トップ 事例を探す 茨城県 【事例】茨城県行方市の部活動地域展開 ─ 3校合同「なめがたスポーツ・文化クラブ」が年会費1,000円で6種目・部活にないヒップホップダンスも新設
全種目 👥 1~5万人 🏫 中規模校(150〜300人) 📍 茨城県

【事例】茨城県行方市の部活動地域展開 ─ 3校合同「なめがたスポーツ・文化クラブ」が年会費1,000円で6種目・部活にないヒップホップダンスも新設

公開:2026.08.23 更新:2026.08.23
この記事でわかること

・中学3校663人の行方市が市全域1クラブ・3校合同で6種目の地域クラブを運営する仕組み
・年会費1,000円+教育委員会事務局方式による低コスト運営と年3回の指導者研修の内容
・指導者・コーディネーター確保の課題と、小規模自治体が単一クラブ方式を採る際の留意点

自治体名 茨城県行方市
人口規模 約3.2万人(令和6年度成果報告書時点:31,811人)
中学校数 3校(全生徒663人)
運営形態 行政直営(運営団体「なめがたスポーツ・文化クラブ」・事務局は行方市教育委員会)
対象競技 サッカー、軟式野球、男子ハンドボール、女子ハンドボール、絵画、ヒップホップダンス
保護者負担額 年会費1,000円(別途スポーツ安全保険料:生徒1人あたり年額800円)

取り組みの概要

行方市は霞ヶ浦と北浦に挟まれた茨城県東南部の市で、過疎化により人口が10年前と比べ約15%減少し、少子高齢化が進んでいます。市内の中学校は3校・全生徒663人で、34の部活動がありますが、運動部13種目のうち5種目はすでに部員数の減少により近隣中学校との合同チームで試合に出場している状況でした。こうした背景から、市はスポーツ庁の「地域スポーツクラブ活動体制整備事業」(茨城県実証事業)の枠組みを活用し、令和6年8月に市内中学校3校合同の地域クラブ「なめがたスポーツ・文化クラブ」を設立。サッカー・軟式野球・男女ハンドボールに加え、文化系の絵画、部活動にはない種目のヒップホップダンスを含む6種目の活動を開始しました。

特徴的な取り組み

  • 市全域1クラブ・3校合同方式: 学校単位では少人数のためできない練習を、市内3校合同の活動として実施。運営団体「なめがたスポーツ・文化クラブ」の事務局を市教育委員会が担い、指導者の募集、活動場所の利用調整、指導者報酬・保険関係の管理までを一元化しています。
  • 部活動にない種目の新設: ヒップホップダンス教室は部活動には無い種目をあえて取り入れたもので、絵画とあわせて「移行」だけでなく「新たな選択肢の創出」として多様なニーズに対応しています。
  • 年会費1,000円の低コスト設計: 参加会費は年額1,000円で、別途スポーツ安全保険(生徒800円/年)に加入。活動は月1〜2回・通年で、市内各中学校や公共施設を活動場所としています。
  • 連絡アプリの活用: 保護者・指導者・教育委員会の間で活動の実施連絡や状況報告をアプリで共有し、円滑なコミュニケーションを確保しています。
  • 年3回の指導者研修会: 部活動指導員による「勝利至上主義から楽しむスポーツへの転換」、日本サッカー指導者協会(JFCA)講師による「勝利至上主義とハラスメントを生む原因の分析・セーフガーディング」、消防署員によるAED操作・救急救命など、指導の質を高める研修を体系的に実施しています。
  • コーディネーター配置と見学会: コーディネーター1名が定期的にクラブを巡回して活動状況を把握し、指導者・保護者との意見交換や負担金の徴収を担当。令和7年2〜3月には新中学生向けの見学会も開催しました。

課題と解決策

課題 解決策
指導者の確保(現職教員は指導に入っていない) スポーツ少年団指導者・教員OB等から30人を確保。現状は地域の方からの紹介が中心のため、今後はホームページ等を活用した人員確保に努める方針
学校・指導者間の連絡体制が不足している種目がある 連絡アプリによる情報共有とコーディネーターのパイプ役機能で補完し、体制整備を継続
コーディネーターを担う人材の不足 学校・指導者とのパイプ役となれる人材の確保を今後の対応方針として明記

成果・効果

令和6年8月の活動開始から、スポーツ協会・スポーツ少年団・総合型地域スポーツクラブと連携して中学生の受け入れを行い、6種目の多様な受け皿を確保しました。クラブあたりの年間平均参加生徒数は1年生31人・2年生43人で、下級生を中心に参加が定着しつつあります(3年生は0人)。指導者研修会の実施により指導者の質の向上が図られたほか、アプリを活用した情報共有で参加者のニーズや期待を把握し、指導内容や進行方法を調整できたことも成果として報告されています。なお、現時点で大会への参加は行っていません。

出典

→ 原文: 令和6年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書(茨城県行方市)(茨城県教育委員会掲載・PDF)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

行方市の事例の核心は、人口3万人規模・中学3校という条件で「市全域1クラブ」に集約した割り切りの良さです。学校ごとに受け皿を作る体力がない自治体にとって、事務局を教育委員会に置いた単一クラブ方式は、指導者報酬・保険・施設調整の管理コストを最小化できる現実解です。もう一つ注目すべきは、部活動の「移行」に留まらず、ヒップホップダンスや絵画といった部活動に存在しなかった種目を最初から組み込んだ点です。既存部活の代替ではなく新たな選択肢の提供と位置付けたことで、地域展開が「縮小の受け皿」ではなく「拡張の機会」として住民に受け止められやすくなっています。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

最大のハードルは指導者とコーディネーターの人材確保です。行方市も指導者30人を確保したものの、その中心は地域からの紹介であり、報告書自体が「コーディネーターを担う人材が不足」と明記しています。導入時は、行方市が実践したように退職教員・スポーツ少年団指導者など既存の人的資源を洗い出した上で、紹介依存から脱却する募集経路(ホームページ・人材バンク等)を初年度から並行整備することが重要です。また、月1〜2回・大会参加なしという活動水準は立ち上げ期のリスクを抑える一方、競技志向の生徒や保護者には物足りなさが残ります。活動頻度と大会参加の拡充ロードマップをあらかじめ示しておくと、期待値のずれを防げます。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

運営主体が行政直営で、教育委員会内で学校教育課(学校調整・保護者説明)とスポーツ推進室(指導者調整・研修)、市長部局財政課(予算措置)の役割分担が明文化されている点は、立ち上げ期のガバナンスとして堅実です。年3回の指導者研修会にセーフガーディングやAED研修を組み込んでおり、安全管理面の設計も評価できます。一方、年会費1,000円は参加しやすい反面、財源はスポーツ庁実証事業への依存度が高いため、事業終了後の自主財源確保と、月1〜2回から先へ活動を拡充する際の費用設計が持続可能性の焦点になります。

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