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全種目 👥 5~10万人 🏫 中規模校(150〜300人) 📍 栃木県

【事例】栃木県日光市の部活動地域展開 ─ 保護者会のアイスホッケークラブと任意団体の軟式野球クラブが平日も含めて先行し、学校統合で県内の中学アイスホッケー部は地域クラブへ

公開:2026.10.30 更新:2026.10.30
この記事でわかること

・保護者会と任意団体を実施主体に、休日だけでなく平日も含めて地域クラブ化した日光市の先行方式
・月会費40,000円のアイスホッケーと月5,000円の軟式野球に見る種目別の費用構造と補助の検証
・学校統合を機に県内の中学アイスホッケー部がなくなり、2つの地域クラブへ移行した経緯

自治体名 栃木県日光市
人口規模 約7.5万人(令和6年度・スポーツ庁成果報告書記載)
中学校数 市立中学校14校(令和6年度・生徒1,613人・89部活動)
運営形態 保護者会(アイスホッケー2クラブ)および任意団体「Nikko Association Challenge」(軟式野球)が実施主体。市教育委員会の学校教育課とスポーツ振興課が連携して推進
対象競技 アイスホッケー、軟式野球(令和6年度実施)。ソフトテニス、ホッケーは令和7年4月から地域クラブとして別組織化
保護者負担額 アイスホッケー:月会費40,000円(保護者会費・支出の約8割が遠征費)/軟式野球:月会費5,000円(年額60,000円)。スポーツ安全保険800円/年は別

取り組みの概要

日光市は面積1,450平方キロメートルに市立中学校14校が点在し、生徒数と教職員定数の減少で団体競技を単独校で維持できず、複数校の合同チームで大会に出る部活動が多くを占めています。部活動顧問の約30%が「競技経験がなく指導もできない」と回答する状況を受け、市は令和6年4月に「日光市部活動地域移行推進協議会」を設置し、令和5〜7年度を改革推進期間と位置づけました。特徴は、休日だけでなく平日と休日を一体として地域クラブ化することを当初から視野に入れ、協議会にアイスホッケー・サッカー・ソフトテニス・ホッケーの種目別ワーキンググループを設けて「できる種目からできること」を先行させた点です。令和6年度は保護者会が運営する2つのアイスホッケークラブと、任意団体が新設した軟式野球クラブの計3クラブが活動しました。

特徴的な取り組み

  • 保護者会がアイスホッケーの実施主体: 日光中・日光東中のアイスホッケー部は、冬季の夜間スケートリンク利用時と遠征時を地域クラブ活動とし、週5回(平日4回・休日1回)のうち学校部活動と地域クラブの両面を同一集団で行って課題を検証しました。実施主体は保護者会で、日頃から連絡できる体制が既にあったことが利点でした。
  • 任意団体が新設した軟式野球クラブ「Nikko Association Challenge」: 学校部活動を移行するのではなく、令和6年4月に新たな集団として創設。週3回(平日は夜間屋内やナイター施設、休日は午前か午後)、複数校の生徒がチームとして練習できる時間帯に運動公園野球場や中学校グラウンドで活動し、監督1名・コーチ5名の有資格者が指導、事務局は「スポーツ団体ガバナンスコード〈一般スポーツ団体向け〉」に準拠した運営補助を担います。1年生14名が参加しました。
  • 部活動顧問がコーディネーターを兼ねる: 種目ごとに顧問がコーディネーターとなり、従来の学校部活動の運営業務を地域クラブの運営を見据えて整理。栃木県中体連の「地域スポーツ団体等(地域クラブ活動)の参加資格等の特例」の手続きで大会参加を調整しました。
  • 種目ごとに補助対象を変えて検証: アイスホッケーでは会場使用料(リンク代)を、軟式野球では新設に必要な用具購入費を補助対象として検証。学校の未使用部室を整理して地域クラブの用具保管場所と更衣室に転用しました。
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課題と解決策

