【事例】岩手県大船渡市の部活動地域展開 ─ 全8クラブに指導者2人以上、陸上は距離別に専門指導者を配置
・8クラブすべてに指導者を2人以上配置し、陸上競技は距離別に5人を配置した指導体制の作り方
・教員の兼職兼業許可制度を新設し、在校時間を把握したうえで市教育委員会が許可する運用の実際
・複数校の合同活動が部員数の増減で成立しなくなるリスクと、その際の編成の切り替え方
| 自治体名 | 岩手県大船渡市 |
|---|---|
| 人口規模 | 約3.2万人(32,203人・令和6年10月1日時点) |
| 中学校数 | 4校(生徒705人・令和6年5月1日時点) |
| 運営形態 | 市町村運営型(地域団体・人材活用型)/スポーツ少年団・競技団体が実施主体 |
| 対象競技 | 軟式野球、バレーボール、バドミントン、陸上競技、柔道、ソフトテニス、卓球、バスケットボール |
| 保護者負担額 | 年会費12,000円(全8クラブ共通)+スポーツ安全保険800円 |
取り組みの概要
岩手県大船渡市は、令和6年度にスポーツ庁「地域スポーツクラブ活動体制整備事業」の実証事業に取り組み、市内4中学校の8種目を地域クラブ活動として実施しました。市立中学校は第一中学校(404人)、大船渡中学校(125人)、末崎中学校(72人)、東朋中学校(104人)の4校で、部活動数は34部です。
背景には生徒数の急減があります。市教育委員会の推計では、令和5年度に722人だった中学校生徒数は令和14年度に516人まで減る見通しで、学校を単位とした部活動の維持が困難になることが見込まれていました。小規模校では選択できる部活動が限られ、自校に希望する種目がないことから部活動に所属しない生徒が増加し、種目を理由に学区外通学を希望する生徒も一定数いたといいます。
市は令和4年度に対象とする地域クラブ活動の検討を開始し、令和6年度は「大船渡市立中学校部活動の在り方検討委員会」を4回開催しながら、7月のソフトテニス・バレーボールを皮切りに、8月に軟式野球・卓球・柔道・バドミントン、9月に陸上競技・バスケットボールと段階的に活動を立ち上げました。市は令和7年度末までに休日の地域展開を完了する目標を掲げています。
特徴的な取り組み
- 全種目に指導者2人以上を配置: 8クラブすべてで指導者を原則2人以上配置し、地域指導者20人・運営スタッフ30人の体制を組みました。指導者の年齢構成は20代3人、30代3人、40代5人、50代6人、60代以上3人で、JSPOスタートコーチをはじめ各競技団体の専門資格保有者が含まれます。
- 陸上競技は距離別に指導者を配置: 市内の中学校に設置されていない陸上競技について、大船渡市陸上競技協会の協力を得て全中学校の生徒を対象としたクラブを新設しました。短距離・中距離・長距離など種目ごとに指導者を分けて計5人を配置し、参加生徒16人が体験できる種目の幅を広げています。活動場所は市内の県立高校グラウンドを独自に確保しました。
- 教員の兼職兼業許可制度を新設: 令和6年度に、地域クラブに関わる教員の兼職兼業の許可制度を新たに設けました。男子バレーボール・ソフトテニス・陸上競技で4名が申請し、在校時間を把握したうえで市教育委員会が許可しています。学校部活動と地域クラブ活動の切り分けを制度面で明確にした形です。
- 1校しかない種目を拠点方式で開放: 市内に1校しか設置がないバドミントン・男子バレーボールを拠点方式とし、他校の生徒も参加できるようにしました。バドミントンは市が実施した小学4年生〜中学3年生のニーズ調査で運動部のなかで最も希望が多かった種目です。
- 保護者会の当番制で顧問のいない体制をつくる: バドミントン・ソフトテニス・卓球では、保護者会が当番制で生徒の見守りを担当し、学校部活動の顧問がつかない体制を実現しました。
課題と解決策
| 課題 | 解決策 |
|---|---|
| 小規模校では選べる部活動が限られ、希望する種目がないため部活動に所属しない生徒が増えている | 市内に1校しかない種目(バドミントン・男子バレーボール)や学校にない種目(陸上競技)を拠点方式にして、全中学校の生徒が参加できるようにした |
| 専門的な指導者が確保できず、特に陸上競技は種目ごとに異なる指導が必要になる | 市スポーツ協会から地域指導者の情報を得て協力を依頼。陸上競技は市陸上競技協会と連携し、距離別に5人の指導者を配置した |
| 複数校の合同活動を予定していたが、部員が0人になったり1校だけで部員が充足したりして実施できない種目が出た | その年の部員数に左右される状況を踏まえ、市外の学校との合同活動に切り替えるなど種目ごとに編成を見直した |
| 希望した内容と実際の活動内容にギャップを感じて途中で辞める生徒が複数いた | 次年度以降は募集の際にあらかじめ活動内容や運営団体の方針を確認したうえで周知を図る方針とした |
| 地域クラブ化すると学校施設の利用が一般開放と同じ扱いになり、利用が制限される | 市スポーツ協会が運用する施設予約システムで空き時間を確認して会場を確保。優先予約の方法や備品破損時のルールづくりを今後の検討課題とした |
成果・効果
令和6年度は8クラブが立ち上がり、うち7クラブは既存部活動の移行、1クラブは新規創設(陸上競技)です。参加生徒は軟式野球31人、卓球18人、陸上競技16人、バレーボール14人、柔道13人、バドミントン12人、ソフトテニス8人、バスケットボール5人となりました。
市は総括で「教師の休日における活動が大幅に減少し、休日も活動する場合は兼職兼業の申請・許可により対応していることから、教師の負担軽減という面では成果として上がっている」と評価しています。一方で、活動場所までの移動手段がないため一部の活動に参加できない生徒がいたことを課題として挙げ、活動場所と移動手段の調整が不足していたと総括しました。
令和6年度に小学4年生〜中学3年生を対象に実施したニーズ調査では、学校部活動の設置種目と子どもたちの希望が一致していない実態が明らかになり、市はダンスなど複数の希望者がいる種目について既存の活動団体への働きかけを進める方針です。令和7年4月には推進計画を策定し、令和8年度の休日地域展開完了を目指してフォローアップ組織の体制整備を進めるとしています。
令和8年度には市の取り組みが「大船渡市部活動の地域展開ビジョン」へと発展し、令和8年8月3日に第1回の推進委員会が開催され、認定地域クラブ活動についての報告とビジョン案の協議が行われています。
出典
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