トップ 事例を探す 兵庫県 【事例】兵庫県加西市の部活動地域展開 ─ 令和10年の中学校再編を節目に平日・土日祝とも完全移行、代表指導者は大学生不可
全種目 👥 1~5万人 🏫 小規模校(〜150人) 📍 兵庫県

【事例】兵庫県加西市の部活動地域展開 ─ 令和10年の中学校再編を節目に平日・土日祝とも完全移行、代表指導者は大学生不可

公開:2026.07.31 更新:2026.07.31
この記事でわかること

・令和10年度の中学校統合に移行の期日を合わせ、平日・土日祝とも完全移行する加西市の工程
・代表指導者は20歳以下・大学生不可、最低2名以上配置という責任重視の承認要件
・拠点校部活動と3校合同チームを完全移行までの橋渡しに使う段階設計

自治体名 兵庫県加西市
人口規模 約4万人(2026年時点)
中学校数 市立中学校4校(北条中・善防中・加西中・泉中)。令和10年度に善防中・加西中・泉中が統合し「統合加西中学校」開校、北条中との2校体制へ
運営形態 地域の団体(クラブ)が運営主体。加西市の基準を満たした団体を市が承認し、活動支援のための事務局を設置
対象競技 野球、サッカー、バレーボール、バスケットボール、ソフトボール(女子)、陸上競技、ソフトテニス、卓球(男子)、剣道、吹奏楽、美術(令和7年度現在の市内中学校の設置種目)
保護者負担額 指導者への指導料を含め原則として受益者(保護者)負担。種目により活動費相場が異なるため一律の設定額は定めず、可能な限り低廉な額を設定する方針

取り組みの概要

加西市は令和7年11月に「加西市における部活動地域展開に係る基本方針」を策定し、令和10年の中学校再編を節目として「学校部活動」を「地域クラブ活動」へ展開する計画を立てました。令和10年度の総合体育大会終了後、3年生の部活動終了に合わせて、休日だけでなく平日・土日祝とも学校部活動を地域クラブ活動へ完全移行させます。基本目標には、学校や教職員が担ってきた教育的意義を継承し、その舞台を学校教育から社会教育へ展開することを掲げています。地域クラブ活動は、運営する主体が学校ではなく地域の団体(クラブ)であり、活動員(生徒)の登録から活動方針や計画の策定、日々の練習指導、大会参加手続きや大会運営まですべての責任を負う形と定義されました。市内でのクラブ数は1種目につき1〜2団体程度とし、学校単位では設置しません。

特徴的な取り組み

  • 学校再編のタイミングに移行を合わせる: 令和10年度に善防中・加西中・泉中の3校が統合して統合加西中学校が開校し、北条中との2校体制になります。市はこの再編を節目と位置付け、統合後の総合体育大会終了を境に全ての学校部活動から地域クラブ活動へ完全移行する工程を組みました。学校の枠組みが変わる年に部活動の枠組みも変えるという設計です。
  • 代表指導者は「20歳以下・大学生は不可」: 認定する指導者の要件として、代表となる指導者は20歳以下および大学生は不可と定めました。大学生を指導者として積極的に活用する自治体が多いなかで、代表者には社会人としての責任能力を求める判断です。あわせて、コンプライアンス(守秘義務等)の遵守、資質向上のためのライセンス取得や各種講習会、市の定める研修会等への参加を求めています。
  • 指導は最低2名以上の配置を原則とする: 指導に際しては原則として最低2名以上の配置ができることを条件としました。単独指導による事故や不適切指導のリスクを構造的に抑える設計です。
  • 「勝利至上主義にとらわれない」ことを絶対条件に明記: これまでの学校部活動の教育的意義を深く理解し、それを継承する資質のある指導者であり、その者によって組織された団体であることを絶対条件とし、勝利至上主義にとらわれず生徒にとって安心安全で心身の成長に有意義な活動を支える人材を求めるとしています。
  • 年度末までの継続維持を条件にする: 活動開始から少なくともその年度末までは継続して活動を維持できることを要件に加え、年度途中でクラブが消滅して生徒が行き場を失う事態を防いでいます。
  • 拠点校部活動と3校合同チームを移行の橋渡しに使う: 令和8年度入学生以降の新入生に限り、在籍する中学校にない他校(拠点校)の活動に入部できる拠点校部活動を設置します。対象は女子ソフトボール部(北条中)、男子バスケットボール部(北条中)、男子バレーボール部(加西中:善防中生徒のみ)、女子バレーボール部(善防中:加西中生徒のみ)です。さらに令和9年度総体以降は、統合する3校で野球部・サッカー部・バレーボール部(男女)・バスケットボール部(女子)の合同チームを結成します。
  • 保険はスポーツ振興センター災害共済が使えないことを明示: 地域クラブ活動では学校で加入するスポーツ振興センター災害共済が利用できないため、別途スポーツ安全保険等(賠償責任保険を含む)に必ず加入することを条件としています。
  • 廃校施設の活用も検討: 活動場所は公共施設・学校施設とし、廃校になった学校施設の活用も検討中としています。移動は原則として自力(自転車等)もしくは保護者送迎ですが、スクールバスの活用も検討しています。