課題 解決策
12種目で活動費用が大きく異なり、公費負担の対象を一律に決められない 受益者負担のみの場合の1人あたり負担額を指導者報酬から試算(時給1,600円・週5日・年52週で年915,200円→参加5人なら月15,253円、20人なら月3,813円)し、受益者負担とすべき支出項目を整理
任意団体は指導者をボランティア的に任用しており、健康管理・事故防止・ハラスメント防止の責任主体が不明確 地域クラブの要件を明確にして認定する方法の整備を推進計画の検討課題に位置づけ
学校施設の優先利用や使用料減免のルールが未整備 拠点となる近隣中学校と手続き・破損時の対応・開閉方法を個別に確認。複数クラブを想定した利用ルールの策定を次年度課題に設定

成果・効果

アイスホッケーでは学校部活動顧問の時間外勤務時間(特に月80時間超)に改善が見られました。保護者会の会計報告では支出の約80%が遠征費(遠征先の会場使用料を含む)、7%がリンク代と分析されています。令和7年4月からは軟式野球、アイスホッケー、ソフトテニス、ホッケーで学校部活動と地域クラブ活動が別組織として活動を始めました。下野新聞(2025年2月6日)によると、日光中と日光東中の2025年度の統合に合わせて日光東中のアイスホッケー部は地域クラブチームに移行し、県内の中学校からアイスホッケー部がなくなる一方、両校の流れをくむ2つの地域クラブチームが活動を続けます。日光中は2024年度から既に休日の活動を地域クラブに移しており、日光東中は2023年度から複数回の保護者説明会を重ねてきました。

出典

→ 原文: スポーツ庁「令和6年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書 栃木県日光市」(報告書検索システム)
→ 原文: 栃木県教育委員会掲載「令和6年度 地域スポーツクラブ活動への移行に向けた実証事業 栃木県日光市」
→ 原文: 下野新聞「栃木県内中学アイスホッケー部が消滅へ 日光中、日光東中統合で地域クラブ移行」(2025年2月6日)

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域展開・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

日光市の事例が示すのは、受け皿がなくても「既に運営している保護者会」を実施主体にすれば平日を含めた地域クラブ化が始められるという現実解です。アイスホッケーは冬季の夜間リンクと遠征が活動の中心で、もともと保護者会が会費40,000円を集めて運営していました。学校部活動と地域クラブを同一集団で1年間併走させ、時間外勤務の変化や会計の内訳を検証してから別組織に切り替えた手順は、特殊な種目を抱える自治体に参考になります。もう一つ、軟式野球では学校部活動を移すのではなく新しい集団を創設しました。「学校単位の部活動を地域クラブに」という視点だけでなく「中学生世代の地域スポーツ活動を地域で創設する」視点を併記した点が、全校一斉を前提にしない日光市の進め方を支えています。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

移植時のハードルは費用の見せ方です。日光市は受益者負担のみで運営した場合の月額を参加人数別に試算し、5人なら15,253円、20人なら3,813円と公表しました。この数字を先に出すと保護者の不安が高まるように見えますが、どの支出項目を受益者負担とし、どこを公費で補うかの議論を具体化できます。アイスホッケーではリンク代、軟式野球では用具購入費と、種目ごとに補助対象を変えて検証した方法は、全種目一律の補助制度を作れない自治体でも応用できます。任意団体を実施主体にする場合は、責任の主体をあいまいにしないことが必須で、日光市も健康管理・事故防止・ハラスメント防止の責任を明確にする認定制度の整備を課題に挙げています。学校との連絡窓口やコーディネーターが必要という市の指摘も、顧問が兼ねる方式には限界があることを示しています。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

教育委員会の学校教育課とスポーツ振興課の2課に3課事務局会議を加え、推進協議会と種目別ワーキンググループを年度内に4回・複数回開いた体制は、意思決定の記録が残る形になっています。一方で実施主体は保護者会と任意団体で、指導者の任用や会計は団体任せの部分が大きく、学校部活動に対する補助金を地域クラブが受けられる制度も未整備でした。令和7年3月に策定予定とされた推進計画と地域クラブの認定方法が、公費支援と責任の所在を定める要になります。

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