トップ 事例を探す 石川県 【事例】石川県加賀市の部活動地域展開 ─ 教育委員会直営・会費0円で7種目250名超が参加
全種目 👥 5~10万人 🏫 中規模校(150〜300人) 📍 石川県

【事例】石川県加賀市の部活動地域展開 ─ 教育委員会直営・会費0円で7種目250名超が参加

公開:2026.05.02 更新:2026.05.17
この記事でわかること

・教育委員会が7種目の地域クラブを直営し、統括コーディネーター1名で関係者調整を一元化している。
・会費0円・保険料800円/年の低負担で中学1・2年生の約30%にあたる250名超が参加している。
・競技協会経由で75名の指導者を確保し、約9割が協会会員として専門指導体制を整えている。

自治体名 石川県加賀市
人口規模 約6.2万人(61,686人)
中学校数 6校(生徒数1,455名)
運営形態 加賀市教育委員会(行政直営型)
対象競技 陸上競技、野球、バレーボール、バスケットボール、ソフトテニス、卓球、ソフトボール(7種目)
保護者負担額 会費0円(スポーツ安全保険料:生徒1人あたり800円/年)

取り組みの概要

加賀市は石川県南部に位置する人口約6.2万人の市で、6校の公立中学校に1,455名の生徒が在籍しています。少子化の影響で生徒数は15年間でほぼ半減しており、女子ソフトボール部の合同チーム化や、複数の部活が令和7年度からの入部停止に追い込まれるなど、学校単独での部活動維持が困難な状況が続いています。

こうした課題を受け、加賀市は令和4年度から検討会を設置し、令和5年度には推進委員会を立ち上げて議論を重ねてきました。その結果、令和6年8月より加賀市教育委員会が直営する形で「地域クラブ」を開設。陸上競技・野球・バレーボール・バスケットボール・ソフトテニス・卓球・ソフトボールの7種目(7クラブ)で地域クラブ活動を開始しました。

大きな特徴は会費を0円に設定したことです。保護者の経済的負担は年間800円のスポーツ安全保険料のみで、令和6年8月〜令和7年3月の活動期間を通じて、中学1・2年生の約30%にあたる250名超が参加しています。

特徴的な取り組み

  • 教育委員会による直営運営と統括コーディネーターの配置:運営主体を加賀市教育委員会とし、各学校・競技協会・保護者との連絡調整を担う統括コーディネーター1名を配置しました。この人物は退職教員であり市スポーツ協会とも深いつながりがあるため、スムーズな調整が実現しました。
  • 会費0円・保険料800円/年の低負担モデル:全7クラブの会費を無料に設定(保険料800円/年のみ)することで、経済的な参加障壁を取り除きました。参加した生徒の59%が「より専門的な指導が受けられること」を満足点として挙げており、競技力向上と費用負担軽減の両立を実現しています。
  • 競技協会を通じた75名の指導者確保:加賀市各スポーツ競技協会会員・同協会の推薦者・市内教職員を対象に指導者を募集。75名(男性57名・女性18名)の指導者を確保し、令和6年6月に指導者講習会(延べ4回・75名修了)を実施しました。約9割が競技協会会員であり、より専門的な指導体制を整備しています。
  • 段階的な広報と体験会の実施:令和6年4月に地域クラブ説明体験会(参加者116名・指導者40名)を開催し、全6中学校の新入生説明会・保護者説明会・PTA総会でも繰り返し周知を行いました。その結果、地域クラブ開設時に混乱なく250名超の参加者を集めることができました。

課題と解決策

課題 解決策
15年で生徒数がほぼ半減し、部活動の維持が困難(入部停止が相次ぐ) 令和6年8月より7種目の地域クラブを開設。複数校の生徒が合同で参加できる環境を整備
指導者の確保(75名が必要) 加賀市各スポーツ競技協会に呼びかけ、市内教職員とあわせて75名を確保。指導者講習会を計4回実施し全員修了
生徒の移動手段がなく参加できない生徒がいる 令和7年8月から部活動で活用していたスクールバスの転用と乗合タクシー・公共交通機関の活用を検討・実施予定
教員の兼業届提出率が全国平均より低く、地域クラブへの教員参加が少ない 校長会・部活動顧問会での繰り返し説明と「加賀市部活動改革プラン」の周知により理解促進を継続

成果・効果

令和6年8月に7種目の地域クラブを開設し、同年3月末時点で中学1・2年生の約30%に相当する250名超が参加しました。種目別の参加者数は、陸上競技65名・バレーボール62名・野球39名・バスケットボール28名・ソフトテニス26名・卓球20名・ソフトボール7名となっています。

令和6年12月に実施した生徒・保護者アンケートでは、参加者の59%が「より専門的な指導が受けられること」を満足点として挙げました。また、推進委員会を年3回・担当者会議を年3回実施することで、地域クラブ運営に関わる課題(活動場所・消耗品・用具等)を関係者間で共有する体制が整いました。

出典

→ 原文: 令和6年度地域スポーツクラブ活動体制整備事業 実証事業報告書(石川県加賀市)|スポーツ庁

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

加賀市は教育委員会が地域クラブを直営する形で7種目の運営を担い、退職教員でありかつ市スポーツ協会とも深いつながりを持つ人物を統括コーディネーターに据えている。同じく直営型を採る茨城県神栖市や教育委員会直轄で運営する愛知県豊明市愛知県常滑市と同様、行政が責任主体となることで学校・競技協会・保護者の調整を一元化している。加賀市の場合は校長会・部活動顧問会・スポーツ協会理事会への出席に加え開催日の巡回まで一人のコーディネーターが担い、75名の指導者確保と混乱のない開設につながった。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

加賀市は会費を0円に設定し、保護者の負担を年間800円のスポーツ安全保険料のみに抑えた。月額2,000円の会費を設定する静岡県磐田市や月額1,000円の奈良県橿原市と比較しても突出して低い負担水準である。スポーツ庁の実証事業補助金を活用しているため恒常的な財源確保は今後の論点だが、令和6年8月から令和7年3月の活動期間に中学1・2年生の約30%にあたる250名超が参加し、参加者の59%が「より専門的な指導が受けられること」を満足点に挙げた。経済的な参加障壁の撤廃と競技協会経由の専門指導が、参加率と満足度の双方を押し上げている。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

加賀市は令和7年8月から、部活動で活用していたスクールバスを地域クラブに転用するとともに、乗合タクシーや公共交通機関の活用を検討・実施する予定である。アンケートで参加できない理由として移動手段の不足が挙がったことへの対応であり、会費0円のモデルに移動支援が組み合わさることで、学校から離れた生徒の参加機会がさらに広がる見込みである。

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