【事例】愛知県北名古屋市の部活動地域展開 ─ 市予算ゼロ・公募で10クラブ採択・受益者負担の自立型モデルで卓球クラブが年間のべ610名参加
・愛知県北名古屋市が市予算ゼロ・公募採択方式で10クラブを立ち上げた具体的な仕組み
・月300円の卓球クラブが年間のべ610名参加を記録した運営設計の詳細
・受益者負担モデルの持続可能性と参加者ゼロクラブから見えた公募制度の改善点
| 自治体名 | 愛知県北名古屋市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約8.6万人(86,036人) |
| 中学校数 | 10校(生徒数2,401名) |
| 運営形態 | 北名古屋市教育委員会(公募による活動団体採択方式) |
| 対象競技 | 剣道(2クラブ)、サッカー、バスケットボール(2クラブ)、卓球、吹奏楽(2クラブ)、ソフトテニス等(計10クラブ) |
| 保護者負担額 | 各クラブが独自設定(月300円〜1,980円+スポーツ保険代別途) |
取り組みの概要
北名古屋市は愛知県北部に位置する人口約8.6万人の市です。公立中学校10校に2,401名の生徒が在籍し(令和6年度)、70部活が活動しています。学校の働き方改革の必要性を理解し部活動の地域移行を検討するなか、人材確保と財源確保に課題を抱えていました。令和5年度からスポーツ庁の地域スポーツクラブ活動体制整備事業に参加し、令和5年4月から部活動総括コーディネーターを市費で雇用。令和5年10月から6か月間、ソフトテニス・剣道の2種目で実証事業を行いました。
令和6年度は、これまでの実証を踏まえ「市からの予算を一切計上しない」という方針のもと、地域の団体・クラブからの公募を軸に事業を進めました。スポーツや文化活動の機会を提供する団体が企画・提案を応募し、教育委員会が採択する仕組みです。市からの補助金はゼロで、各クラブが独自に受益者負担の会費を設定。学校施設については、教育委員会が優先的に無償で提供する支援を行いました。
4月公募(6件応募中4件採択)・6月公募(6件応募中6件採択)の2回に分けて10クラブを採択し、うち8クラブが令和6年度中に実際の活動を実施しました。活動場所は市内6校の中学校施設(武道場・体育館・音楽室・テニスコート・グラウンド等)で、指導者41名・コーディネーター1名体制で運営しました。
特徴的な取り組み
- 「市予算ゼロ・受益者負担・公募方式」の三位一体モデル:地域移行実証事業に対して市の予算を一切計上しないという方針を明確にしたうえで、地域のスポーツ・文化団体から企画提案を公募する方式を採用。補助金に依存しない持続可能な運営形態の構築を最初から目指した点が特徴です。実証事業の補助金終了後も継続できる自立型モデルとして設計されています。
- 各団体が独自に会費設定・チラシ作成・直接募集する参加者獲得プロセス:採択された各団体が自ら参加者募集のチラシを作成し、学校を通じて生徒に電子媒体で配付。生徒自身が各団体に直接申し込む仕組みを構築しました。教育委員会が一括で参加者を管理するのではなく、各団体が自律的に運営することで、行政の事務負担を最小化しています。
- 中学生卓球クラブが年間40回・のべ610名参加という突出した実績:月会費300円(+スポーツ保険代800円)という低価格設定の中学生卓球クラブが、天神中学校武道場で毎週日・月・木曜日に活動を実施。33名が登録し、年間40回でのべ610名が参加するという10クラブ中最大の実績を記録しました。低価格・高頻度・身近な学校施設という三要素が参加率の高さに直結した事例です。
- 令和5年度の実証2種目から令和6年度10クラブへの段階拡大:令和5年10月に剣道・ソフトテニスの2種目で開始した実証事業の経験を活かし、令和6年度は公募方式で剣道(2クラブ)・サッカー・バスケットボール(2クラブ)・卓球・吹奏楽(2クラブ)・ソフトテニスの多種目展開へ一気に拡大。種目の多様化と競技連盟・民間クラブ双方からの参加が実現しました。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 10クラブ採択のうち1クラブ(北名古屋吹奏楽団YOUTH)は登録者ゼロで活動実績なし | 募集時期・周知方法・既存の部活動との重複回避など、参加者が集まらなかった要因を分析。令和7年度以降の公募では団体選定基準や周知支援の強化を検討 |
