【事例】石川県加賀市の部活動地域展開 ─ 教育委員会直営・会費0円で7種目250名超が参加
・石川県加賀市が会費0円・保険料800円/年で中学生250名超を集めた地域クラブ活動の仕組み
・教育委員会直営×退職教員コーディネーターという行政主導型の運営体制の詳細
・少子化が進む地方都市が7種目・75名指導者を確保した取り組みのポイント
| 自治体名 | 石川県加賀市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約6.2万人(61,686人) |
| 中学校数 | 6校(生徒数1,455名) |
| 運営形態 | 加賀市教育委員会(行政直営型) |
| 対象競技 | 陸上競技、野球、バレーボール、バスケットボール、ソフトテニス、卓球、ソフトボール(7種目) |
| 保護者負担額 | 会費0円(スポーツ安全保険料:生徒1人あたり800円/年) |
取り組みの概要
加賀市は石川県南部に位置する人口約6.2万人の市で、6校の公立中学校に1,455名の生徒が在籍しています。少子化の影響で生徒数は15年間でほぼ半減しており、女子ソフトボール部の合同チーム化や、複数の部活が令和7年度からの入部停止に追い込まれるなど、学校単独での部活動維持が困難な状況が続いています。
こうした課題を受け、加賀市は令和4年度から検討会を設置し、令和5年度には推進委員会を立ち上げて議論を重ねてきました。その結果、令和6年8月より加賀市教育委員会が直営する形で「地域クラブ」を開設。陸上競技・野球・バレーボール・バスケットボール・ソフトテニス・卓球・ソフトボールの7種目(7クラブ)で地域クラブ活動を開始しました。
大きな特徴は会費を0円に設定したことです。保護者の経済的負担は年間800円のスポーツ安全保険料のみで、令和6年8月〜令和7年3月の活動期間を通じて、中学1・2年生の約30%にあたる250名超が参加しています。
特徴的な取り組み
- 教育委員会による直営運営と統括コーディネーターの配置:運営主体を加賀市教育委員会とし、各学校・競技協会・保護者との連絡調整を担う統括コーディネーター1名を配置しました。この人物は退職教員であり市スポーツ協会とも深いつながりがあるため、スムーズな調整が実現しました。
- 会費0円・保険料800円/年の低負担モデル:全7クラブの会費を無料に設定(保険料800円/年のみ)することで、経済的な参加障壁を取り除きました。参加した生徒の59%が「より専門的な指導が受けられること」を満足点として挙げており、競技力向上と費用負担軽減の両立を実現しています。
- 競技協会を通じた75名の指導者確保:加賀市各スポーツ競技協会会員・同協会の推薦者・市内教職員を対象に指導者を募集。75名(男性57名・女性18名)の指導者を確保し、令和6年6月に指導者講習会(延べ4回・75名修了)を実施しました。約9割が競技協会会員であり、より専門的な指導体制を整備しています。
- 段階的な広報と体験会の実施:令和6年4月に地域クラブ説明体験会(参加者116名・指導者40名)を開催し、全6中学校の新入生説明会・保護者説明会・PTA総会でも繰り返し周知を行いました。その結果、地域クラブ開設時に混乱なく250名超の参加者を集めることができました。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 15年で生徒数がほぼ半減し、部活動の維持が困難(入部停止が相次ぐ) | 令和6年8月より7種目の地域クラブを開設。複数校の生徒が合同で参加できる環境を整備 |
| 指導者の確保(75名が必要) | 加賀市各スポーツ競技協会に呼びかけ、市内教職員とあわせて75名を確保。指導者講習会を計4回実施し全員修了 |
| 生徒の移動手段がなく参加できない生徒がいる | 令和7年8月から部活動で活用していたスクールバスの転用と乗合タクシー・公共交通機関の活用を検討・実施予定 |
| 教員の兼業届提出率が全国平均より低く、地域クラブへの教員参加が少ない | 校長会・部活動顧問会での繰り返し説明と「加賀市部活動改革プラン」の周知により理解促進を継続 |
成果・効果
令和6年8月に7種目の地域クラブを開設し、同年3月末時点で中学1・2年生の約30%に相当する250名超が参加しました。種目別の参加者数は、陸上競技65名・バレーボール62名・野球39名・バスケットボール28名・ソフトテニス26名・卓球20名・ソフトボール7名となっています。
令和6年12月に実施した生徒・保護者アンケートでは、参加者の59%が「より専門的な指導が受けられること」を満足点として挙げました。また、推進委員会を年3回・担当者会議を年3回実施することで、地域クラブ運営に関わる課題(活動場所・消耗品・用具等)を関係者間で共有する体制が整いました。
出典
→ 原文: 令和6年度地域スポーツクラブ活動体制整備事業 実証事業報告書(石川県加賀市)|スポーツ庁
💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント
加賀市の事例で最も際立っているのは「会費0円」という思い切った設定です。通常、地域クラブは月額2,000〜5,000円程度の会費を設定することが多い中、保険料(800円/年)以外の保護者負担を一切排除したことで、参加率約30%という高い数字を実現しました。行政が直接運営するからこそ可能な「経済的バリアゼロ」モデルです。
もう一つのポイントは「統括コーディネーターの人選」です。退職教員であり市スポーツ協会との深いつながりを持つ人物を起用したことで、学校側の理解促進と競技協会からの指導者確保を同時に推進できました。コーディネーターは校長会・部活動顧問会・スポーツ協会理事会への出席、地域クラブ開催日の巡回まで幅広く担い、75名の指導者確保と混乱のない開設につながっています。
現在の課題は「生徒の移動手段」です。アンケートで参加できない理由として移動手段の不足が挙がったため、令和7年8月からスクールバスの転用を予定しています。この「会費0円+移動支援」の組み合わせが実現すれば、参加率のさらなる向上が期待できます。
📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策
「会費0円モデル」を他自治体が導入するには、国の実証事業補助金の活用が前提となります。加賀市の場合もスポーツ庁の実証事業として補助金を受けており、恒常的な財源確保は今後の課題です。会費無料の持続可能性を検討する際は、段階的に少額の会費を設定していく移行期間を設けることが現実的です。また、統括コーディネーターの人選は行政・学校・競技協会の三者に精通した退職教員や元スポーツ協会職員など「顔のきく人物」を選ぶことが成功の鍵となります。
CONSULTING / 専門家に相談
受け皿団体の組織整備・経営について
専門家に相談しませんか?
設立手続きの進め方・行政との調整・資金計画など、
総合型地域スポーツクラブ特化のコンサルティングをご提供しています。