、合唱クラブ(中学生男女)。アザリーベンスポーツクラブが運営するのは Azalebe_Nfc(サッカー・小中学生)。そのほか南島原BC(軟式野球・中学生)、トレセン(バドミントン・小4〜中学生男女)、加津佐Jrクラブ(バドミントン・小中学生男女)が活動しています。

各クラブの入会はウェブから可能で、TEAMひまわり運営クラブは同法人サイト、その他はフォームから申し込める体制です。クラブごとの認定書も個別にPDFで公開されています。

対象年齢の設計も特徴的です。MS Footloose やMTC、トレセン、加津佐Jrクラブは小学生を含み、中学生のみを対象とするクラブと併存しています。市が「小学校社会体育活動においても同様に持続が困難になってきました」と課題を捉えていることが、小中をまたぐクラブ構成に表れています。

出典

→ 原文: 中学校部活動地域展開について(南島原市教育委員会/南島原市公式ホームページ)

→ 原文: 地域クラブ活動に従事する場合の兼職兼業について/南島原市教育委員会(PDF)

→ 移送サービスの助成: スポーツ活動等普及奨励助成事業(公益財団法人スポーツ安全協会)

→ 中学校数: 中学校一覧(南島原市教育委員会)

→ 人口: 世帯数と推計人口(南島原市公式ホームページ)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域展開・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

移動手段は地域展開で最も金のかかる論点で、スクールバスを新規に走らせれば年間数百万円から数千万円の恒久的な支出になります。南島原市は車両を買わず、TEAMひまわりとアザリーベンスポーツクラブが既に所有するマイクロバスを使い、運行財源をスポーツ安全協会の助成で確保しました。受け皿となるクラブが輸送手段も持っているという地域資源を正確に見立てた判断です。往路のみに絞った割り切りも効いています。朝の集合は時刻が揃うため乗り合わせが成立しますが、帰りは活動終了時刻が種目ごとにばらけて効率が落ちます。もう一点、地域クラブが設立された分野では部活動の募集を停止すると明示した点は重要です。両方を残すと生徒が分散して双方が成立しなくなるため、受け皿ができた順に学校側を閉じる判断を先に示しています。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

最大の論点は、移送サービスの財源が令和6年7月から令和8年度までの3年間のモデル事業助成であることです。助成期間の終了後にどう継続するかが未確定のまま残っており、無料だった移動が有料化すれば参加を見送る生徒が出ます。導入を検討する自治体は、助成期間中に市単独予算への移行計画を並行して組み、助成の終了年度を保護者に事前に伝えておく必要があります。もう一点、クラブ所有車両に依存する方式は、事故時の賠償責任と運転者の確保がクラブ側に寄ります。市が任意保険の加入状況を認定要件で確認し、運転者の資格と労務の扱いを委託契約に書き込んでおくべきです。認定と補助金を連動させる仕組みは効果的ですが、認定要件が厳しすぎると小規模な任意団体が制度の外に落ちます。南島原市のように申請様式と手順を公開し、設立相談の窓口を生涯学習課に置く手当てが欠かせません。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

部活動在り方検討委員会の第1回から第6回までの内容と委員名簿を公開し、認定制度・認定手順・申請様式・補助金交付要綱・兼職兼業の要件をそれぞれ個別文書として示している点は透明性が高いです。活動時間を週11時間目安・最大15時間以内と数値で上限設定していることも、生徒の負担管理として明確です。持続可能性の懸念は移送サービスの財源に集約されます。令和8年度で助成が切れる構造のため、完全地域クラブ化の達成と同時に移動支援の恒久財源をどう確保するかが次の分岐点です。

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