【事例】栃木県大田原市の部活動地域展開 ─ 教育委員会運営型「若草女子バスケ・金田北女子バレー」2クラブで人材バンク7名・受益者負担月4,231円試算
・大田原市が教育委員会運営型で地域クラブを立ち上げた背景と運営体制
・人材バンク7名登録者の属性構成と多世代交流型運営の効果
・受益者負担額試算(月4,231円・1回1,976円)と持続可能性の検討プロセス
| 自治体名 | 栃木県大田原市 |
|---|---|
| 人口規模 | 69,470人(面積354.36km²) |
| 中学校数 | 公立中学校8校(生徒数1,694人・部活動57部) |
| 運営形態 | 市区町村運営型 ― 大田原市教育委員会が直接運営主体 |
| 対象競技 | バスケットボール・バレーボール(女子)の2クラブ2種目 |
| 保護者負担額 | 会費0円(実証事業中)/スポーツ安全保険料800円・年 |
取り組みの概要
大田原市では、令和6年度のスポーツ庁「地域スポーツクラブ活動体制整備事業(地域スポーツクラブ活動への移行に向けた実証事業)」を活用し、市教育委員会が運営主体となって2つの女子地域クラブ「若草女子バスケットボールクラブ」「金田北女子バレーボールクラブ」を令和6年10月から開始しました。市内中学校の部活動数(57部活)に対し、生徒数は令和2年の約1,800人から令和11年に約1,500人へ減少する見通しで、団体競技を学校単独で実施することが困難になっていることが背景にあります。市は休日部活動の地域クラブへの移行と並行して、平日部活動の活動日数(週4日→週3日)見直しと活動時間の夜間化も実施しました。
特徴的な取り組み
- 地域クラブ活動指導員人材バンク(7名)の設置: 令和6年12月に設置した人材バンクには会社員・部活動指導員・団体職員・会計年度任用職員・無職など多様な属性の指導者を登録。年代も30代〜60代以上にわたり、JSB公認コーチ・剣道段位取得者などの有資格者も含まれます。
- 多世代交流型の運営: 若草女子バスケでは中学生10名に加え地元の高校生・小学生と合同練習を実施。金田北女子バレーでは小学生・地元ママさんバレーチームと合同で活動し、参加生徒の45%・保護者の86%が「多世代交流に賛成」と回答しました。
- 中学校部活動地域クラブ活動推進連携会議: 教育委員会(教育総務課・学校教育課・生涯学習課・スポーツ振興課)と首長部局(文化振興課)で構成する庁内横断会議を令和6年度に4回開催。施設使用料の減免措置や運営ルールを継続的に検討しています。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 生徒数減少と教員数減で団体競技の単独校維持が困難 | 近隣校の生徒が拠点校に集まる「拠点校部活動」と地域クラブの併用で活動機会を確保 |
| 受け皿となる総合型地域スポーツクラブが少なく、運営団体の確保が困難 | 市教育委員会自らが運営主体となり、市スポーツ協会・市スポーツ少年団との連携を強化して人材を確保 |
| 地域クラブ運営の持続可能性(スポーツ活動費365,400円・保険料23,888円) | 受益者負担額を試算(月額4,231円・1回ごと1,976円)したうえで、企業協賛・行政支援を組み合わせた仕組みを設計 |
成果・効果
令和6年10月〜令和7年1月の4ヶ月間、参加者23人・延べ197人で実施。生徒アンケートでは「次年度も休日地域クラブ活動に参加したい」が74%(とてもそう思う44%+まあそう思う30%)、保護者アンケートでも「次年度も地域クラブ活動として実施してほしい」が71%(19%+33%+38%※集計含む)に達しました。教職員からは「顧問が休めるようになり負担軽減につながった」「生徒が専門的な知識や技能を習得できた」との評価があり、平日部活動指導員を兼務する地域クラブ指導者を配置する工夫により、平日と休日の指導の一貫性も確保できています。
出典
→ 原文: スポーツ庁「令和6年度地域スポーツクラブ活動体制整備事業 地域スポーツクラブ活動への移行に向けた実証事業 栃木県大田原市」
→ 参考: 大田原市公式ホームページ「中学校部活動の地域移行及び地域クラブ活動指導者人材バンクの設置について」
→ 参考: 大田原市公式ホームページ「大田原市地域クラブ活動等の環境整備について」
💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント
大田原市モデルの特徴は、受け皿となる総合型地域スポーツクラブが市内に少ないという制約の中で、教育委員会自身が運営主体となり「市区町村運営型」を選択した点にあります。市が直接運営することでスタートアップの早さを確保しつつ、収支構造を3区分(スポーツ活動費・スポーツ活動費保険料・事務局運営費)に分けて受益者負担額を試算する透明性の高い検証を行いました。月額4,231円・1回ごと1,976円という試算結果は、低廉な負担額で運営を維持するには行政支援・企業協賛が不可欠であることを明確に示しており、他自治体が受益者負担額を設計する際の参考データになります。
もうひとつの特筆点は、平日部活動も含めた包括的な見直しを並行実施した点です。休日活動の地域移行だけでなく、平日活動日数を週4日から週3日に削減し、活動時間を放課後から夜間に変更することで、地域クラブ指導者と部活動顧問の連携を平日・休日ともに途切れさせない運用設計が施されています。指導者の連続性が保護者・生徒の不安払拭につながる典型例といえます。
📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策
教育委員会運営型は立ち上げが早い一方、人材バンクの規模が課題になります。大田原市の登録7名は2クラブ運営には足りていますが、市内57部活のうち団体競技をすべて地域移行する場合は数十名規模の指導者確保が必要です。市は今後、スポーツ少年団や部活動指導者講習会、市ホームページ・広報メールなど多経路で人材バンク登録を周知する方針を示しています。導入を検討する自治体は、初年度は2〜3クラブの実証から開始し、人材バンク登録者を毎年5〜10名ペースで増やしていくロードマップが現実的です。
また、施設使用料の取り扱いも全庁的な課題に発展します。部活動では学校体育館の使用料は免除されますが、地域クラブは学校関係団体ではなく外部団体扱いとなるため有料化が想定されます。大田原市は教育委員会・市長部局の関係各課で連携会議を設置して継続検討中ですが、早期に減免措置の要望が関係団体から挙がっており、地域クラブ立ち上げ時には施設使用料の取扱ルール策定を同時並行で進めることが推奨されます。
CONSULTING / 専門家に相談
受け皿団体の組織整備・経営について
専門家に相談しませんか?
設立手続きの進め方・行政との調整・資金計画など、
総合型地域スポーツクラブ特化のコンサルティングをご提供しています。