トップ 事例を探す 茨城県 【事例】茨城県鹿嶋市の部活動地域展開 ─ NPO委託「かしま地域クラブ」と剣道連盟主体の二本柱・令和7年9月から休日部活動終了
全種目 👥 5~10万人 🏫 中規模校(150〜300人) 📍 茨城県

【事例】茨城県鹿嶋市の部活動地域展開 ─ NPO委託「かしま地域クラブ」と剣道連盟主体の二本柱・令和7年9月から休日部活動終了

公開:2026.08.20 更新:2026.08.20
この記事でわかること

・鹿嶋市がNPO委託4競技+剣道連盟主体の二本柱で地域クラブを開始し延べ82名が参加した経緯
・参加費500円/回と1回あたり1,100円の経費試算を公開した受益者負担設計の考え方
・令和7年9月以降に休日の学校部活動を実施しないロードマップと他地域への示唆

自治体名 茨城県鹿嶋市
人口規模 約6.5万人(令和7年2月1日時点・64,623人)
中学校数 5校(生徒数1,491人・41部活動)
運営形態 NPO法人かしまスポーツクラブへの業務委託+鹿嶋市剣道連盟主体の教室
対象競技 バスケットボール、バドミントン、ソフトテニス、卓球、剣道
保護者負担額 参加費500円/回(令和6年度の実証期間は徴収なし。かしま剣道教室は月会費500円/回)

取り組みの概要

鹿嶋市は市立中学校5校・生徒1,491人の規模で41の部活動を抱えていますが、少子化で生徒数が年々減少し、学校によっては人数不足のため合同チームで活動している状況にありました。市は令和5年度に検討委員会を設置して地域クラブの実施に向けた検討を開始し、令和6年8月にNPO法人かしまスポーツクラブと業務委託を締結。同年12月22日にバドミントン・ソフトテニス・卓球の3競技で地域クラブ体験会を開催しました。令和7年1月からはバスケットボール・バドミントン・ソフトテニス・卓球の4競技による「かしま地域クラブ」と、鹿嶋市剣道連盟が主体となる「かしま剣道教室」が活動を開始し、1〜2月の計6回で市内すべての公立中学校から延べ82名の生徒が参加しました。市はこの取り組みを、子どもたちのためであると同時に「地域住民がスポーツや文化芸術に親しむ環境を向上させるための一つの手段」と位置付け、教育指導課・スポーツ推進課・社会教育課の3課が役割分担して体制を整えています。

特徴的な取り組み

  • NPO委託と競技連盟主体の二本柱: バスケットボール等4競技はNPO法人かしまスポーツクラブへ業務委託し、コーディネーターを配置して指導者手配や連絡調整を一元化。剣道は鹿嶋市剣道連盟が指導者確保から運営までを主体的に担い、補助金に頼らず自走可能な仕組みづくりを進めています。
  • 部活動の移行ではなく「新規創設型」のクラブ設計: 既存部活動をそのまま移し替えるのではなく、新たなクラブとして立ち上げることで他校の生徒との交流を深められる環境とし、参加者は市内に限らず近隣市町村など市外の子どもも受け入れる体制を整備しています。
  • アプリ「Sgrum」による連絡体制の一元化: 生徒・保護者・指導者・事務局が1つのアプリで実施内容を共有し、円滑な連絡体制を構築しました。
  • 学校施設活用と教員負担の切り離し: 会場は市立中学校の体育館・庭球場を借用して会場使用料をかけず、施設の鍵開け等は事務局が行うことで教諭の負担削減に努めています。
  • 経費構造の見える化: 指導者謝金1,500円/時間、事務局人件費等を積み上げ、1競技1回あたり生徒1人約1,100円という試算を成果報告書で公開。参加費500円との差額をどう埋めるかを明示したうえで、受益者負担を基本とした自走運営を検討しています。

課題と解決策

課題 解決策
公共交通機関が少なく、保護者による送迎が必要不可欠で生徒の移動手段に制限がある 生徒の移動範囲を考慮した場所への活動会場の統一化や、公共施設の借用、コミュニティーバス等の活用を検討
地域クラブ活動の参加者が思うように増えない チラシの紙媒体・電子端末配信に加え、SNS等を活用した広報活動を拡大。体験会の開催で参加のハードルを下げる
補助金への依存が強い運営体制 令和7年4月から先行4競技で会費徴収を開始し、ふるさと納税の活用や企業等の協賛も検討
種目によって協力できる指導者が少なく、活動を開始できない競技がある 資格の有無を問わない指導者募集を行い、各種協会・関係団体との連絡調整を強化

成果・効果

令和7年1〜2月の計6回の活動で、市内5校すべての公立中学校から延べ82名の生徒が参加し、回を重ねるごとに参加者が増加しました。かしま地域クラブでは15名の指導者を確保し、全6回すべての日程で学校体育施設を借用して実施できています。参加した生徒からは「指導者から実践的なアドバイスをもらえてよかった」「他校の生徒と交流できて楽しかった」との声が、指導者からは「部活動が地域に移る中で新しく活動できる場所ができて助かる」との声が寄せられています。市のロードマップでは、令和7年8月末をもって休日の学校部活動を実施しないこととし(休日の練習試合や大会参加は部活動として可能)、準備ができた活動から順次地域クラブへ展開する計画です。

出典

→ 原文: スポーツ庁 令和6年度地域スポーツクラブ活動体制整備事業(地域スポーツクラブ活動への移行に向けた実証事業)成果報告書 茨城県鹿嶋市(茨城県教育委員会掲載PDF)

→ 参考: 茨城県教育委員会「部活動地域展開」

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

鹿嶋市の事例で注目すべきは、NPO委託と競技連盟主体という性格の異なる2つの受け皿を同時に走らせている点です。委託型は行政がコーディネート機能ごと外部化でき立ち上がりが速い一方、委託費が続く保証はありません。対して剣道連盟型は連盟自身が指導者確保から運営まで担うため、最初から自走を前提にした設計です。もう一つの特徴は「部活動の移し替え」ではなく新規創設型(既存部活動を移行した形のクラブ数は0)で始めたこと。他校交流や市外からの受け入れなど、学校単位の部活動にはない価値を打ち出しやすく、1競技1回あたり1,100円という経費試算の公開も、保護者との負担合意を進めるうえで誠実なアプローチといえます。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

鹿嶋市が直面したように、新規創設型は既存部員が自動的に移ってこないため、参加者集めが最初の壁になります。体験会→本格実施の二段構えと、学校経由の紙・電子端末双方でのチラシ配布、連絡アプリの導入までセットで設計しておくことが必要です。また公共交通が弱い地域では送迎問題が参加の可否を直接左右します。鹿嶋市は会場の統一化やコミュニティーバス活用の検討を挙げており、導入初期から「どこで活動するか」を移動手段とセットで決めることが重要です。指導者面では、資格の有無を問わず競技実践者を広く募る方式が量の確保には有効ですが、その分、研修や保険(同市は指導者保険料年1,850円/人を計上)などの安全設計を運営団体側で担保する必要があります。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

教育指導課・スポーツ推進課・社会教育課の3課分担と検討委員会の設置により、行政内の役割は明確です。財源面は令和6年度こそ県委託金で参加費を無償化しましたが、収支試算を公開したうえで令和7年4月から会費徴収に踏み切っており、補助金依存からの脱却プロセスを透明に示しています。剣道連盟主体のクラブが先行して自走モデルを示している点も、他競技への横展開時の説得材料になります。残る論点はコーディネーターへの業務集中と、競技拡大時の人員不足で、事務分担の見直しが今後の焦点です。

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