【事例】東京都江東区の部活動地域展開 ─ 24校311部を単独型・拠点校型に整理する「江東区スタイル」
・江東区が24校311部を「単独型」「拠点校型・合同実施型」の2パターンに整理した移行設計
・受け皿づくりと地域活動の集約・情報提供を同格に置く「江東区スタイル」の考え方
・中学生保護者と小学6年生保護者で負担許容額が異なる調査結果と会費設計への示唆
| 自治体名 | 東京都江東区 |
|---|---|
| 人口規模 | 約54万人(2026年時点) |
| 中学校数 | 区立中学校・義務教育学校(後期課程)24校 |
| 運営形態 | 区(教育委員会)が推進計画を策定し、運営団体(民間事業者への委託)が地域クラブ活動を運営 |
| 対象競技 | 運動部・文化部の全種目(区立中学校等に計311部=運動部190部・文化部121部を設置) |
| 保護者負担額 | 調査時点で未公表(意識調査では中学生保護者の負担許容額は月額1,000〜3,000円が計59.1%) |
取り組みの概要
江東区は、区立中学校・義務教育学校(後期課程)24校を対象に、令和8年度から令和10年度までを計画期間とする「学校部活動の地域連携・地域移行に関する推進計画」を策定しました。区立中学校等には令和6年3月末時点で部活動が計311部設置され、部員数は6,868名、生徒数は8,280名(令和6年5月1日時点)です。区は令和6年7月に、生徒・教員・中学生保護者・小学6年生・小学6年生保護者の5区分で意識調査を実施し、生徒4,561名、教員274名、中学生保護者2,523名から回答を得ました。この結果をふまえ、計画期間中の達成目標を「休日の学校部活動を地域クラブ活動へ移行し、教員の負担がない指導体制を構築」と定めています。区立中学校等の部活動を学校教育から社会教育分野へ移行し、区内で活動するスポーツ・文化芸術団体が一体となる環境の創出を推進方針に掲げました。
特徴的な取り組み
- 「江東区スタイル」という2本柱の設計: 重点取組1「地域クラブ活動の推進(地域移行)」と重点取組2「地域活動の集約・一体的紹介(地域移行)」を総称して「江東区スタイル」と呼びます。移行の受け皿づくりと、生徒が選ぶための情報提供をセットで制度化した点が特徴です。
- 単独型・拠点校型の2パターンに整理: 地域移行の想定パターンを、現在の学校部活動を母体に休日のみ地域の指導者が指導する「単独型」と、拠点校方式や近隣校との合同活動に地域の指導者が入る「拠点校型・合同実施型」の2つに整理しました。いずれも平日の学校部活動と休日の地域クラブ活動を連動させる設計です。
- 教員の兼職兼業を移行スキームに組み込む: 指導を希望する教員が運営団体に雇用され、他の指導者と同様の管理と報酬のもとで休日指導を継続できるよう、兼職・兼業の手続きを整備します。部活動指導員・外部指導員がそれぞれ「部活動指導員兼業型」「外部指導員兼業型」として地域クラブ指導者に登録するルートも計画に明記されています。
- 意識調査で需要のギャップを可視化: 生徒調査では約2割が「入学前にやりたかった種目や活動が学校の部活動になかった」と回答しました。学校の部活動にない種目・分野で参加したい活動は、運動系で「ダンス」、文化系で「軽音楽・音楽」が最多となっています。
- 令和7年度中に運営体制を構築: 改革推進期間の最終年度である令和7年度中に令和8年度以降の運営団体・実施主体を整備し、各学校と協議して学校ごとの地域移行計画を策定したうえで、全校での試行運用を実施する工程を示しました。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 多くの学校と部活動が設置されているため、地域移行には多数の指導者が必要となる一方、心身の発達途上にある生徒を指導するうえで指導者の質の確保も欠かせない | 運営団体と区が連携し、指導者に対する研修体制を設ける |
| 地域クラブ活動では指導者の人件費など運営経費が発生し、保護者が現行の学校部活動より高額な会費を負担することになる | 持続的な運営に必要な会費徴収は前提としつつ、可能な限り低廉な会費設定を求める。経済的に困窮する家庭の中学生に対する参加費用の支援等を重要な検討課題として位置付ける |
| 指導を希望する教員が、地域移行後に指導を続ける制度上の受け皿がない | 運営団体に雇用され、他の指導者と同様の管理と報酬のもとで指導できるよう、休日指導に係る兼職・兼業の手続きを整備する |
| 当面は地域クラブ活動の運営・指導に直接関わらない競技団体も多く、関係者間の合意形成が進みにくい | 指導の予定がない各種目の団体とも部活動改革に関する意見交換や協議を密に行い、合意形成を図りながら連携する |
| 生徒が希望する種目・分野が在籍校にない | 区が定めた一定の要件を満たした活動を「地域クラブ活動」として集約し、生徒が主体的に選択できる体制を構築する |
成果・効果
令和6年7月の意識調査では、費用負担について中学生保護者の59.7%が「メリットがあれば、受け入れてもよい」、31.6%が「持続可能な仕組みのためには必要である」と回答しました。負担可能額は中学生保護者で月額1,000円が最多(22.3%)、月額1,000〜3,000円が計59.1%を占めています。一方、小学6年生保護者では月額5,000円が最多(27.7%)、月額3,000〜5,000円が計52.2%と、下の学年ほど高い負担を許容する傾向が現れました。ただし中学生保護者の8.7%は「0円(負担したくない)」を選択しており、区は費用設定次第で参加できなくなる生徒が出る可能性を計画に明記しています。
教員側の調査では、回答者の約9割が運動部・文化部(または両方)の顧問を担い、そのうち約半数(46.4%)が担当種目の経験が「全くない」と回答しました。休日等の勤務時間外に兼職兼業で有償指導を行いたいと答えたのは計29.0%にとどまり、文化部顧問では「したくない」「どちらかというとしたくない」が計88.3%(運動部顧問は計61.3%)に達しています。指導を希望する教員の勤務先としては「勤務地の生徒が参加する地域クラブ」の選択率が80.8%と最も高い結果でした。
なお、部活動指導員や外部指導員などの外部指導者を配置している部活動は121部(38.9%)に達しており、区はこれまで積み上げてきた地域連携の仕組みを活かす形で地域移行のスタイルを構築する方針です。
出典
→ 原文: 江東区「部活動の地域連携・地域展開の推進」
→ 原文: 江東区「江東区立中学校・義務教育学校(後期課程)学校部活動の地域連携・地域移行に関する推進計画(令和8年度〜10年度)素案」(PDF)
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