【事例】愛知県日進市の部活動地域展開 ─ 人材会社「エイジェック」委託・大学生指導者が卓球53人・サッカー109人に1回100円で実施
・愛知県日進市が人材会社エイジェックに委託し大学生指導者が1回100円で卓球・サッカーを実施した仕組み
・卓球53名・サッカー109名の参加実績と保護者94.1%が「良い」と評価した運営内容の詳細
・新種目バドミントンの参加者不足から見えた地域クラブ活動の課題と制度整備への提言
| 自治体名 | 愛知県日進市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約9.4万人(93,881人) |
| 中学校数 | 4校(生徒数2,867名) |
| 運営形態 | (㈱)エイジェック 名古屋オフィス(民間事業者・日進市からの業務委託) |
| 対象競技 | 卓球、サッカー、バドミントン(新設) |
| 保護者負担額 | 100円/回(卓球・サッカー・バドミントン各100円) |
取り組みの概要
日進市は愛知県東部に位置する人口約9.4万人の市です。日進中・日進西中・日進東中・日進北中の4校に2,867名の生徒が在籍しており(令和6年度)、部活動は58部活(うちスポーツ部活動43部活)が活動しています。日進市は未だ人口増加傾向にあり、他の自治体と比較して部活動も比較的盛んに実施されていますが、少子高齢化による全国的な流れへの対応として地域移行を検討しています。
令和6年度は「日進東中地域移行クラブ」として、(㈱)エイジェック名古屋オフィスに業務を委託し、日進東中学校を会場に卓球・サッカー・バドミントン(新設)の3種目を実施しました。受注事業者のエイジェック名古屋オフィスが運営体制の整備・地域クラブ活動の実施・指導者謝金の支払い・保険加入・連絡体制を一括して担い、日進市・日進市教育委員会と連携しながら事業を推進しました。
参加費は1回100円という低価格設定で、卓球全18回・サッカー全8〜9回・バドミントン全1回を実施。指導者は大学生の外部指導者11名で構成し、統括コーディネーター1名が学校・関係団体・受託事業者との連絡調整・指導助言等を担いました。
特徴的な取り組み
- 人材サービス会社「エイジェック」への業務委託モデル:スポーツ専門の財団や総合型クラブではなく、人材サービス会社に業務を委託するという珍しい形態を採用。エイジェック名古屋オフィスが大学生指導者を派遣・管理し、運営体制全体を担当しました。人材確保・育成に強みを持つ民間企業を活用した地域クラブ運営の一例です。
- 大学生外部指導者11名によるコスト効率的な指導体制:指導者の主な属性は大学生の外部指導者3名(種目別)で、統括コーディネーター1名が全体を管理。専門の競技指導者より低コストで確保できる大学生を活用しながら、統括責任者が質を管理する体制は、指導者確保コストを抑制する有効な手段です。
- 1回100円という低価格設定と高い参加者満足度:卓球53名・サッカー109名という参加実績と、参加した保護者の94.1%が「とても良い」「良い」と回答した高い満足度は、1回100円という低価格設定が保護者の参加障壁を下げたことを示しています。活動場所が学校内(武道場・グラウンド)であることも参加の敷居を下げる要因となっています。
- 「公的支援対象クラブの基準設定」という制度整備への提言:令和6年度の経験を踏まえ、公的支援を受けるための地域クラブの基準が未整備であることを課題として提起。都道府県が示す地域スポーツクラブ活動の要件等を踏まえ、要件や基準を整備して登録・指定制度の導入が必要だと提言しています。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| バドミントン(新種目)は参加者が1回のみと少なく、新種目への関心喚起が難しい | 多くの生徒が既存の部活動に参加しているため、新たな種目への需要喚起が困難。参加者アンケートで「他の習い事をしている」「魅力的なプログラムが無かった」という回答を踏まえ、プログラムの魅力向上を検討 |
| 地域クラブ活動の公的支援対象となるための基準・要件が不明確 | 都道府県が定める地域スポーツクラブ活動の要件を参照しつつ、市として認定・登録制度の整備を提言。持続可能な地域クラブ運営体制の制度化を目指す |
| 参加者の75.4%が実証事業に参加していないという認知・参加促進の課題 | 保護者向けアンケートで「参加しなかった理由」を収集・分析し、プログラム内容・周知方法・参加しやすい環境づくりを改善 |
| 地域の資源を活用した持続可能な地域クラブ運営体制の構築 | エイジェックのような民間事業者委託を継続しながら、地域のスポーツ団体との連携強化も並行して検討 |
成果・効果
令和6年9月から12月にかけて「日進東中地域移行クラブ」として卓球・サッカー・バドミントンの3種目を実施しました。卓球(全18回)に53名・サッカー(全8〜9回)に109名が参加(1〜2年生中心)し、特にサッカーは100名超という高い参加数を記録しています。
実証事業参加者の保護者を対象としたアンケートでは、94.1%が「とても良い」「良い」と回答するなど非常に高い評価を得ました。この実績は、1回100円という低価格設定と学校施設を使った活動しやすい環境が、保護者・生徒双方に受け入れられたことを示しています。令和7年3月の第3回検討委員会を経て、令和7年度以降の地域クラブ活動の継続・拡大に向けた方向性が検討されています。
出典
→ 原文: 令和6年度地域スポーツクラブ活動体制整備事業 実証事業報告書(愛知県日進市)|スポーツ庁
💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント
日進市の最大の特徴は「人材サービス会社への業務委託」という独特の運営形態です。スポーツ専門の財団・総合型クラブ・NPOではなく、エイジェック(人材サービス大手)の名古屋オフィスに業務委託するというアプローチは全国でも珍しい事例です。人材の採用・管理・研修に強みを持つ人材会社を活用することで、大学生指導者の確保・管理・研修を効率的に行える可能性があります。
サッカー109名という参加実績は注目に値します。中学校1校あたりの実施でこれだけの参加者を集められたことは、1回100円という低価格設定と学校施設の利便性が大きく寄与していると考えられます。ただし、参加者の94.1%が「良い」と回答する一方で、全体の75.4%は未参加であり、「知らなかった」「魅力的なプログラムが無かった」という声も多かった。周知の仕方と種目の選定が参加率に直結することを示す良い事例です。
「公的支援対象クラブの基準未整備」を明確な課題として提言している点も重要です。多くの自治体が地域クラブに補助金を出す場合の認定基準を設けていないことが、民間事業者の参入や品質管理の障壁になっています。都道府県レベルでの基準整備を求めるこの提言は、制度整備の遅れが現場に与える影響を示す実例として他自治体にも参考になります。
📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策
日進市モデルの参考ポイントは「人材サービス会社を含む幅広い民間事業者を運営主体候補として検討すること」です。スポーツ系財団がない地域でも、地域に拠点を置く人材サービス会社・教育関連会社・NPOが代替になりえます。大学生指導者の活用については、近隣に体育系・スポーツ系学部を持つ大学があれば連携協定を結んで指導者を安定的に供給できる可能性があります。1回100円という設定は低コスト参加を実現しますが、実証事業補助金が終了した後に持続可能な料金設定に移行する計画を事前に作成しておくことが重要です。
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