【事例】石川県の部活動地域展開 ─ 11市町実証・震災対応スクールバス活用・加賀市3コマ制マルチスポーツ体験会116名参加
・石川県が令和6年能登半島地震の復興と並行して11市町で実証を進めた伴走支援モデル
・加賀市の3コマ制マルチスポーツ体験会116名参加・スクールバス活用実証の運営設計
・珠洲市の震災対応・軟式野球先行移行戦略と複数自治体共同クラブ運営の検討プロセス
| 自治体名 | 石川県(県内19市町のうち11市町で実証) |
|---|---|
| 人口規模 | 1,095,435人(面積4,186km²) |
| 中学校数 | 公立中学校85校(生徒数27,677人・部活動1,048部) |
| 運営形態 | 都道府県主導型 ― 石川県教育委員会保健体育課が伴走支援・市町別に運営団体を選定 |
| 対象競技 | 野球・バスケットボール・相撲・陸上・卓球・ソフトテニス等(11市町で実証) |
| 保護者負担額 | 市町ごとに設定/石川県スポーツリーダーバンク登録指導者で量・質の確保 |
取り組みの概要
石川県では、令和6年能登半島地震の復興と並行して、令和6年度のスポーツ庁「地域スポーツクラブ活動体制整備事業(地域スポーツクラブ活動への移行に向けた実証事業)」を活用し、県内19市町のうち11市町(加賀市・小松市・野々市市・金沢市・内灘町・津幡町・かほく市・志賀町・中能登町・穴水町・珠洲市)に業務委託する形で実証を実施しました。県教育委員会保健体育課が伴走支援を行い、各市町に対して個別に指導助言を実施。生徒数は平成26年33,350人→令和6年28,839人と10年で約14%減少し、部員数も25,041人→18,809人と4分の1減少する中、震災被災地の珠洲市など複数自治体で受け皿団体・指導者の確保が急務となっています。
特徴的な取り組み
- 加賀市の3コマ制マルチスポーツ体験会(116名・指導者40名): 加賀市内中学校1・2年生を対象に、加賀市中央公園内体育施設で地域クラブ説明体験会を開催。1コマ目(陸上・バスケ・卓球・ソフトボール)→2コマ目(陸上・野球・ソフトテニス・卓球)→3コマ目(陸上・ソフトテニス・卓球)の3コマ制で複数競技を体験できる仕組みを構築。会場集約で移動時間を短縮し、各スポーツ競技協会との連携で用具を学校から共有調達することで開催費を圧縮しました。
- 珠洲市の震災対応・先行軟式野球移行: 仮設住宅建設で各競技会場が使用不可となる中、まず指導者確保に目処が立った「軟式野球」競技を先行的に地域クラブに移行。今後はバスケットボール・相撲を順次移行予定。被災により単一自治体での試合人数が揃わない事例があり、複数自治体共同のクラブ運営体制構築も検討されています。
- 加賀市のスクールバス活用実証(令和7年8月開始): 保護者アンケートで「中学生保護者の93%は送迎に協力可能・7%が協力困難」と判明。移動手段のない7%の生徒も参加できるよう、企画課・教育庶務課と連携してスクールバス・乗合タクシー・公共交通機関を組み合わせた移動支援を令和7年度8月から実施予定。送迎区間は中学校〜地域クラブ会場の20〜30分程度。
- アンケート回答率10%→45%への改善: 令和5年度の保護者アンケート回答率10%という低水準を、令和6年度はアンケート依頼文配布・コドモン配信・保護者懇談会待合室QR掲示の3経路化で45%まで向上。生徒・保護者の実態を把握する基盤を構築しました。
- 野々市市のリモート事務局委託: 2校合同の地域クラブ運営において、保護者連絡調整・月会費徴収・指導者派遣・会場確保・指導者管理・謝金支払等の事務局運営を「リモート事務局」として民間に委託。市教委は支払業務・補助金申請・金銭出納など人的参画でサポートする役割分担を実現しました。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 被災後の各競技会場使用不可・遠征費高騰(珠洲市) | 指導者確保に目処が立った野球競技を先行移行・将来的に複数自治体共同クラブ運営を検討 |
| 移動手段がない生徒の参加困難(加賀市7%) | 企画課・教育庶務課と連携しスクールバス・乗合タクシー・公共交通の組合せで令和7年度8月から実証実施 |
