トップ 事例を探す 島根県 【事例】島根県益田市の部活動地域展開 ─ 中学校長会の要望書提出を機に指導者バンクを刷新、推進室設置を検討する令和9年度休日移行モデル
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【事例】島根県益田市の部活動地域展開 ─ 中学校長会の要望書提出を機に指導者バンクを刷新、推進室設置を検討する令和9年度休日移行モデル

公開:2026.07.21 更新:2026.07.21
この記事でわかること

・中学校長会が要望書を正式提出し休日部活動の運用ルールを是正した経緯
・指導者バンクを多様な関わり方に再設計した具体的な工夫
・令和9年度休日移行、令和15年度平日展開という段階的スケジュール

自治体名 島根県益田市
人口規模 約4.3万人(令和6年8月末時点)
中学校数 8校(令和8年4月1日現在)
運営形態 行政直営(益田市教育委員会学校教育課・ひとづくり推進課が「益田市部活動地域移行推進協議会」を運営し、受け皿は既存の地域スポーツクラブ・団体)
対象競技 運動部・文化部(吹奏楽部含む)全種目
保護者負担額 利用者負担が原則(具体的な負担額は基本方針上は非公表、国の財源方針に応じて今後検討)

取り組みの概要

益田市教育委員会は令和6年2月、「益田市学校部活動の地域移行に係る基本方針」を策定しました。児童生徒数の減少により運動部が単独校でチーム編成できない、文化部の吹奏楽部が大規模編成できないといった課題を受け、令和6年度から3年間を地域移行の集中取組期間と位置付け、令和9年度当初から休日のすべての部活動を地域移行することを目指しています。同年度には「益田市部活動地域移行推進協議会」を設置し、スポーツ関係団体・文化芸術団体・保護者代表・地域住民・学校関係者が協働して取組を進めています。令和7年度は同協議会が3回開催され、令和8年2月の第3回会合では、休日部活動の運用ルール是正・指導者バンクの見直し・推進体制強化という3つの具体的な論点が審議されました。

特徴的な取り組み

  • 中学校長会からの正式な要望書提出: 令和7年11月4日付で児童・生徒・保護者・職員宛てに送付した文書の内容を益田市中学校長会が検討し、令和8年1月20日付で益田市教育委員会 教育長宛てに要望書を提出しました。内容は①保護者の負担軽減と経済格差が経験格差につながらないようにする対応、②地域クラブや教室等の拡充・立ち上げ支援、③日曜開催が多い大会を土曜開催にするよう競技団体へ要望すること、④「部活動地域展開推進室」等の設置による組織的対応、の4項目です。
  • 休日部活動の運用ルールの是正: これまで土日いずれか1日を休養日とする運用でしたが、大会が日曜開催中心のため前日の土曜日にも活動する実態があり、月の半分以上の土日で活動していたことが判明しました。令和9年度以降は休日の学校部活動を原則行わない方針としつつ、大会や合同部活動の全体練習・練習試合等でやむを得ない場合は各学校の判断で活動を認め、全体としては縮小していく方向で統一しています。開始時期は運動部が新チーム、文化部が新体制発足後(6月〜秋)です。
  • 指導者バンクの見直し: 従来の指導者バンクは「顧問に代わって指導する人」のリストでしたが、ハードルの高さから人数が伸び悩んでいました。アンケートでは休日部活動がなくなった場合に兼職兼業・ボランティアで参加したいと答えた教員が33名程度にとどまり、絶対数の不足が課題として共有されています。そこで週1回の活動関与、複数クラブを担当するトレーナー、大会運営への協力など、多様な関わり方を示すことで参加のハードルを下げる再設計を進めています。

課題と解決策

課題 解決策
大会が日曜開催中心のため、休日1日を確実な休養日にできない実態があった 大会・合同練習等やむを得ない活動は各学校判断で許容しつつ、全体としては縮小していく方向で統一運用する
指導者バンクの登録者が伸び悩み、絶対数が不足している 週1回稼働・トレーナー・大会運営協力など多様な関与形態を提示し、参加のハードルを下げて登録者を増やす
部活動地域展開に関わる業務量が年々増加し、専任体制がない 令和8年度に「部活動地域展開推進室(仮称)」の設置を検討開始(他県視察・セミナーでの助言を踏まえる)

令和7年度は推進協議会が3回開催され、中学校長会からの正式な要望書提出という具体的な合意形成の進展がありました。令和6年度に実施したアンケートでは、休日に新たに地域クラブ活動を希望する児童生徒は約1割にとどまるという実態が把握されており、受け皿づくりの優先順位付けに活用されています。令和8年度以降は推進協議会を最大5回程度開催する予定で、平日を含めた地域展開については令和15年度を目標に検討が継続されています。

出典

→ 原文: 益田市「部活動地域展開(移行)について」

→ 原文: 益田市学校部活動の地域移行に係る基本方針【簡易版】(令和6年2月)

→ 原文: 第3回益田市部活動地域移行推進協議会 審議結果(令和8年2月9日開催)

→ 原文: 益田市内の中学校一覧(益田市公式サイト)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

益田市の事例が示す最大のポイントは、方針を作って終わりにせず、教育現場からのフィードバックを制度に反映する往復のプロセスを持っている点です。中学校長会が実態を踏まえた要望書を正式ルートで提出し、教育委員会がそれを受けて指導者バンクの再設計や推進室設置の検討に着手するという流れが機能しています。人口4.3万人、中学校8校という中規模自治体でも、休日活動の実態把握→現場からの是正要求→制度改善という循環が回れば、無理のない段階移行が可能であることを示す事例です。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

最大のハードルは、対外試合・大会日程が休日に集中するため「休日は活動しない」という原則と現場実態が乖離しやすい点です。益田市は「大会・合同練習等やむを得ない活動は各学校判断で許容しつつ縮小する」という現実的な運用ルールで折り合いをつけました。また指導者確保では、顧問と同等の負担を求める従来型の指導者バンクでは希望者が集まらないという壁に直面しており、週1回・トレーナー・大会運営協力など関与のハードルを下げた多様なメニューの提示が有効な打開策となっています。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

推進協議会を公開で運営し、審議結果を全て市公式サイトで公開している点は透明性の面で評価できます。一方、活動経費は「利用者負担が原則」としつつ具体的な負担額や国の財源対応方針は明示されておらず、経済格差が経験格差につながらないようにという中学校長会の要望が今後どう制度化されるかが持続可能性の鍵となります。専任の推進室設置もまだ検討段階であり、体制強化は途上にあります。

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