【事例】秋田県羽後町の部活動地域展開 ─ 町体育協会への業務委託で3種目から8種目へ段階拡大・年会費400円と廃校体育館の活用
・中学校1校の町が町体育協会への業務委託で3種目から8種目へ段階拡大した進め方
・年会費400円(保険料半額)を国の実証事業費で支える収支構造と財源検討の期限設定
・種目ごとに試行期間を置き、移行できない種目は翌年度に回す判断基準
| 自治体名 | 秋田県羽後町 |
|---|---|
| 人口規模 | 約1.3万人(13,010人・2024年度報告書時点) |
| 中学校数 | 1校(羽後中学校・生徒306人/令和6年5月時点) |
| 運営形態 | 羽後町体育協会への業務委託(教育委員会学校教育・社会教育班が主担当) |
| 対象競技 | 陸上競技、軟式野球、男子バレーボール、女子バレーボール、卓球、ハンドボール、ホッケー、柔道(令和6年度・8クラブ) |
| 保護者負担額 | 年額400円(スポーツ安全保険料800円の半額分。指導者謝金・会議費等は国の実証事業費で負担) |
取り組みの概要
秋田県羽後町は、町内唯一の中学校である羽後中学校において、令和3年度から休日の運動部活動の地域展開に取り組んできました。開始当初は陸上競技・ハンドボール・柔道の3種目でしたが、令和6年度には8種目8クラブ(9部活動分)まで拡大し、参加生徒は前年度の122名から158名に増えています。
運営を担うのは羽後町体育協会です。町のスポーツ主管課が総合体育館に置かれているため、教育委員会の学校教育・社会教育班が主担当となり、総合体育館・中央公民館の担当と連携して練習場所を確保しながら、体育協会に活動運営を業務委託する形をとっています。
羽後中学校の生徒数は令和4年度の331人から令和6年度は306人となり、令和10年度には243人まで減る見込みです。町は令和6年度から部活動への加入を任意制に切り替えており、放課後の過ごし方が多様化する中で、令和7年度末までにすべての部活動で休日の地域展開・地域連携を実現することを目標に掲げています。
特徴的な取り組み
- 「連携期間」を置いた種目ごとの段階移行: 全種目を一斉に切り替えるのではなく、種目ごとに学校と連携する試行期間を設けてから移行しています。通年で実施する種目と短期間に限定して実施する種目を分けたことで、令和6年度は卓球・軟式野球・女子バレーボールが新たに移行できました(女子バレーボールは11月〜1月の3か月限定)。一方、男子バレーボールは令和6年度は地域連携にとどまっています。
- 運営主体を体育協会に切り替え、要綱で基準を明文化: 令和4年度に運営主体を体育協会へ変更し、指導者は体育協会からの派遣を基本としました。令和5年度には検討・運営委員設置要綱を定めて各単位協会の代表者を委員とし、あわせて地域部活動指導者要綱で指導者の役割・謝金・旅費等の基準を明確にしています。
- 部活動指導員を使った平日・休日の一貫指導: ホッケーでは平日に部活動指導員として指導している人材が休日の地域クラブ指導者を兼務しています。報告書は、これにより生徒理解が深まり指導の質が向上したと評価しています。
- 廃校体育館を含む町内施設の分散活用: 羽後中学校の体育館・武道場に加え、旧元西小学校体育館・旧三輪中学校体育館・羽後アリーナ・三輪ドーム・羽後町陸上競技場・羽後町多目的広場・羽後町野球場を種目ごとに使い分けています。移動は徒歩・自転車・保護者送迎です。
- 生徒アンケートを起点にした「部活動以外の選択肢」の整備: 令和6年6月の生徒アンケートで「経験の有無を問わずやりたいスポーツに挑戦できる活動」を望む回答が最多(127人・複数回答)だったことを受け、従来は一般・親子向けだったテニス教室(10月〜3月の第2・第4日曜、参加費は期間中1,000円)とバドミントン教室(1月〜3月の日曜、1回100円)を中学生も参加できる形に組み替えました。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 保護者や関係者から「地域移行を行う必要があるのか疑問」という声が依然として多く、アンケートでも情報不足を指摘された | 令和3年度から学校関係者・体育協会・スポーツ少年団関係者への説明会と町広報で周知を続け、令和6年度は町内4小学校の学年末PTAでも説明を実施。5・6年生とその保護者にもアンケートを行い、周知の場そのものを増やした |
| 種目によって指導者の充足状況に差があり、指導者1人あたりの負担が大きい | 依頼期間を一定期間に限定し、新たな指導者は複数体制の中で試行する期間を設けた。指導者として登録していない「協力者」も受け入れ、令和7年度に全種目共通の内容で指導者研修会を実施することを決定した |
| 生徒数の減少が続き、中学生だけ・町内だけでのチーム編成が困難になると見込まれる | 近隣地域との共同実施は練習会場への移動負担が増えるため合意形成を進めながら検討する方針とし、当面は必要に応じて他地域・他世代の団体と合同練習を行って活動の幅を確保している |
| 令和6年度は指導者謝金(1時間1,000円)・保険料の半額・会議費等を国の実証事業費で負担しており、改革推進期間終了後の財源が未確定 | 令和7年2月の第3回検討・運営会議で、令和7年度中に財源確保について検討することを決定事項として確認した |
成果・効果
参加生徒数は令和5年度の122名から令和6年度は158名へ増加しました。令和6年12月に参加生徒を対象に実施したアンケートでは、指導内容や指導方針に「満足」と答えた生徒が89%(「満足していない」1%、「わからない」10%)で、報告書は地域展開が生徒にとってメリットの大きいものであることが明らかになったと総括しています。
保護者からは「分かりやすく専門的な指導が受けられる」「地域指導者が来てくれる日は必ず練習に行きたいと子どもが話している」といった声が寄せられた一方、「現状、移行しているとは言えない」「地域指導者が来てくれる回数に満足しているか分からない」という指摘も記録されています。運営面では、年3回の検討・運営会議で現状と課題を明らかにして具体策を決定できる体制ができ、議論の内容が地域展開の困難さから「羽後町のスポーツ環境づくり」へと広がった点も成果として挙げられています。
中学生向けに時間帯を午後へ変更したテニス教室は、令和6年度の中学生利用者はゼロでしたが、参加しやすい時間帯になったことで一般の参加者が増えました。町は「自由に参加しスポーツに親しむ機会の確保」が目的であるため利用者がなかったこと自体は課題と捉えていないとしています。
出典
→ 原文: スポーツ庁「令和6年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書(秋田県羽後町)」本編
→ 原文: スポーツ庁「令和6年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書(秋田県羽後町)」概要
→ 参考: 羽後町「小中学校」
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