トップ 事例を探す 広島県 【事例】広島県世羅町の部活動地域展開 ─ 教育委員会が自ら運営団体になり会費無料、初回練習に部活動顧問が同席して引き継ぐ
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【事例】広島県世羅町の部活動地域展開 ─ 教育委員会が自ら運営団体になり会費無料、初回練習に部活動顧問が同席して引き継ぐ

公開:2026.07.31 更新:2026.07.31
この記事でわかること

・受け皿団体が限られる小規模町で教育委員会自身が運営団体となり会費を無料にした構造
・地域指導者が9月に部活動を見学し、初回練習に顧問が同席して引き継ぐ移行の作法
・生徒331人・運動部7部活という規模で2クラブ34人が参加した実績と次の課題

自治体名 広島県世羅郡世羅町
人口規模 14,137人(令和7年度・実証事業報告書)
中学校数 公立中学校3校(甲山中・世羅中・世羅西中)・生徒数331人・運動部活動7部活
運営形態 世羅町教育委員会が地域クラブの運営団体。総括コーディネーターを配置し、学校教育課と社会教育課で役割を分担
対象競技 サッカー、バスケットボール(令和7年10月開始)
保護者負担額 会費なし(無料)

取り組みの概要

世羅町の総人口は平成2年の21,684人から令和2年には15,125人へと約7,000人減少し、令和27年には9,173人まで減って1万人を下回ると予測されています。中学校は3校、生徒数は331人、運動部活動は7部活のみで、部活動の廃部が生じるなど教育活動の選択肢が縮小しています。町は他地域と比較して人口規模が小さいことから、学校外で生徒を受け入れるクラブチームの数も限られ、指導者の確保も容易ではないという状況にあります。こうしたなか町は教育委員会自身が地域クラブの運営団体となり、令和7年10月からサッカーとバスケットボールの2クラブで地域展開を開始しました。会費は無料で、平日は生徒が主体的に運営する学校の部活動、休日は地域指導者による合同部活動という構成です。休日の部活動は行わないことを明記しています。

特徴的な取り組み

  • 教育委員会が運営団体を直接引き受ける: サッカー地域クラブ・バスケットボール地域クラブとも運営団体種別は「教育委員会」です。受け皿となる民間団体や総合型クラブが限られる小規模自治体で、行政が自ら運営主体に立つ選択をしています。
  • 初回練習に部活動顧問が同席して引き継ぐ: 令和7年10月の地域展開開始にあたり、1回目の練習は部活動顧問も参加し、引継ぎも兼ねて実施しました。指導者が入れ替わる際の断絶を、顧問の同席という形で埋めています。
  • 開始前に顧問が部活動を見学する: 令和7年9月に「指導者との連携(部活動の見学)」を工程に組み込み、地域指導者が実際の部活動を見たうえで10月の開始に臨む段取りとしました。
  • 会費を無料に設定する: サッカー・バスケットボールとも会費は「無」です。指導者およびコーディネーターの謝金は教育委員会社会教育課が管理し、運営費の補助にはバス代等も含まれます。
  • 総括コーディネーターを置き、2課で分担する: 教育委員会学校教育課が学校・指導者との連携を総括コーディネーターと協力して担い、社会教育課が地域団体との連携と指導者・コーディネーターの謝金等の管理を担当します。
  • 指導者は研修受講と競技団体推薦で確保する: 指導者は町教育委員会主催の指導者研修会を受講済みの者、および県競技団体の推薦を受けた者としています。令和7年5月から6月に募集し、7月に面接・決定という手順を踏みました。
  • 大会参加は地域クラブとして行う: 2クラブとも大会参加方法は「地域クラブ」です。部活動としてではなく、地域クラブの単位で大会に臨む整理をしています。
  • 小学6年生と保護者にも説明する: 令和8年1月に、各中学校に進学する小学6年生と保護者を対象とした説明を実施しました。入学前の段階から新しい枠組みを共有しています。

課題と解決策

課題 解決策
人口規模が小さく、学校外で生徒を受け入れるクラブチームの数が限られている 教育委員会自身が地域クラブの運営団体となり、サッカー・バスケットボールの2クラブを立ち上げる
生徒数の減少により部活動の廃部が生じ、教育活動の選択肢が縮小している 平日は生徒が主体的に運営する学校の部活動、休日は地域指導者による3校合同の部活動という構成に切り替え、休日の部活動は行わないこととする
指導者の確保が容易ではない 令和7年5〜6月に指導者を募集し7月に面接・決定。町教育委員会主催の指導者研修会を受講済みの者と県競技団体の推薦を受けた者を指導者とする
指導者が学校の顧問から地域指導者へ入れ替わることで、指導内容や生徒の状況が引き継がれない 令和7年9月に地域指導者が部活動を見学し、10月の1回目の練習には部活動顧問も参加して引継ぎを兼ねて実施する
3校合同のため活動場所までの移動が生じる 教育委員会が活動場所(町内中学校の体育館またはグラウンド)を確保し、運営費の補助にバス代等を含める
新しい枠組みが入学前の児童・保護者に伝わらない 令和8年1月に各中学校へ進学する小学6年生と保護者を対象とした説明を実施する

