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全種目 👥 1~5万人 🏫 小規模校(〜150人) 📍 佐賀県

【事例】佐賀県多久市の部活動地域展開 ─ 保護者会運営のサッカークラブを好事例に・スクールバス3台で移動を支え休日の完全移行へ

公開:2026.10.02 更新:2026.10.02
この記事でわかること

・スクールバスの委託契約を部活動の移動手段に転用する具体的な運用方法
・総合型クラブと保護者会が役割分担する運営モデルと年38,000円の会費設計
・生徒96%が楽しいと回答・教員95%が残業減を実感した実証の定量的成果

自治体名 佐賀県多久市
人口規模 約17,612人(令和6年度成果報告書時点)
中学校数 3校(全生徒426人・部活動16部)
運営形態 総合型地域スポーツクラブ「多久スポーツピア」+保護者会
対象競技 サッカー(実証)、令和7年度から軟式野球・男女ソフトテニス・卓球・剣道・バレーボール・ハンドボール・ソフトボールへ拡大
保護者負担額 月会費3,000円+多久スポーツピア年会費2,000円(スポーツ安全保険含む)=年38,000円

取り組みの概要

多久市では生徒数の減少が加速し、チームスポーツは単独校での大会出場が困難になりつつあります。さらに部活動顧問の62%が担当競技の経験を持たず、精神的・時間的負担の増大が課題となってきました。市は令和3年度から国の「地域運動部活動推進事業」を活用した実証研究を開始し、令和5・6年度は「地域スポーツクラブ活動体制整備事業」で休日の地域展開を推進。令和6年度は総合型地域スポーツクラブ「多久スポーツピア」と保護者会が運営するサッカークラブ「TAKUMI-FC」が、市内3中学校の生徒45名を受け入れて活動しました。令和7年度には全ての運動部活動の生徒・指導者を多久スポーツピアに加入させ、休日のスポーツ活動を地域クラブ活動へ完全移行する計画です。

特徴的な取り組み

  • 保護者会との二人三脚運営: TAKUMI-FCは総合型クラブ「多久スポーツピア」が関係団体との調整・保険業務を、保護者会が実務的な運営・会計を担う分担型。休日の活動は保護者会が中心となって見守りを行い、部活動運営に関わる人員が増えました。報告書はこの形を「他の競技種目を地域移行する際の好事例」と位置づけています。
  • スクールバスを部活動の移動手段に活用: 市教委がスクールバス運行事業者と委託契約を結び、通学に支障がない範囲で週3日程度(水・木・土曜)生徒を輸送。平日は東部校・西渓校から中央校へ約15名、土曜は3校から西多久運動広場等へ約30名が利用します。令和7年度は休日にスクールバス3台を活用し、サッカー・軟式野球・卓球・剣道・バレーボールの生徒を各活動場所へ運ぶ計画です。
  • 部活動指導員から地域指導員への「移行ルート」: 令和6年度に部活動指導員として指導した人材が、令和7年度は多久スポーツピアの地域指導員として登録する流れを作り、サッカー(JFA資格保有者)・剣道七段・ソフトテニス協会指導者・スポーツトレーナーなど計10名(平均45.4歳)を確保しました。
  • 県と市の二段構えの指導者研修: 佐賀県教委の「SAGA部活指導者研修会」に延べ7名、市教委主催の部活動指導員等研修会に6名が参加。スポーツトレーナーの参画により、スポーツ医学など専門的な内容を学ぶ機会にもなっています。
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課題と解決策

課題 解決策
地域指導者の発掘・確保が最大の課題 市スポーツ協会・各競技団体と連携して経験者を発掘し、多久スポーツピアに指導者登録して各クラブへ派遣する体制を構築
3校の生徒が別々の場所で活動する際の移動 スクールバスの委託契約を部活動輸送にも活用。令和7年度は休日3台体制へ拡大
指導の一貫性・事故対応・生徒指導上の連携 学校部活動と地域クラブ活動の関係者が参加する「運動部活動地域移行連絡会」を年2回、実務を詰める「ミニ連絡会」を月1回開催
困窮世帯の会費負担 困窮世帯への支援を教育委員会の役割として明記し、企業協賛金・ふるさと納税の活用も財政課で検討

成果・効果

実証に参加した生徒34人へのアンケートでは、96%が活動を「とても楽しい・楽しい」と回答し、地域指導員の技術指導についても94%が「とてもよかった・よかった」と評価しました。教員側の効果も顕著で、95%が「残業時間が減った」と回答し、1日平均1〜2時間程度の削減につながっています。市の推進計画・ガイドラインは令和6年3月に改定済みで、令和7年度には休日のスポーツ活動をサッカー以外の7種目にも広げ、地域クラブ活動への完全移行を実施する計画です。市立中学校では令和7年4月からの休日地域展開に伴うスポーツピア会費納入の案内が保護者向けに出されており、実装段階に入っています。

出典

→ 原文: スポーツ庁「令和6年度 地域スポーツクラブ活動体制整備事業 成果報告書 佐賀県多久市」(PDF)
→ 参考: 多久市立中央校「運動部活動休日地域移行」に伴うスポーツピア会費納入について

監修・執筆:部活動地域展開ナビ
部活動の地域展開・総合型地域スポーツクラブの設立支援を専門とするメディア。全国の自治体・スポーツ協会・学校関係者を対象に、制度設計から運営実務まで実践的な情報を発信。文部科学省・スポーツ庁の公式資料および自治体の一次情報をもとに記事を作成しています。

💡 部活動地域展開ナビの視点:ここがポイント

多久市の事例が示すのは「移動手段の壁」への現実的な回答です。3校の生徒が1つのクラブに集まる広域型の地域展開では送迎が最大のボトルネックになりますが、同市は既存のスクールバス委託契約を部活動輸送に転用し、新たな大型投資なしで解決しました。また、会費を月3,000円・年38,000円と明示し、総合型クラブと保護者会の役割分担で運営コストを抑えた収支設計は、受益者負担を「見える化」した点で参考価値が高いといえます。令和3年度から4年かけて段階的に合意形成を積み上げ、令和7年度の完全移行に至るロードマップも、急がば回れの好例です。

📋 他地域が導入する際の想定ハードルと解決策

スクールバス転用は「通学に支障がない範囲」という条件設計と運行事業者との契約変更が前提になるため、既にスクールバスを運行している統廃合経験のある自治体ほど導入しやすい手法です。一方、年38,000円の会費負担は無料実証から始めた自治体では急な導入が難しく、多久市のように実証段階から有償で運営し「活動の対価」への理解を醸成しておくことが重要です。保護者会運営は担い手の世代交代で揺らぎやすいため、総合型クラブ側が保険・調整など制度面を持つ二層構造をセットで移植することをおすすめします。

📊 ガバナンスと持続可能性の評価

連絡会(年2回)とミニ連絡会(月1回)の二層の会議体で教委・スポーツピア・スポーツ協会が実務を詰める体制は、意思決定の透明性が高い設計です。財源面は受益者負担を原則としつつ、困窮世帯支援と企業協賛金・ふるさと納税の検討を明記しており、月3,000円の会費と公費のバランスが取れています。推進計画も令和6年3月改定済みで、制度・財源・運営の三拍子が揃った持続可能性の高い事例と評価できます。

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