課題と解決策

課題 解決策
急速な少子化により学校単位では部活動を維持できず、令和10年度には3校の統合が控えている 中学校再編を節目と位置付け、令和10年度の総合体育大会終了後に平日・土日祝とも学校部活動から地域クラブ活動へ完全移行する工程を定める
多くの教職員が部活動顧問を担い、勤務時間外や休日にも従事することが長時間労働の大きな原因となっている 運営主体を学校ではなく地域の団体とし、活動員の登録から大会運営まですべての責任をクラブが負う体制へ移す。教職員が兼職兼業で指導に加わる場合は勤務時間外であることを条件とする
地域の指導者に委ねると、指導の質や安全性にばらつきが生じるおそれがある 代表指導者は20歳以下・大学生を不可とし、最低2名以上の配置、ライセンス取得や市の研修会への参加、勝利至上主義にとらわれないことなどを承認の条件に定める
年度途中でクラブが活動を停止すると生徒の行き場がなくなる 活動開始から少なくともその年度末までは継続して活動を維持できることを承認要件に加える
地域クラブ活動では学校のスポーツ振興センター災害共済が利用できない スポーツ安全保険等(賠償責任保険を含む)への加入を必須とする
統合前の各校で単独チームが組めない種目がある 令和8年度入学生から拠点校部活動を設置して他校の活動に入部できるようにし、令和9年度総体以降は統合予定の3校で野球・サッカー・バレーボール(男女)・バスケットボール(女子)の合同チームを結成する
種目によって活動費の相場が異なり、一律の会費設定が実態に合わない 一律の設定額を定めず、種目ごとに可能な限り低廉な額を設定することを承認条件とする

成果・効果

令和7年度は、加西市中学校部活動地域展開推進会議を実施して実施方針を決定し、地域クラブ活動の準備を進める段階と位置付けられています。令和8年度から令和9年度の総合体育大会までは拠点校部活動を設置するとともに、準備の整った地域クラブは先行実施が可能です。令和9年度の総体終了後には善防中・加西中・泉中の3校で合同チームを結成し、野球部・サッカー部・バレーボール部(男女)・バスケットボール部(女子)が1つのチームとして大会等に参加します。陸上競技部・剣道部・ソフトテニス部・卓球部・吹奏楽部については、時期を定めず準備ができ次第、北条中を含めた3校もしくは4校での合同部活動を検討するとしています。令和10年度4月から8月は統合加西中学校の開校により北条中と加西中の2校体制でスタートし、同年度の総体終了後(8月頃〜)に原則として全ての学校部活動から地域クラブ活動へ完全移行します。市は入学年度別のスケジュールも示しており、令和11年度以降の入学生は入学時点から地域クラブ活動となります。

出典

→ 原文: 加西市「加西市における部活動地域展開に係る基本方針」(令和7年11月策定・PDF)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

加西市の判断で最も参考になるのは、部活動改革の期日を国の工程ではなく自市の学校再編に合わせたことです。令和10年度に3校が統合し統合加西中学校が開校するため、その年の総合体育大会終了を境に全ての学校部活動を地域クラブ活動へ移します。学校の枠組みが変わる年は生徒も保護者も変化を受け入れやすく、統合で膨らむ調整作業を二度に分けずに済みます。もう一つ特筆すべきは指導者要件です。代表となる指導者について「20歳以下・大学生は不可」と明記した自治体は多くありません。大学生を貴重な担い手として歓迎する流れがあるなかで、加西市は代表者に社会人としての責任能力を求めました。最低2名以上の配置、年度末までの活動継続、勝利至上主義にとらわれないことを絶対条件とする構成と合わせ、量よりも責任の所在を優先した設計になっています。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

代表指導者から大学生を外す方針は、質の担保という点で有効な一方、人材の母数を狭めます。市内で1種目につき1〜2団体という想定であればまだ成立しますが、種目数を増やそうとした途端に代表者が見つからない種目が出るはずです。導入する自治体は、代表者要件を厳しくするかわりに、大学生は補助指導者として積極的に受け入れる二層構造にしておくと、責任の所在と人材確保を両立できます。次に移動です。加西市は移動を原則として自力または保護者送迎としつつスクールバスの活用を検討中としていますが、学校単位ではなく市内で1種目1〜2団体に集約する以上、拠点までの距離は確実に伸びます。人口約4万人・面積の広い市で送迎を家庭に委ねると、参加できる生徒が限られかねません。完全移行までの3年間で交通手段を実証しておく必要があります。会費についても、一律額を定めず種目ごとに低廉な額を求める方式は現実的ですが、種目間で負担差が生じるため、上限の目安と困窮世帯への支援策を承認基準に組み込むことが望まれます。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

承認要件として、指導者2名以上の配置、スポーツ安全保険等(賠償責任保険を含む)への必須加入、計画書・報告書の提出、年度末までの活動継続を定めており、安全管理と継続性の双方に歯止めを設けています。学校のスポーツ振興センター災害共済が使えないことを明示したうえで代替保険を義務付けている点は、見落とされやすい論点への配慮として評価できます。活動支援のための事務局を設置する方針も示されました。一方、費用負担は指導者への指導料を含めて原則受益者負担とされており、市の財政支援の有無は基本方針からは読み取れません。完全移行が令和10年度と3年先であることを踏まえ、承認基準の詳細とあわせて費用面の全体像を早期に示せるかが、参加率と持続可能性を左右します。

CONSULTING / 専門家に相談

受け皿団体の組織整備・経営について
専門家に相談しませんか?

設立手続きの進め方・行政との調整・資金計画など、
総合型地域スポーツクラブ特化のコンサルティングをご提供しています。

🏢 クラブ立ち上げ
🤝 行政調整・仲介
📊 事業計画策定

HOW TO START

3ステップで
相談を始められます

  • 01フォームから状況を送信
  • 02オンラインで初回ヒアリング
  • 03最適な支援プランを提示
専門家に相談する →