| クラブ毎に会費・保険料が異なり、保護者にとって費用の全体像が把握しにくい | 各団体のチラシに費用内訳を明記するルールを設定。教委の公募要件に費用透明性の条件を追加することを検討 |
| 学校施設以外(スタジオ等)での活動クラブへの場所確保支援が限定的 | スタジオオルカバスケットボールクラブのように自前の施設を持つ団体は採択しやすい反面、登録者が少ない(3名)傾向も。施設の有無と参加者数の関係を令和7年度以降の採択基準に反映 |
| 令和5年度実証種目(ソフトテニス・剣道)の参加者確保の継続性 | 令和5年度の実証経験を持つ東スポーツクラブ(剣道)が令和6年度も採択される形で継続。実証から本格実施への連続性を担保する採択方針が有効に機能 |
成果・効果
令和6年度は10クラブが採択され、うち8クラブが市内6校の学校施設を拠点に活動を実施しました。最大の実績は中学生卓球クラブで、33名が登録し年間40回・のべ610名が参加しました。吹奏楽(ウィンドオーケストラ)は36名登録・3回のべ90名、サッカー(AVANCO)は22名登録・4回のべ59名、ソフトテニスは24名登録・3回のべ47名と続きます。
令和6年5月・8月・令和7年1月の計3回にわたり部活動検討委員会を開催し、実証事業の成果を共有。令和6年12月には市内全中学生および保護者を対象とした意識アンケートを実施しました。また令和6年7月には部活動顧問全員を対象にした意識アンケートも実施し、教職員の負担感や地域移行への意識を把握しています。
出典
→ 原文: 令和6年度地域スポーツクラブ活動体制整備事業 実証事業報告書(愛知県北名古屋市)|スポーツ庁
💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント
北名古屋市の最大の特徴は「実証事業に対する市の予算をゼロにする」という大胆な方針決定です。多くの自治体が補助金を活用して地域クラブを立ち上げる中、北名古屋市は最初から「補助金終了後も続けられるモデル」を設計しました。市からの補助金なし・受益者負担・施設のみ無償提供という三つの条件を公募要件として明示することで、自立して継続できる団体だけが参加する構造を作り出しています。
中学生卓球クラブの年間のべ610名という数字は、「月300円・週3回・学校武道場」という設計の合理性を示しています。低価格・高頻度・通いやすい場所という三条件が揃えば、地域移行クラブでも高い参加実績が出せることを証明した事例です。一方で、北名古屋吹奏楽団YOUTHの「登録者ゼロ」は、団体の採択と参加者獲得は別問題であることを示しています。活動内容の魅力・周知の仕方・既存の吹奏楽部活動との競合など、参加者が集まらなかった要因の分析が今後の公募制度改善の鍵となります。
公募応募から採択・チラシ作成・学校配付・生徒の直接申込みというプロセス設計も評価できます。教育委員会が個別の参加者管理を行わず、各団体が自律的に運営することで行政の事務負担を最小化しつつ、多様な団体が参加しやすい環境を整えています。
📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策
北名古屋市の「市予算ゼロ公募モデル」を他自治体が導入する際に最も重要なのは「学校施設の無償優先提供」をどのように担保するかです。北名古屋市では教育委員会が施設提供の調整役を担うことで、資金援助のない代わりに場所という実質的な支援を行っています。この施設支援がなければ、地域団体が受益者負担だけで黒字化するのは難しく、特に最初の年度は参加者確保に苦労します。公募制度を導入する際は、「補助金はないが施設は使える」という条件を前面に出して団体の参加ハードルを下げることが重要です。また、採択後に参加者ゼロという事態を防ぐため、採択前に「想定参加者数と確保方法」を申請書に記載させ、実現可能性を事前審査する仕組みを加えることをお勧めします。
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