【事例】山梨県甲州市の部活動地域展開 ─ 季節部のラグビーから地域クラブ化を始め卓球・女子ソフトテニスへ拡大、指導者謝金を市が負担し年会費800〜1,300円に抑える
・季節部のラグビーから地域クラブ化を始め、2年目に卓球・女子ソフトテニスへ広げた甲州市の進め方
・指導者謝金1時間1,600円・年532,800円を市が負担し、年会費を800〜1,300円に抑えた収支の内訳
・スクールバスの転用、受益者負担の上昇、事務人材の不足という小規模市の地域展開の課題
| 自治体名 | 山梨県甲州市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約2.9万人(28,900人・令和7年度スポーツ庁成果報告書記載)。面積264km² |
| 中学校数 | 市立中学校3校(塩山中学校・松里中学校・勝沼中学校、生徒617人・運動部22部)。平成17年の市町村合併時は5校 |
| 運営形態 | 行政直営(甲州市教育委員会の生涯学習課が主体となりコーディネーターを配置して方針の検討・調整を担い、教育総務課が部活動現場の調整と生徒・保護者への周知を担当)。地域クラブは地元の指導者と市内中学校教諭が運営し、市内競技団体・民間スポーツ団体が指導者を派遣 |
| 対象競技 | ラグビーフットボール、卓球、ソフトテニス(女子)の3クラブ(令和7年度) |
| 保護者負担額 | 年会費:ラグビー1,300円、卓球・ソフトテニス800円。スポーツ安全保険(生徒1人あたり800円/年)は個人負担。指導者謝金は市が負担 |
取り組みの概要
甲州市では過疎化・高齢化と少子化で中学校の統廃合が進み、平成17年の合併時に5校あった市立中学校は3校になりました。3校とも部員の確保が難しく、休部する種目や、団体種目で他校と合同で活動する種目があります。民営のクラブチームに入る生徒もいて、競技志向の高い生徒と部活動で競技力を高める生徒の2極化が進み、スポーツ人口が少ないため指導者の確保も困難です。市は運動部活動を「地域連携等により存続する種目」と「地域展開を図る種目」に仕分ける方針で、令和5年度にコーディネーターを委嘱して「甲州市中学校運動部活動地域移行推進委員会」を設置し、市の方針を策定しました。令和6年度は季節部のラグビー部で試験的に地域クラブを設立し、令和7年度は卓球と女子ソフトテニスの2クラブを加えて3クラブ・指導者17人で活動しています。
特徴的な取り組み
- 活動中の部ではなく季節部から地域クラブ化: 令和6年度の部活動整理の際、季節部であるラグビー部の指導者に声をかけたところ興味を示したため、地域クラブの設立を打診しました。現在活動中の部活動の地域クラブ化はハードルが高いため、季節部の種目から始めて合意に至った経緯です。ラグビーは常時活動している生徒はおらず、主に冬季の試合に合わせて他の種目の生徒が集まる形で、前期(令和7年7月31日〜9月21日)と後期(令和8年1月7日〜2月4日)に月5〜6回、塩山中学校・勝沼中学校で活動しました(1年2人・2年13人・3年4人、指導者8人)。中体連の大会には部活動として参加しています。
- 卓球・女子ソフトテニスは平日夜の地域クラブ: 卓球は塩山北小学校体育館で19時30分〜21時30分に月4回(1年6人・2年6人、指導者6人)、ソフトテニスは甲州市塩山テニス場で18時30分〜20時30分に月4回(1年4人・2年2人、指導者3人)活動しました。卓球は運営団体がスポーツ協会の卓球部で、備品は市の備品として購入済みです。両クラブは4月に新入生の加入があり、新年度ごとの応募が定例化してきています。
- 元中学校教諭のコーディネーターを継続任用: コーディネーターは前年度から同じ人を任用し、元中学校教諭であることから各中学校との連携が円滑に進みました。推進委員会(年3回)には保護者代表を加え、中学校の競技ごとの顧問からも意見を聞き取っています。統括コーディネーターは近隣の市との学習会・情報交換会を2か月に一度開きました。
