トップ 事例を探す 福島県 【事例】福島県いわき市の部活動地域展開 ─ 「地域移行」から「地域展開」へ改称・13種目・未所属生徒開放モデル
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【事例】福島県いわき市の部活動地域展開 ─ 「地域移行」から「地域展開」へ改称・13種目・未所属生徒開放モデル

公開:2026.04.28 更新:2026.05.17
この記事でわかること

・「地域移行」から「地域展開」への改称を国に先んじて実施し、協働の理念を呼称に明確に反映させた。
・令和7年度から部活未所属の生徒も参加可能とし、スポーツ・文化活動の機会を所属に関わらず保障する体制を整えた。
・市内11校から約60人が集まる合同開催方式で、広域自治体の移動問題に対応しながら専門団体による指導の質も確保した。

自治体名 福島県いわき市
人口規模 約32万人(2024年時点)
中学校数 公立中学校 約24校
運営形態 体育協会・総合型地域スポーツクラブ・スポーツ施設・民間企業・高校等(派遣型・イベント型・地域連携)
対象競技 陸上、水泳、ソフトボール、バスケットボール、サッカー、剣道、野球、バレーボール、ソフトテニス、バドミントン(運動部)、合唱、コンピュータ、美術(文化部)計13種目
保護者負担額 調査時点で未公表

取り組みの概要

いわき市は令和6年度(2024年度)から3年間の計画で、公立中学校の休日部活動の「地域展開」モデル事業を本格始動させました。同市は国有識者会議の提言を受け、「地域移行」という従来の呼称を「地域展開」に改称しました。これは「学校と地域の二項対立の印象を与えかねない」という指摘を踏まえ、地域全体で連携するという狙いをより的確に表現するための変更です。令和9年度(2027年度)の休日部活動完全地域展開を目標に、段階的な体制整備を進めています。

特徴的な取り組み

  • 「地域展開」への改称: 国有識者会議の方向性に先んじて「地域移行」から「地域展開」に呼称を変更。学校と地域が対立するのではなく、協働するという理念を明確化した。
  • 段階的な種目拡大: 令和6年度は剣道・サッカー・陸上・バスケットボール・ソフトボール・ソフトテニス・バドミントン・合唱・美術・コンピュータの10種目でスタートし、令和7年度に野球とバレーボールを追加して13種目に拡大した。
  • 部活未所属生徒への開放: 令和7年度から、部活動に所属していない生徒もモデル事業への参加が可能となり、スポーツ・文化活動の機会を広く提供する体制を整えた。
  • 地域団体との連携: 体育協会や市剣道連盟など地域の専門団体が指導を担い、複数校から生徒を集めて合同で実施。剣道のモデル事業では市内11校から約60人が参加した。
  • 実行会議による推進体制: 「地域スポーツ・文化芸術創造と部活動改革に関する実行会議」を設置し、官民連携でスケジュール管理と課題解決を推進している。

課題と解決策

課題 解決策
保護者からの「送迎の困難さ」への懸念 拠点校でまとめて実施し、複数校の生徒が同一会場に集まる方式を採用。移動距離の最小化を図る。
月謝制導入時の費用負担への不安 モデル事業期間中の費用設定についての検討を継続中。保護者への丁寧な説明を実施。
指導者確保 体育協会・スポーツ施設・民間企業・高校等から幅広く指導者を確保。剣道連盟等の競技団体が直接担当。
安全管理への懸念 専門団体が責任を持って安全管理を担う体制を整備。参加者アンケートでも「戸惑いがない」との評価が多数。

成果・効果

令和6年度の剣道モデル事業では、市内11校から約60人が植田東中学校に集まり、市剣道連盟の指導者5人が木刀による基本技・礼儀作法・武道の精神伝承など段階的な指導を実施しました。参加した生徒からは「基礎から非常にレベルが高い内容だった」との好評が得られています。また、生徒アンケートでは参加者の多くが「また参加したい」と回答し、地域指導者に対して「戸惑いがない」という意見が多数報告されています。

出典

→ 原文: 部活動の地域展開について|いわき市教育委員会

→ 参考: いわき市 公立中学校の休日部活動 地域移行に向けたモデル事業始動(いわき民報 2024年11月)

→ 参考: いわき市「地域展開」に改称 中学の休日部活動巡り(いわき民報 2025年4月)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

いわき市は令和6年度から、「地域移行」という呼称を「地域展開」に改めた。この変更は国の有識者会議の方向性に先んじて市独自の判断で行われたものであり、学校と地域が対立するのではなく協働するという理念を明確にするための措置だ。「地域移行」が持つ「学校から地域へ移す」という二項対立のニュアンスを排し、地域全体で子どもたちのスポーツ・文化活動を支えるという方向性を呼称に反映させた点は、この市の政策姿勢を端的に示している。令和9年度(2027年度)の完全地域展開を目標に、剣道・サッカー・陸上など10種目でスタートし、翌年度に野球とバレーボールを加えて13種目に拡大した段階的な体制整備も、計画的な実績として注目できる。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

この取り組みで特に注目すべき点は、令和7年度から部活動に所属していない生徒の参加も認めたことだ。従来の部活動は入部を前提とした仕組みであったが、いわき市の地域展開モデルでは所属の有無を問わずスポーツ・文化活動に参加できる体制を整えた。これはスポーツ機会へのアクセスを広げる観点から、地域移行の本来の目的に直結する取り組みといえる。また、市剣道連盟や体育協会など地域の専門団体が指導を担う構造も特徴的だ。剣道のモデル事業では市内11校から約60人が植田東中学校に集まり、5人の指導者が木刀を用いた基本技・礼儀作法・武道精神の伝承まで段階的に指導した。参加した生徒からは「基礎から非常にレベルが高い内容だった」との評価が寄せられており、競技団体が直接指導に入ることで高い教育効果が生まれていることが確認されている。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

いわき市の事例は、面積が広い地方都市が部活動地域展開を進める際の参考として意義がある。複数校の生徒を一か所に集める合同実施方式は、広域自治体が抱える移動問題への現実的な回答として機能しており、指導者の集約と安全管理の一元化にも寄与している。他方、部活動未所属の生徒が参加するためには、保険加入・参加申込・緊急連絡先管理といった事務手続きを学校外で完結させる仕組みが必要であり、これを担う事務局機能の整備が導入上の課題となる。呼称変更という発信型の政策姿勢も、地域住民や保護者との合意形成を進める手段として他自治体の参考になるだろう。

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