トップ 事例を探す 長崎県 【事例】長崎県長与町の部活動地域展開 ─ 令和2年卓球教室から5年で12種目・休日全面移行を実現した長与スポーツクラブ主導モデル
全種目 👥 1~5万人 🏫 中規模校(150〜300人) 📍 長崎県

【事例】長崎県長与町の部活動地域展開 ─ 令和2年卓球教室から5年で12種目・休日全面移行を実現した長与スポーツクラブ主導モデル

公開:2026.05.03 更新:2026.05.03
この記事でわかること

・令和2年度の卓球教室から5年間の段階的プロセスで12種目・休日全面移行を実現した長与スポーツクラブ主導モデルの詳細
・月額3,000円の会費設定と就学援助支援・大学連携による指導者育成・キャッシュレス化の具体的な取り組み
・年間2,000万円超の運営費確保に向けた企業版ふるさと納税活用と財源多様化の課題と方向性

自治体名 長崎県長与町
人口規模 約3.9万人(39,493人)
中学校数 3校(生徒数1,045人)
運営形態 特定非営利活動法人長与スポーツクラブ(NSC)への委託
対象競技 軟式野球・卓球・陸上・サッカー・バスケットボール・バレーボール・バドミントン・ソフトテニス・硬式テニス・柔道・剣道・弓道(計12種目)
保護者負担額 月額3,000円(就学援助世帯への支援制度あり)

取り組みの概要

長崎県長与町は人口約3.9万人、公立中学校3校に1,045名の生徒が在籍し、46部活が活動しています(令和6年度)。令和2年12月に卓球協会と長与スポーツクラブ(NSC)が連携して週1回の中学生卓球教室を開始したことを起点とし、令和3年度に卓球部の休日地域クラブ活動をNSCが運営する形でスタート。令和4年12月に運動部活動地域移行推進計画を策定し、令和5年4月に全ての休日運動部活動を地域クラブ活動へ移行するという全国的にも先進的なモデルを実現しました。

令和6年度は令和6年4月1日から令和7年3月31日の期間、休日のみの活動として12種目を実施。バドミントン74名・ソフトテニス56名・バスケットボール46名を筆頭に全種目合計で300名超が参加し、参加対象3校の生徒数1,045名の約3割が地域クラブ活動に参加しています。特定非営利活動法人NSCがフルタイム職員に代わってパートタイム職員3名体制で運営業務を担い、担当課も学校教育課から生涯学習課(スポーツ振興班)へ移管されました。

運営体制は長与スポーツクラブ(NSC)が運営・実施主体となり、長与町教育委員会が全体調整を行う二層構造です。教育委員会内に専任担当者を設置し、部活動地域移行コーディネーターを配置して指導者・保護者・学校との連絡調整を継続的に実施しています。

特徴的な取り組み

  • 令和2年卓球教室から5年間の段階移行と令和5年度の休日全面移行:令和2年12月の週1回卓球教室という小さな実践から、令和3年度に卓球部休日クラブ化、令和4年度に全校バスケ追加、令和4年12月に推進計画策定、そして令和5年4月の全面移行へと段階的に拡大。約4年半をかけた丁寧な合意形成と試行錯誤の積み重ねが、大きな混乱なく全面移行を実現させました。
  • キャッシュレス決済・パートタイム化による運営効率化:月謝袋での現金徴収を廃止しキャッシュレス決済を導入。地元金融機関と連携して集金業務をオンライン化しました。初年度のフルタイム職員体制から令和6年度にはパートタイム職員3名体制に移行し、業務を分担しながら運営コストの削減と持続可能性の向上を両立させています。
  • 大阪体育大学と連携した指導者認定プログラムと資格取得支援:令和5年10月から大阪体育大学と連携し、指導者の認定プログラム(受講費用20,500円の一部を補助)を導入。日本スポーツ協会の公認指導者資格取得も支援し、令和6年7月時点で指導者の13名が有資格者です。令和8年度からは指導者契約継続の条件としてスポーツ指導者資格取得を義務化する予定で、指導者の質の継続的な向上を制度として担保しています。
  • 就学援助世帯への月2,000円支援と企業・ふるさと納税による財源多様化:月額3,000円の会費設定について保護者の理解を得るため丁寧な説明を繰り返し、YouTube動画で指導内容や運営の実態を可視化。経済的事情がある世帯には月2,000円の支援(地域スポーツ活動サポート基金)を実施。令和5年6月には地元企業から30万円の寄附、令和5年12月には企業版ふるさと納税も獲得し、財源の多様化を図っています。

