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【事例】兵庫県稲美町の部活動地域展開 ─ 2028年8月から平日・休日とも「いなチャレ」へ、部活にない種目を先に募集

公開:2026.07.31 更新:2026.07.31
この記事でわかること

・2028年7月末で部活動を終え、8月から平日・休日とも「いなチャレ」へ切り替える同時移行の設計
・既存部活動の受け皿より先に「部活動にない種目」のクラブを募集する順序の狙い
・運動8種目・文化4種目の構成に対応し、文化部の実証事業も並行させた改革推進期間の進め方

自治体名 兵庫県稲美町
人口規模 約3万人(2026年時点)
中学校数 町公表資料では未提示
運営形態 地域のスポーツ・文化芸術団体をはじめとした幅広い団体が運営実施主体。町は中学校部活動地域連携・地域移行推進協議会で基本方針の企画立案と総合調整を行う
対象競技 現行の町立中学校部活動は運動8種目・文化4種目の計12種目(陸上競技、野球、サッカー、ソフトボール、ソフトテニス、バスケットボール、バレーボール、卓球、吹奏楽、文化芸術、美術、科学)。加えて部活動にない種目のクラブを募集
保護者負担額 会費制。各クラブの運営に必要な最低限の費用は原則として受益者(各家庭)が負担(金額は未提示)

取り組みの概要

稲美町は、2028(令和10)年8月から平日・休日ともに生徒が地域の人々とともに活動する「いなみチャレンジクラブ」(愛称「いなチャレ」)を開始します。現在の中学1年生が3年生になって部活動を引退する2028年7月末をもって部活動を終了し、その翌月から新体制へ切り替える設計です。休日のみを先に移す自治体が多いなかで、平日と休日を分けずに同時に切り替える点が特徴となります。町は令和5(2023)年度から令和7(2025)年度までを改革推進期間と位置付け、学校や町内の関係団体と協議を重ねながら、実現可能な部分から実証事業(試行)を進めてきました。推進の枠組みとして「稲美町中学校部活動地域連携・地域移行推進協議会」を設置し、基本方針の企画立案と、運営体制および各活動主体間の総合調整を担わせています。

特徴的な取り組み

  • 平日・休日を分けずに同時移行する: 2028年8月から、平日・休日ともに生徒が地域の人々とともに活動する形へ切り替えます。休日を先行させて平日を後回しにする段階方式ではなく、部活動の終了と同時に新しい枠組みへ移す設計です。
  • 生徒が「やりたいこと」を選ぶ仕組みとして設計: 「いなチャレ」は、子どもたち自身が「やりたいこと」を選んで活動できる仕組みと位置付けられています。これまでの部活動になかった新種目も可能で、「技術向上」「親しむ活動」「レクリエーション」など多様な形態が想定されています。
  • 部活動にない種目のクラブを先に募集する: 令和9年度の先行実施分として、現在の稲美町立中学校の部活動にない種目の地域クラブ(団体)を募集しています。既存部活動の受け皿づくりに先んじて、選択肢を広げる側から着手している点が特徴です。
  • 愛称を設定して周知する: 「いなみチャレンジクラブ」を「いなチャレ」と略し、生徒・保護者・地域に浸透しやすい呼称を用意しています。
  • 幅広い団体を運営実施主体に想定: 地域のスポーツ・文化芸術団体をはじめとした幅広い団体が運営実施主体となる形をとります。特定の民間事業者への一括委託ではありません。
  • 推進協議会が方針と総合調整を担う: 稲美町中学校部活動地域連携・地域移行推進協議会が、部活動の地域連携・地域移行に関する基本方針の企画立案と、その運営体制および各活動主体間の総合調整を行います。設置要綱も町例規集で公開されています。
  • 改革推進期間に複数の実証事業を並行実施: 令和6(2024)年度には、推進協議会の継続開催に加え、部活動指導員配置事業、運動部活動の地域移行に向けた実証事業、重点地域実証事業、文化部活動の地域移行に向けた実証事業を実施しています。