成果・効果

令和7年10月に始まった2つの地域クラブは、いずれも休日に週1回・9時から12時まで活動しています。サッカー地域クラブの参加者は1年9人・2年7人・3年8人の計24人で指導者2人・運営スタッフ2人、バスケットボール地域クラブは1年6人・2年3人・3年1人の計10人で指導者1人・運営スタッフ1人です。全体では2クラブ・2部活動が移行し、指導者3人・運営スタッフ3人という体制です。町内の公立中学校に通う中学生は令和7年5月1日現在で333名であり、2クラブ合計34人は生徒の約1割にあたります。

工程は、令和7年5月に各中学校の教員への説明、5〜6月に指導者募集、7月に指導者の面接・決定、8〜9月に生徒募集、9月に各中学校の生徒への説明と地域指導者による部活動見学、10月に地域展開開始、という順に進みました。10月以降は活動場所の確保と指導者連携が続き、総括コーディネーターを中心に指導者と連携して活動をサポートしています。町の構想図では、休日の地域クラブ活動として陸上・サッカー・バレーボール・バスケットボール・卓球・ソフトテニス・野球・吹奏楽が、地域スポーツクラブ・文化活動として軟式野球・バレーボール・剣道・空手・尺八等が位置付けられており、2クラブからの段階的な拡大が想定されています。

出典

→ 原文: スポーツ庁「令和7年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業(地域スポーツクラブ活動への移行に向けた実証事業)成果報告書 海田町・北広島町・世羅町」(PDF)

→ 原文: 広島県教育委員会「公立中学校部活動の地域展開等に係る取組状況」

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域移行・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

国のガイドラインは運営団体として総合型地域スポーツクラブ、スポーツ協会、民間事業者などを想定していますが、人口1万4千人・生徒331人・運動部7部活という世羅町の規模では、受け皿となる団体そのものが存在しません。町は受け皿を探すことをやめ、教育委員会自身が運営団体になるという結論を出しました。会費を無料に設定できているのもこの構造ゆえです。もう一つ注目すべきは移行の作法で、9月に地域指導者が部活動を見学し、10月の1回目の練習には部活動顧問が同席して引継ぎを兼ねて実施しています。地域移行では指導者の交代が生徒にとって最大の変化になりますが、その断絶を一日の同席で埋めるという発想は、規模の大小を問わず取り入れられる工夫です。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

教育委員会が運営団体を兼ねる方式は、受け皿がない地域では現実的な選択ですが、二つの負荷を抱えます。第一に、財政負担が全額公費になることです。会費無料は保護者にとって理想的である一方、指導者謝金・コーディネーター謝金・バス代までを町が負担する構造は、実証事業の補助が終わった後に維持できるかが問われます。導入する自治体は、無料期間のうちに1人あたり年間コストを算出し、有償化する場合の水準を早期に示すべきです。第二に、行政が運営主体であることは「社会教育への移行」という国の趣旨と緊張関係にあります。学校教育から社会教育へ舞台を移すという理念に照らせば、教育委員会直営は過渡的な形態と位置付け、将来的に地域団体へ引き継ぐ道筋を計画に書き込んでおく必要があります。また、参加者は2クラブ合計34人と生徒333人の約1割にとどまります。7部活のうち移行したのは2部活動であり、残る部活動の休日活動をどうするかは次の課題です。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

推進計画・ガイドラインを策定済みで協議会も設置済みという点は、規模の小さい自治体としては整備が進んでいます。指導者を町教育委員会主催の研修会受講者と県競技団体の推薦者に限定し、5〜6月の募集から7月の面接・決定という選考過程を踏んでいることも、質の担保として妥当です。学校教育課と社会教育課で役割を分け、総括コーディネーターを置いた体制も明快です。一方、指導者3人・運営スタッフ3人という規模は、担い手が1人抜けただけでクラブが止まりかねない薄さでもあります。会費無料という前提とあわせ、実証事業終了後の財源と人員をどう確保するかが持続可能性の最大の論点です。

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