【事例】山梨県山梨市の部活動地域展開 ─ 市教委が運営団体となり剣道・卓球・サッカーなど7地域クラブを検証、文化芸術・ボランティア団体も地域クラブに認定し令和8年度から受け皿を拡大
・市教委が運営団体となり、7地域クラブを検証しながら認定要領と指導の手引き・安全管理マニュアルを整えた山梨市の進め方
・文化芸術・ボランティア団体も地域クラブに認定し、令和8年度から参加費なしでも選べる受け皿を広げた工夫
・サッカーの平日地域クラブを学校現場や市ガイドラインとのずれから見直した経緯と、推進協議会の作り直し
| 自治体名 | 山梨県山梨市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約3.2万人(31,525人・令和7年度スポーツ庁成果報告書記載) |
| 中学校数 | 市立中学校3校(山梨南中学校・山梨北中学校・笛川中学校、生徒733人) |
| 運営形態 | 行政直営(山梨市教育委員会が運営団体。学校教育課と生涯学習課が共同で所管し、生涯学習課にコーディネーターを配置)。地域のスポーツ団体・総合型地域スポーツクラブ等と連携し、「山梨市地域クラブ認定要領」に基づいて地域クラブを認定 |
| 対象競技 | 剣道、卓球、ソフトテニス、サッカー、空手道、陸上競技 等(令和7年度7地域クラブ) |
| 保護者負担額 | 多くのクラブは会費なし(サッカーの東山FCのみ月1,000円=年12,000円を独自に徴収)。スポーツ安全保険800円/年は市負担 |
取り組みの概要
山梨市が位置する東山梨地区は、生徒全員が何らかの部活動に所属するほど部活動が盛んな地域です。しかし児童生徒数は減少が続き、10年後には現在の4分の3になる見通しで、山間部の小規模校では限られた種目しか設置できず、比較的規模の大きい2校でも合同チームを余儀なくされる競技が出ています。特定の競技を続けたい生徒が市外に活動の場を求めたり、進路選択に影響したりする状況もあります。市は令和5年度から山梨南中学校を中心にモデルケースの地域クラブ活動を行い、令和7年度は剣道・卓球・ソフトテニス・サッカー・空手道・陸上競技などの7地域クラブ(部活動を移した形5、新規2)で、指導者50人・運営スタッフ30人が月4回程度活動しました。基本方針は「平日は部活動、休日は新たな地域クラブ活動を段階的に進める」で、「地域の子どもたちは、学校を含めた地域総ぐるみで育てる」という考えを掲げています。
特徴的な取り組み
- 連絡協議会から幅広い委員の「推進協議会」へ: 令和5・6年度は3中学校の校長・顧問と事務局だけの「連絡協議会」でしたが、令和7年度は「推進協議会」に改め、スポーツ団体の長に加えて文化協会会長、ボランティア関係の長、市校長会会長、各校の学校運営協議会会長・PTA会長、各中学校長、部活動主任まで委員を委嘱し、年3回開催しました(令和6年度は0回)。指導者研修も令和6年度0回から令和7年度7回に増やしています。
- 認定要領とガバナンスコードで地域クラブを確認: 各地域クラブが「スポーツ団体ガバナンスコード〈一般スポーツ団体向け〉」と「山梨市地域クラブ認定要領」に沿って運営しているか、会計処理を含めて視察や活動報告会で確認しています。令和7年10月には市独自の「指導の手引き・安全管理マニュアル」を作り、けが・事故・災害・事件ごとの対応を研修で徹底しました。
- 運動以外の団体も地域クラブに: 既存の部活動の種目にとらわれず、文化芸術活動の団体やボランティア活動の受け入れ団体も地域クラブに認定しました。運動の地域クラブは前年度から2件増え、文化芸術の地域クラブ4件とボランティアの地域クラブ4件が令和8年度から実証的に始まります。ボランティアなど参加費がなくても参加できるクラブを用意したことも、費用面の選択肢になっています。
- 競技別の「大会参加条件」と「指導者の条件」を一覧化: 陸上・水泳・バスケットボール・サッカー・軟式野球・バレーボール・卓球・剣道・ラグビーなど各競技について、地域クラブが大会に出る条件と指導者(監督)・審判に必要な資格を表にまとめ、学校や市スポーツ協会と共有しています。
- コーディネーターの業務を7分野に整理: 県・他市町村・学校・関係団体との連絡調整、推進計画とガイドラインの策定、地域クラブの巡回と指導助言、学校現場との連携、入学説明会などの広報、実証事業の予算・事務処理、障害のある生徒の活動機会の実態把握まで、コーディネーターの動きを具体的に記録しています。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 「部活動は全員参加のもと休日も行うもの」という意識が教員に残り、生徒指導上の要素や責任の所在について不安が多数出された | モデル校での実践を具体例に、地域展開の利点を少しずつ説明。小中学校の教職員説明会と令和8年度入学説明会を各校で実施した |
| サッカー(東山FC)の平日の地域クラブ活動で、生徒・保護者・指導者の思いと学校現場との意識のずれ、市ガイドラインとのずれが生じた | 市教委・指導者・当該校長・市内中学校長で協議を重ね、令和8年度から平日の地域クラブとしての活動は行わないこととした |
| 令和5・6年度の2年間、モデルケースの成果と課題を検証してこなかった | 令和7年度に検証を行い、その結果を今後の方向性と新規地域クラブの認定に生かす |
| 指導者の質と量の確保、謝金を含む持続可能な体制づくり | 教員OBや兼職兼業の教員の参加、スポーツ団体との連携、研修と資格取得の促進を進める。東山FCが謝金を賄いつつ低廉な参加費を独自に徴収した実績を、今後の受益者負担の検討材料にする |
成果・効果
山梨市卓友会(卓球・25人)は、県大会上位入賞者を含む生徒が専門的な指導を受け、平日は部活動顧問がその内容を活動に反映しました。生徒からは「コーチのアドバイスが的確で、県大会で上位入賞、関東大会出場ができた」「女性の指導者もいて、いろいろなことを相談しやすく、練習が楽しかった」、関係者からは「生徒たちにとって大きな自信になり地域クラブ活動の持つ可能性を感じた」という声が記録されています。卓友会は土曜日の練習に加え、一般が参加する夜間の練習機会も紹介し、希望する生徒が参加しています。大会では卓球部が関東大会に出場し、サッカー部が県新人大会で準優勝しました。実証事業の経費は指導者謝金(1回1団体10,000円・月上限40,000円)に充てています。市は推進協議会で段階的に地域展開を進める方針を示したことで学校や関係団体との共通理解が進み、市内各小中学校で職員・保護者・生徒向けの説明会を開いて方向性を周知できたと評価しています。こども・子育て課や福祉課と連携し、経済的困窮世帯の生徒への減免措置など支援の糸口もできました。近隣市町村とは部活動顧問や部員数の情報を共有し、単一の自治体では対応が難しかった種目の地域展開に向けた糸口ができたとしています。
出典
→ 原文: スポーツ庁「令和7年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書 山梨県山梨市」(報告書検索システム)
→ 原文: スポーツ庁「令和6年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書 山梨県山梨市」(報告書検索システム)
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