課題と解決策

課題 解決策
休日だけを地域へ移すと、平日は学校・休日は地域という二重構造が長期間続き、生徒にも指導者にも負担が残る 2028年7月末で部活動を終了し、同年8月から平日・休日ともに地域の人々とともに活動する「いなチャレ」へ一度に切り替える
既存部活動をそのまま移すだけでは、やりたい活動がない生徒の選択肢が広がらない 子どもたち自身が「やりたいこと」を選べる仕組みとして設計し、これまでの部活動になかった新種目も可能とする。技術向上・親しむ活動・レクリエーションなど多様な形態を想定する
部活動にない種目の受け皿は自然には生まれない 令和9年度の先行実施分として、現在の町立中学校の部活動にない種目の地域クラブ(団体)を先に募集する
運営主体が複数に分かれると、方針や活動主体間の調整が難しくなる 稲美町中学校部活動地域連携・地域移行推進協議会を設置し、基本方針の企画立案と運営体制・各活動主体間の総合調整を担わせる
クラブの運営に必要な費用をどう賄うか 会費制とし、各クラブの運営に必要な最低限の費用は原則として受益者(各家庭)が負担する
新しい枠組みを生徒・保護者・地域に浸透させる必要がある 「いなみチャレンジクラブ」に「いなチャレ」という愛称を設定して周知する

成果・効果

稲美町は令和5(2023)年度から令和7(2025)年度までを改革推進期間と位置付け、学校や町内の関係団体との協議を重ねながら、実現可能な部分から実証事業(試行)を進めてきました。令和6(2024)年度には、部活動地域連携・地域移行推進協議会の継続開催に加え、部活動指導員配置事業、運動部活動の地域移行に向けた実証事業、重点地域実証事業、文化部活動の地域移行に向けた実証事業を並行して実施しています。運動部だけでなく文化部の実証事業も同時に走らせている点は、稲美町立中学校の部活動が運動8種目・文化4種目の計12種目で構成され、文化系が3分の1を占める構成であることに対応した進め方といえます。現在は令和9年度の先行実施分として、現在の部活動にない種目の地域クラブを募集する段階にあり、準備が整った一部種目は2028年8月の全面開始に先立って先行実施する予定です。

出典

→ 原文: 稲美町「稲美町における部活動の地域展開の取組(稲美町中学校部活動地域展開についての方針)」

→ 原文: 稲美町「稲美町中学校部活動地域連携・地域移行推進協議会の開催について」

→ 原文: 稲美町「稲美町中学校部活動地域連携・地域移行推進協議会設置要綱」

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

稲美町の設計には、他の自治体と順序が逆になっている点が二つあります。一つは平日と休日を分けないこと。国の工程は休日先行を前提としており、多くの自治体が休日移行を終えてから平日を検討します。稲美町は2028年7月末で部活動を終え、翌8月から平日・休日ともに新しい枠組みへ移します。二重運用の期間をつくらない代わりに、切り替え時点で全種目の受け皿が揃っている必要があり、退路のない設計といえます。もう一つは、令和9年度の先行実施分として「現在の部活動にない種目」のクラブを先に募集していることです。通常は既存部活動の受け皿確保が優先され、新種目は後回しになります。「子どもたち自身がやりたいことを選んで活動できる仕組み」という位置付けを実際の募集順序で示した形で、地域展開を移し替えではなく選択肢の拡張と捉えていることが分かります。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

平日・休日同時移行は、必要な指導者数が休日先行方式の数倍になります。休日だけなら週1日3時間程度の担い手で足りますが、平日を含めれば週4日前後の指導体制を種目ごとに組む必要があり、平日夕方に動ける人材は社会人にとって最も確保しにくい時間帯です。この方式を採る自治体は、退職教員・自営業者・シフト勤務者・地域おこし協力隊など平日昼夜に動ける層を名指しで開拓する計画を、移行の2〜3年前から走らせるべきです。次に会費です。平日も含めれば活動日数は休日のみの場合の数倍になり、指導者謝金も比例して増えます。稲美町は「各クラブの運営に必要な最低限の費用」を受益者負担とすると示していますが、金額は未提示です。平日込みの会費は休日のみの自治体の相場をそのまま当てはめられないため、実証段階での実費集計を早めに公表し、困窮世帯への支援策とセットで提示することが不可欠です。加えて、活動場所の確保も平日分だけ需要が増えるため、学校施設の平日夜間開放の可否を早期に詰めておく必要があります。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

推進協議会を設置要綱に基づいて設け、基本方針の企画立案と各活動主体間の総合調整という役割を明文化している点は、運営主体が複数団体に分散する構成において要となる仕組みです。令和6年度に部活動指導員配置事業、運動部・文化部それぞれの実証事業、重点地域実証事業を並行実施しており、文化部を後回しにしていないことも、運動8種目・文化4種目という構成に照らして妥当な進め方です。一方、2028年8月という期日を先に確定させた以上、それまでに12種目すべてと新種目の受け皿を揃えられるかが最大の論点になります。会費水準と、種目ごとの受け皿確保の進捗を定期的に公表し、間に合わない種目が生じた場合の対応方針をあらかじめ示しておくことが、保護者の信頼を保つうえで重要です。

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