- オンデマンドの指導者研修: 指導者には日本スポーツ協会のワークブックと動画「ケーススタディから考えるグッドコーチング~グッドプレーヤーのさらなる育成を目指して~」の視聴を依頼し、全員が視聴しました。指導者17人のうち資格所持者は5人、令和7年度に資格を取得した指導者は1人で、年齢は20代〜50代と幅広くなっています。
- 指導者謝金を市が負担して会費を抑える: 指導者謝金は1時間1,600円で、ラグビー328,000円・卓球144,000円・ソフトテニス60,800円の計532,800円です。報告書はこれを参加者33人で割ると1人16,145円になると試算しています。謝金と統括コーディネーターの人件費を市が予算化し、公共施設や中学校グラウンドの使用料を免除・無償としたことで、会費を低く抑えています。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 拠点校方式で予定した女子ソフトボール部に応募がなかった | 次年度は地域クラブとして活動する計画に見直し、令和8年度当初に開始する予定 |
| 実証事業から地域展開後には受益者負担の上昇が予想され、指導者からも受益者負担による参加意欲の低下を懸念する声が出た | 人件費は受益者負担を軸に仕組みを考え、説明会やチラシで参加者・保護者の理解を得る。低所得世帯への支援の必要性と、近隣自治体の公費負担の状況を検証する |
| 中学校の統合で導入したスクールバス(3台)をクラブ員の移動に使う事務手続きに対応できず、保護者の迎えが遅れて指導者が残る場面もあった | 参加人数の増加に合わせてスクールバスの活用を準備し、デマンドバス等の活用も検討して保護者の負担を減らす |
| 同じ指導者に継続して指導してもらう仕組み、複数指導者の配置、施設予約など事務を担う人材が必要 | 市スポーツ協会等と連携して経験者を発掘し、研修の受講と資格取得を促進する。資格取得資金の援助は先進地の事例を参考に制度を検討する |
| 学校施設までの用具の搬送、学校備品を使うための鍵の管理 | 保管場所や保管用倉庫の設置、地域クラブでの用具購入を関係機関と調整し、学校施設の警備システムのブロック化による使用範囲の設定も検討する |
成果・効果
令和7年度は3競技17人の指導者が交代で指導し、それぞれの生徒のレベルに合った基礎練習を行いました。地域クラブ活動の3分の2は学校施設で行い、指導者からも学校施設は練習場として良い環境との評価を受けています。参加者からは「学校の部活動では学べないスキルを学ぶことができた」(ソフトテニス)、「普段の活動では体験できない種目を体験できた」(ラグビー)、「やりたい仲間が集まってできてよい」(卓球)という声があり、指導者からは「同じモチベーションの生徒が多いのでやりがいがあった」「保護者、地域住民の方の協力があり、スムーズに活動することができた」という声が記録されています。一方で「コーチライセンスの保有がないため指導に自信が持てない」「地域クラブになったことにより、以前の普及のためにやっていた活動より練習時間が短くなってしまった」という指導者の声や、学校関係者からの「生活に課題がある生徒にもクラブに参加する機会を与えて欲しい」という要望もありました。ラグビーは教員に指導者がいたため多くの生徒に声をかけられましたが、学校に指導者がいなくなった場合の選手集めを市は課題に挙げています。推進計画・ガイドラインは策定に向けて準備中で、令和8年度からは「甲州市部活動推進協議会」の専門部会を中心に体制を整え、中学校の野球部とサッカー部についても休日の地域クラブ化の可能性を検証します。広域化については、まず隣の市との2市連携で対象種目の検討を進める方針です。
出典
→ 原文: スポーツ庁「令和7年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書 山梨県甲州市」(報告書検索システム)
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