【事例】山形県尾花沢市の部活動地域展開 ─ 市教委運営の「おばなざわ未来クラブ」など4形態13クラブで休日活動、保護者負担の急増と勝利優先にプロ選手の教室とスクールバスで向き合う
・令和6年11月に休日活動を地域へ移した尾花沢市の、市教委運営「おばなざわ未来クラブ」を含む4形態13クラブの受け皿
・公共施設の土曜優先貸出と全額減免、土曜限定のスクールバス運行、プロ選手を招いたスポーツ教室の取り組み
・保護者負担の急増・勝利優先・クラブチームへの移籍・広域の送迎という、展開後の小規模市が直面した課題
| 自治体名 | 山形県尾花沢市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約1.3万人(13,118人・令和7年度スポーツ庁成果報告書記載) |
| 中学校数 | 公立中学校2校(生徒290人・運動部12部)。令和8年度に2校が統合し1校となる予定 |
| 運営形態 | 行政直営+地域団体(教育委員会こども教育課教育指導室が運営する「おばなざわ未来クラブ」のほか、スポーツ少年団・保護者運営団体・クラブチームの4形態。教育委員会が「尾花沢市学校部活動の地域連携・地域移行支援協議会」を運営しコーディネーター1名を配置、市長部局の総合政策課が公共施設の調整と減免を担当) |
| 対象競技 | 女子バレーボール、ハンドボール、野球、陸上(おばなざわ未来クラブ)、剣道、サッカー、スキー、卓球、柔道、バスケットボール、男子バレーボール(令和7年度13クラブ) |
| 保護者負担額 | おばなざわ未来クラブは年額5,000円(3年生は3,000円)。スポーツ少年団・保護者運営団体・クラブチームは各団体で設定。スポーツ安全保険は生徒1人あたり800円/年 |
取り組みの概要
尾花沢市では中学校の生徒数が令和10年度に279人、令和13年度に221人まで減る見込みで、令和8年度には2校の中学校が統合する予定です。市は令和6年度に部活動の任意加入制度を導入し、生徒の活動の選択肢を広げるため「尾花沢市学校部活動の地域連携・地域移行支援協議会」を設けて休日活動の支援体制を整えてきました。令和6年4月から学校・顧問の伴走支援を受けながら休日活動の地域展開を試行し、休日活動の受け入れ組織「おばなざわ未来クラブ」を設立して、同年11月に休日活動の地域展開を完全実施しています。令和7年度は未来クラブの2年目で、休日活動は①教育委員会の「おばなざわ未来クラブ」②スポーツ少年団③保護者運営団体④クラブチームの4形態に分かれています。①〜③は平日に学校で部活動を行い学校として中体連の大会に出場し、④は地域展開を機に立ち上がったクラブチームとして中体連の大会に出場しています。協議会は設置済みで、推進計画・ガイドラインも策定済みです。
特徴的な取り組み
- 市教委が運営する「おばなざわ未来クラブ」: 女子バレーボール・ハンドボール・野球・陸上の4種目を、地域人材の指導者15人・運営スタッフ20人で、休日の毎週1回午前中に通年で行っています。参加者は1年生20人・2年生17人・3年生19人で、活動場所は市の公共施設と学校、移動はスクールバスです。教育委員会がクラブを運営し、種目ごとの運営責任者が各種目を回します。
- 4形態13クラブで休日の受け皿を分担: スポーツ少年団(剣道・サッカー・スキー2団体)、保護者運営団体(卓球2団体・柔道)、クラブチーム(バスケットボール・バレーボール)が平日夜間3回・休日午前1回程度活動し、全体で指導者44人・運営スタッフ45人が関わっています。
- 公共施設の優先貸出と全額減免: 毎週土曜日の午前中を中学生の活動日と位置づけて公共施設を優先的に貸し出し、所管課が使用料を全額減免しました。中学校体育館はキーボックスで鍵を受け渡しています。
- プロ選手を招いたスポーツ教室: 全国で活躍する本市出身の現役大学生5名による陸上教室、モンテディオ山形から講師を招いたサッカー教室(指導者・小中学生・保護者35名)、本市出身のプロ2名によるハンドボール教室を開き、技術指導とあわせて進路や生き方、人間形成の講話を行いました。
- コーディネーターによる相談と調整: 教育委員会が配置したコーディネーター1名が、協議会の開催、未来クラブの運営、受け入れ団体の立ち上げと調整、指導者研修、生徒・保護者の個別相談(7件)、他市町村との情報共有を担っています。連絡には公式LINEを使い、スクールバスの運行連絡アプリも導入しました。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 指導者謝金を含む運営費など、保護者負担が急増している | 協議会で「受益者負担と行政支援」を検討し、指導者運営経費として各団体へ支援金を支出。国の実行会議最終とりまとめを参考に、近隣市町と連携して本市の実情に合った在り方を検討する |
| 活動の運営が学校から離れ、勝利優先や生徒・保護者間のトラブルが多く発生した。勝利優先で過度な活動をする保護者運営団体も見られる | プロ選手から指導を受けるスポーツ教室を指導者研修を兼ねて開き、生徒と指導者の意識改革を図る。市の部活動等ガイドラインの遵守を、活動用消耗品の購入支援の要件にする |
| 面積が広くスクールバスの運行範囲も広いため、乗車時間を1時間以内にするには少人数でも台数を動かす必要があり、費用対効果に課題がある | スクールバスを土曜に限定して運行し、運行の効率化と運行規定の見直しを行う |
| ハンドボールクラブでは、平日・休日ともに本格的に活動したい生徒の半数以上がクラブチームへ移籍した | 一般団体やプロ選手の協力を得て体制を立て直し、クラブチームの立ち上げに向けて取り組んでいる |
| 指導者謝金が遠征などの自費負担より低く、指導者の経済的負担が大きい | 指導者への活動費・謝金について市の指針を策定し、指導者が協力しやすい環境をつくる |
成果・効果
市は、コミュニケーションツールの導入で、様々な形態で活動する団体に行政から情報を提供できるようになり、活動場所や時間帯を把握しやすくなったとしています。ただし同意が得られない団体もあり、学校や行政で様々なアプリを導入したため分かりにくいという意見もあって、全体の見直しが必要だとしています。スクールバスは活動の中止・変更の連絡が徹底されず運行管理も煩雑だったため、連絡ツールを導入しました。5月に消防本部で行った安全講習会は指導者の参加率が芳しくなかったことから、競技ごとのスポーツ教室を開いたところ指導者だけでなく生徒も参加し、市は「非常に効果的な取り組み」と評価しています。サッカー教室に参加した指導者からは「改めてサッカーを通して子供達を心身ともに育成していくことの大切さを実感しました」、生徒からは「ちょっとしたことでボールの蹴りが全然違うことに驚いた」という声がありました。
児童生徒アンケートでは「休日にスポーツ文化活動をやってみたいですか」に前向きに答えたのが小学6年生で60.9%、中学1・2年生で49%でした。一方、キャンプなど新しい活動の希望は少なく、トライアル事業は見送っています。協議会では、山間部の本市では交通支援が絶対的に必要で保護者負担が非常に大きいため、都市部と同様の扱いとせず行政支援をしていくべきとの意見が出ました。保護者からは、部活動を続けている市町があるのに地域展開を進められて不利益を被ったという苦情もあり、市は近隣市町と連携して受益者負担に大きな違いが出ないよう取り組むとしています。令和8年度には本市出身のプロ選手の「応援する会」を発足させ、所属チームから講師派遣の協力を得る予定です。
出典
→ 原文: スポーツ庁「令和7年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書 山形県尾花沢市」(報告書検索システム)
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