| 受け皿活動団体・指導者の量と質の確保 | 石川県スポーツリーダーバンク(人材バンク)登録指導者を県HPで公表・各種スポーツ・レク指導者を発掘登録、県スポーツ協会・レクリエーション協会・障害者スポーツ協会と連携 |
| 兼職兼業届を出す教職員の割合が全国平均より少ない | 校長会・部活動顧問会等で繰り返し説明、PTA総会で取組周知、地域クラブ募集チラシ配布で混乱なく開設 |
成果・効果
令和6年度は11市町で実証事業を実施し、加賀市の地域クラブ説明体験会では中学生116名・指導者40名が参加。3コマ制でマルチスポーツを試せる仕組みは「他校の生徒と一緒に大学生などから教わることができ良い刺激になり、知識・技術の向上ができ良かった」(野々市市保護者)と高評価を得ました。アンケート回答率は10%→45%へ4.5倍に改善し、保護者93%が送迎協力可能と判明。震災被災地の珠洲市では軟式野球の先行移行が成功し、他競技への波及が期待されています。県スポーツリーダーバンクの登録更新と各種スポーツ・レク指導者の発掘により、質の高い指導者を市町に派遣する仕組み構築も進展。県研修会には2日間で延べ130名(61人+69人)が参加し、加賀市単独でも4回研修で延べ75名が受講するなど、指導者の質的向上も並行して進んでいます。
出典
→ 原文: スポーツ庁「令和6年度地域スポーツクラブ活動体制整備事業 地域スポーツクラブ活動への移行に向けた実証事業 石川県」
→ 参考: 石川県教育委員会 保健体育課
💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント
石川県モデルの最大の特徴は、令和6年能登半島地震という極めて困難な状況下で実証事業を継続し、被災自治体の珠洲市・穴水町を含む11市町で取組を進めた点にあります。震災被災地では各競技会場が仮設住宅建設で使用不可、奥能登以南への遠征回数が増加、被災者である保護者への経済的負担増という三重苦の中、珠洲市は「指導者確保に目処が立った競技から先行移行する」という現実的な戦略を選択しました。完璧な体制が整うのを待つのではなく、可能な競技から着手するこの段階的アプローチは、人口減少や指導者不足に悩む全国の中山間地・離島自治体にも応用できます。
もう1点注目すべきは、加賀市の「3コマ制マルチスポーツ体験会」です。地域クラブ移行で多くの自治体が陥るのは「単一競技の継続」に終始するパターンですが、加賀市は会場集約・3コマ制・複数競技協会連携・用具学校連携の4要素を組み合わせ、子どもたちが1日で複数競技を試せる体験会を設計しました。陸上・バスケ・卓球・野球・ソフトテニス・ソフトボールなど6競技を同日提供する構成は、競技選択の幅を広げる手法として全国の市町村にとって参考になる事例です。
📋 他都道府県が導入する際の想定ハードルと解決策
石川県モデルで他都道府県が学ぶべきは「県の伴走支援」のあり方です。多くの都道府県が市町村に権限委譲する中、石川県は19市町に対して個別ヒアリングを実施し、県の伴走支援内容を市町ごとに調整しています。これには事務局体制の充実が前提となり、県教育委員会保健体育課に伴走支援担当者の専属配置(最低3〜5名)が必要です。スポーツ庁の地域スポーツクラブ活動体制整備事業(県分)と県単独予算を組み合わせて、専属職員の配置から始めるのが現実的なスタートラインです。
加賀市の3コマ制マルチスポーツ体験会を導入する際は、会場集約が可能な体育施設と、複数競技協会との同時連携体制が必要です。会場が分散している自治体では2コマ制に絞る、競技協会が県単位でしか組織化されていない地域では県スポーツ協会経由で各競技団体に依頼するなどの工夫が必要です。アンケート回答率45%への改善(コドモン配信+QR掲示)は他自治体でも即座に取り入れ可能で、特にコドモン等の保護者向け連絡アプリを既に導入している自治体は、追加コストほぼゼロで実施できる即効施策です。
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