課題と解決策

課題 解決策
年間2,000万円以上の運営費に対して月額3,000円では財源が不足 企業協賛・ふるさと納税(企業版含む)等の寄附活用を拡大。国や県の補助金も継続活用しながら、長期的には財源の多層化で持続可能な運営を目指す
月額3,000円の会費への保護者の理解 説明会・YouTube動画での透明な情報公開を繰り返し実施。導入当初は反発が大きかったが、現在は「お金を払う価値がある」という声が増加し否定的な意見はほぼ解消
指導者確保と質の継続的担保 大阪体育大学との連携で認定プログラム導入・受講費補助を実施。令和8年度から資格取得を指導者契約の条件に義務化予定。大学生・若手人材の参画も推進
隣接市町の教員が異動した際の兼職兼業継続問題 コーディネーターが異動先の学校長へ電話で業務に支障のない範囲で指導継続できるよう調整。隣接市町の教育委員会とも連携し、十分な指導者を確保する柔軟な対応を実現

成果・効果

令和5年度の全面移行から2年が経過し、令和6年度は12種目・合計300名超が参加する体制が定着しています。バドミントン74名・ソフトテニス56名・バスケットボール46名・バレーボール23名・卓球23名など多種目で安定した参加者数を確保。生徒の満足度調査では「活動で楽しいと感じること」として友達との交流208名・試合179名・練習162名・技術力向上150名が挙げられ、スポーツを通じた充実した活動となっています。

令和6年5月にはバスケットボール・サッカー・バレーボール・軟式野球の4種目が地域クラブ活動として中体連の総合体育大会地域クラブ予選へ出場。令和6年12月には長与スポーツクラブフェスタを開催し、親子63名がサッカー・ソフトテニス・卓球・バドミントン・フィットネス・ダンスを体験するなど、地域スポーツの裾野を広げる活動も展開しています。

出典

→ 原文: 令和6年度地域スポーツクラブ活動体制整備事業 事例集|スポーツ庁・文部科学省

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

長与町の成功の核心は「小さく始めて、理解を積み重ねながら拡大した」というプロセスにあります。令和2年12月の週1回の卓球教室から始まり、4年半かけて12種目・全面移行という大規模な体制を実現しました。多くの自治体が「一気に全面移行を目指して失敗する」というパターンに陥りがちですが、長与町は各ステップで関係者の理解を確認しながら次の段階へ進んでいます。月額3,000円の会費への反発も、YouTube動画での情報公開を含む丁寧な説明の積み重ねによって解消されました。この「丁寧さとスピードの両立」が参考になります。

既存のNPO法人(特定非営利活動法人)である長与スポーツクラブを運営体制として活用した点は重要な示唆を持っています。「法人格を持ちリスク管理・スポーツクラブ活動のノウハウを持つ団体」を選定したことが、運営の安定性と信頼性につながっています。ゼロから新しい法人を設立するよりも、地域に根ざした既存の総合型地域スポーツクラブを活用するアプローチは、多くの市町村にとって現実的な選択肢です。

大阪体育大学との連携による指導者認定プログラムは、「指導の質の底上げ」という課題に対する体系的な回答です。近隣に同様の大学・教育機関がない地域でも、オンライン研修・通信教育・日本スポーツ協会の公認資格制度を活用することで指導者の質向上は可能です。令和8年度から資格取得を契約条件に義務化するというロードマップも、段階的な質の向上を実現する実践的な手法として評価できます。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

長与町型の最大のハードルは財源確保です。年間2,000万円以上の運営費に対して月額3,000円の会費では不足しており、企業版ふるさと納税や寄附などの財源多様化が不可欠です。実証事業期間中はスポーツ庁の補助金が財源の柱ですが、実証終了後の安定財源をどう確保するかが継続的な課題となっています。月額3,000円という水準は「払ってもらいやすいギリギリの額」であるため、活動コストの上昇局面での対応も検討しておく必要があります。また、既存の総合型地域スポーツクラブがない地域では、運営体制を一から構築する必要があるため、法人設立や運営スキル習得に1〜2年の準備期間を見込んでおくことが重要です。

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